文/石川真禧照(自動車生活探険家)
スズキは、軽自動車を中心とする小型車づくりに定評のある自動車メーカーである。同社が初めて手がけた市販車は、1955年に発売したスズライトという排気量360ccの軽自動車だった(当時の社名は鈴木自動車工業)。
1960年代になると、他社も軽自動車市場に参入し競争が激化。軽自動車は、いかにコストをかけずに売れる車をつくるかが、競争に勝つための条件とされた。スズキもそうした考え方で軽自動車や小型車を製造していた。
しかし、1990年代になると、欧州や北米などで優れた小型車が次々に登場しはじめ、スズキは苦戦を強いられるようになっていく。
そこで開発陣はこう考えた。ドイツの小型車に負けない世界で通じる車をつくりたい。そのためには、従来の低コスト重視の考え方を改め、開発に充分な費用と時間をかけなければならない──。
■徹底的につくり込んだ一台
車づくりの方針転換は賛否が分かれた。「そんなにお金をかけて、売れる車を本当につくれるのか」。
懐疑的な声が聞こえる中、開発費をつぎ込み、走行試験もこれまでにないほど時間をかけて欧州を走り込んで完成させた車が、2004年に発売されたスイフトだった。
走行性能やデザインなどが格段に向上したスイフトは世界各国で絶賛され、販売台数も飛躍的に伸びた。この結果に自信をつけたスズキは翌年、走行性能をさらに追求した車種スイフトスポーツを開発。これも国内外で人気を博した。
その後、2代目も成功をおさめ、2017年9月、スイフトスポーツは今回紹介する3代目が登場し、さらなる進化を遂げた。
小型5ドアスポーツ乗用車として評判の高いスイフトスポーツは、1.4Lのガソリンエンジンにターボチャージャーを装着し、馬力を向上させている。
注目したいのは変速機だ。新型の6速自動変速のほかに6速の手動変速も用意されている。スイフトスポーツは2代目から6速手動変速機の車種を用意するが、これが予想外の評判を呼んだ。
手動変速機を備える車種は昨今、非常に少ない。その購入者の大半は競技志向の強い若い世代だと思われていたが、同社によると50代以上の熟練ドライバーにも手動変速を選ぶ人が多いそうだ。
3代目スイフトスポーツは、先代よりも車体が大幅に軽量化されている。実際に試乗してみると、クラッチペダルは軽くて踏み込みやすく、シフトノブの操作もスムーズに行なうことができる。思い通りのギアにカチッと入るので、変速がじつに小気味よい。
車速とエンジン回転数を考慮しながら、手と足を使って変速を繰り返す運転は忙しいが、刺激的でもある。車を操っているという緊張感、これもまた運転の楽しさであることを改めて感じさせてくれる数少ない車である。
- 【スズキ/スイフトスポーツ(6MT)】
全長× 全幅× 全高:3890×1735×1500mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:970kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ/1371cc
最高出力:140PS/5500rpm
最大トルク:23.4kg-m/2500~3500rpm
駆動方式:前輪駆動
燃料消費率:16.4km/l(JC08モード)
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン 37L
ミッション:6速手動変速機
サスペンション:前:ストラット 後:トーションビーム
ブレーキ形式:前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
乗車定員:5名
車両価格:183万6000円(税込み)
問い合わせ:お客様相談室 電話:0120・402・253
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2018年2月号より転載しました。