
ライターI(以下I):前週が桶狭間の合戦(1560年)でしたが、今週は清須城から小牧山城に拠点が移されていました。
編集者A(以下A):松平元康(演・松下洸平)との清須同盟は永禄5年(1562)、小牧山城への移動は、永禄6年(1563)ですから、前週から2~3年経過しています。直(演・白石聖)も一緒に移動したようですね。
I:前週、桶狭間の戦いがあった永禄3年から、清須同盟が成立した永禄5年、さらに清須から小牧山への「転居」という流れがあるわけですが、藤吉郎(演・池松壮亮)と小一郎(演・仲野太賀)家族も、小牧山城下で同居していました。身なりもこぎれいになり、それなりに出世している様子がうかがえました。
A:中村から引っ越して藤吉郎らとともに暮らす、暮らさないというやり取りがあったかと思いますが、省略された形になりましたね。とも(演・宮澤エマ)の夫弥助(演・上川周作)はいつの間にか「配下」で働いていますし、あさひ(演・倉沢杏菜)の夫甚助(演・前原瑞樹)も一族の中に溶け込んでいました(笑)。
I:「藤吉郎家族」の膳には、香の物がありました。たくあん漬けは江戸時代の僧「沢庵(たくあん)和尚」によって創案したものといわれていますから、たくあん漬けとは呼べないかもしれませんね。でも、大根の漬物に見えました。
A:食べ物の話題が出たので言及しますが、確認したところ、大根のぬか漬けだそうです。今週はお市(演・宮崎あおい)が信長(演・小栗旬)に「ウリ」を食べさせる場面がありました。マクワウリでしょうか。2020年の『麒麟がくる』でも織田信秀(演・高橋克典)が美味しそうに食べている場面があって、当時の当欄では次のようなやり取りがありました。
A:ところで、同じ第4回では、織田信秀が、豪快にウリを食するシーンが目を引きました。本当に美味しそうに食べている。
I:マクワウリですかね? 実は、私の実家(愛知県三河地方)では、今もよく食べられています。地元ではキナウリともいいます。皮が黄色いから、キナウリ。
A:え? そうなんですか? 美濃の真桑が産地だから〈真桑瓜〉というそうですが、今も食べられているなんて。
I:さくっとした適度な歯ごたえで瑞々しく、ほのかな自然の甘みのマクワウリは、私にとっては夏の味なんですよ。実家の父は、今でも夏になると毎日のようにおやつとして食べています。夏には、地場のスーパーや産地直売所などでよく見かけますよ。
(明智光秀が松平竹千代(後の徳川家康)に食べさせた 〈美濃の干し柿〉。 取り寄せてみたら絶品だった【麒麟がくる 満喫リポート】 https://serai.jp/hobby/387838)
A:『麒麟がくる』では干し柿も登場し、2023年の『どうする家康』では、藤吉郎(演・ムロツヨシ)が小蜜柑を配る場面もありました。そうした場面を通じて、当時はどんな果物があったのかを知ることができます。
I:歴史的なエピソードは大胆にアレンジしてくる『豊臣兄弟!』ですが、例えば、藤吉郎がバナナを食べるシーンは絶対ないわけですね。
A:そもそも戦国時代に「猿にバナナ」というイメージはありません。当時の日本にはバナナは入ってきていません。ネットにはまことしやかに「信長はバナナを食べた」という情報があったりしますが、その典拠とされている永禄12年(1569)のルイス・フロイスの献上品のなかにはバナナはありません。
I:猿は雑食性ということですから、特別バナナが好物ということはないですしね。
犬と猿、前田利家と藤吉郎

I:信長の前での「御前試合」の場面もありました。「御前試合」という名目での鍛錬は、これまでの「信長もの」には見られなかったものです。これは、あれじゃないですか、ゲーム『信長の野望』での対人戦イベント。戦国武将たちの中で最強の者を決める、ランキング形式のイベントで、成績に応じて豪華な褒賞などがもらえるようです。
A:なるほど。それは面白い。ところで、藤吉郎が前田利家(演・大東駿介)と対戦しました。前田利家といえば、1981年の『おんな太閤記』では滝田栄さんが演じました(まつは音無美紀子さん)。1996年の『秀吉』では、利家に渡辺徹さん(まつは中村あずささん)ときて、2002年には『利家とまつ~加賀百万石物語~』で利家を唐沢寿明さん(まつは松嶋菜々子さん)という配役でした。前田利家と藤吉郎は、『おんな太閤記』でも『秀吉』でも『利家とまつ』でも家族ぐるみで仲良しという感じでしたから、『豊臣兄弟!』のバチバチした雰囲気は新鮮でいいですよね。
I:前田利家って、「いい人」イメージが定着していたりしますが、「実は違う!」という部分を実録的に描いてくれたらいいなと思ったりします。
A:江戸時代を通じて「百万石」の加賀藩主の礎を築いたわけですから、利家も「成りあがり」というか「成功者」ですよね。ということで、『豊臣兄弟!』の新機軸の利家は楽しみですね。
I:しかし、「旦那さま、サルは山へ追い返してください」「藤吉郎さん、そんな犬っころに負けたら承知しませんよ」という、まつ(演・菅井友香)と寧々(演・浜辺美波)のやり取りがじわじわと響いてきます。思い出し笑いが止まらないのですが……。
A:前田利家の幼名「犬千代」をうまくアレンジした絶妙なやり取りですからね。まさに犬と猿。犬猿の仲――のまま、展開するのかしないのか。
I:そのうち良好な関係になるという展開になるのかもしれませんが、そういう細かいところも楽しみですよね。
A:最終的に、前田家は唯一の百万石超の領地を得て、明治維新を迎えます。「いい人」だけでは潜り抜けることのできない修羅場があったはずなのです。そのあたりがどう描かれるのか楽しみですね。
I:まつといえば、演じる菅井友香さんは学生時代に馬術部だったということですから、巴御前のような女武者なんか期待しちゃうのですよね。ところで、この御前試合ですが、周囲を柵で囲んだ場所で行なわれました。
A:2023年の『どうする家康』第4回では、信長(演・岡田准一)と松平元康(演・松本潤)が相撲対決をする場面が描かれましたが、その際も周囲を柵で囲んだ場所での「対決」でした。『どうする家康 満喫リポート』でも触れています。当時のやり取りをどうぞ。
I:信長は相撲好きだったことが知られていますが、元康との相撲対決が描かれました。藤吉郎が行司を務めていたのが笑えましたが、相撲を超越した総合格闘技のような闘いになっていました。なぜか周囲を柵で囲んでいましたし。
A:これは、昭和~平成の金網デスマッチ、あるいは総合格闘技のオクタゴンケージをイメージしているのか、と感じました。昭和ならラッシャー木村、平成なら大仁田厚が思い起こされますが、これは作者と演出陣、どちらの構想なのでしょうか……(以下略)。
(こんな藤吉郎見たことない! 早くも最高の秀吉になる予感。そして、松潤元康とお市衝撃の破談、今川氏真の非道【どうする家康 満喫リポート】4 https://serai.jp/hobby/1111564)
美濃調略の大胆アレンジ

I:美濃攻略の始まりです。まずは、大沢次郎左衛門(演・松尾諭)を調略するところから始まります。
A:大沢正秀とも大沢基康とも、そのほか諱は諸説あるといわれる人物です。息子ということで登場している大沢主水(演・杉田雷麟)は弟であったともいわれることもあります。要は、実像はよくわかっていないということです。いずれにしても美濃攻略にあたって功績はあったと思われますので、『豊臣兄弟!』でどう表現されるのか。
I:斎藤龍興(演・濱田龍臣)は、斎藤道三(演・麿赤兒)の孫で、『豊臣兄弟!』第1回で登場した斎藤義龍(演:DAIGO)の嫡男になります。それにしても、斎藤義龍が一度きりの登場とは思いもかけぬことでした。
A:信長の美濃攻略は、足掛け7年ほどかかっています。美濃はもともと足利一門の名門土岐氏が守護を務める国でしたが、斎藤道三が奪います。ところが、その後に道三は嫡男義龍と対立するようになります。直近の大河ドラマでは2020年の『麒麟がくる』で、斎藤道三(演・本木雅弘)と義龍(演・伊藤英明)父子の相克が描かれたのは記憶に新しいところです。斎藤義龍は、父である道三を討ち滅ぼして、美濃を掌握。桶狭間の合戦で勝利した信長の前に立ちはだかりますが、桶狭間の合戦の翌年に33歳の若さで亡くなります。
I:「豊臣秀長がもう少し長生きしていれば~」というフレーズは『豊臣兄弟!』の枕によく使われますが、斎藤義龍がもう少し生きていたら、信長の美濃攻略はもっと年月がかかったか、あるいは成功しなかった可能性もあります。
A:ということを考えると、果たして斎藤義龍は本当に病死だったのか――ということも深掘りしたくなりますよね。
I:そんなことなど、考えていたら、続きは翌週ですって。

※宮崎あおいの「崎」は正しくは「たつさき」。
●編集者A:書籍編集者。かつて編集した『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











