日本酒を楽しむ際によく耳にする「一合」(いちごう)という単位。居酒屋で「日本酒を一合で!」と注文したり、酒屋で一升瓶を見かけたりしても、実際にどれくらいの量なのか、どの程度のアルコールが含まれているのかを正確に把握している人は意外と少ないのではないでしょうか。

日本酒初心者から愛好家まで、知っておくと役立つ一合の基礎知識を、この記事では詳しく解説します。適切な飲み方を身につけて、日本酒をより深く楽しみましょう。

文/山内祐治

日本酒一合の量は昔から続く伝統的な180ml

日本酒の「合」とは、昔から使われている日本の伝統的な容量単位です。一合は正確には180.39mlですが、一般的には約180mlと覚えておけば十分でしょう。

この単位は、一升瓶(約1.8リットル)を10等分したものが一合という関係にあります。つまり、一升瓶には一合が10杯分入っているということになります。

昔は計量用の枡(ます)で測って、そのまま提供する「枡酒(ますざけ)」という方法もありました。江戸時代の酒屋では、測り間違いを防ぐために枡で直接提供することもあったそうです。

現在でもコンビニで販売されているワンカップ大関などは、まさに一合(180ml)規格が存在し、一合の量を実感するのに最適です。ちなみに、家庭用の計量カップは200mlですので、一合よりも少し大きくなっています。

日本酒一合とグラスで注文する際の提供量の違い

居酒屋で日本酒を注文する際、お店によりますが「一合で」と「グラスで」という2つの注文方法があります。この2つには実は大きな違いがあることをご存知でしょうか。

一合で注文した場合、基本的には180mlで提供されているはずです。ただ、お店によって一合入っていないお店も増えたため、正一合(つまり、ちゃんと一合分いれてあります、という意味合い)と表記するお店もあります。一方、グラスで注文した場合は、店舗によって異なりますが、一般的には60〜120ml程度と、一合よりもかなり少ない量になることが多いのが通常です。

最近では多くの居酒屋で「当店では○○mlを提供しています」といった表示を見かけるようになりました。これは、お客様に提供量を明確にするためで、グラス注文の場合は60〜120ml程度が標準的です。

いろいろな銘柄の日本酒を試したい場合は、単価が少々高くはなりますが、グラスで注文するのがおすすめです。一方、じっくりと一つの銘柄を味わいたい場合は、一合での注文が適しているでしょう。

日本酒一合のアルコール量は適正飲酒量の目安となる約22g

健康的に日本酒を楽しむために、アルコール量を把握しておくことは重要です。日本酒一合に含まれるアルコール量は、15%とすると純アルコールに換算すると22g前後になります。

この数値は、日本酒の平均的なアルコール度数が15〜16度であることから算出されます。180ml×0.15=27mlのアルコールが含まれ、これを重量に換算すると約22gとなります(アルコールの比重は約0.8)。15%想定なら約21.6g(=約22g)となりますね。

最新の公的資料『節度ある適度な飲酒』では、1日平均“純アルコール約20g程度”と示されています。一方で『生活習慣病のリスクを高める飲酒量』の目安として男性40g以上/女性20g以上が用いられます(“推奨”ではありません)。つまり、女性の場合は一合程度、男性の場合でも二合までがリスク指標としての健康的な飲酒の上限の目安ということになります。

ただし、個人差があることはもちろん、体調によっても適量は変わるため、ご自身で鑑みながら楽しむことが大切です。

日本酒一合をビールで換算すると大瓶1本相当のアルコール量

日本酒のアルコール量をより身近に感じるために、ビールとの比較で考えてみましょう。日本酒一合のアルコール量は、ビールで言うとどの程度に相当するのでしょうか。

一般的なビールのアルコール度数は5〜6%程度です。大瓶(633ml)のビールを例にとると、アルコール度数5%の場合、純アルコール量は約25gとなります。これは日本酒一合(約22g)とほぼ同等です。

中ジョッキ(400ml程度)の場合は、約16gの純アルコール量となるため、日本酒一合はビール中ジョッキの1.5杯分程度に相当します。500ml缶ビールの場合も、日本酒一合より少し少なめのアルコール量となります。

つまり、日本酒を三〜四合飲むということは、ビール大瓶を3〜4本飲むのと同程度のアルコール摂取量になるということです。日本酒は少量でもしっかりとしたアルコール量を摂取することになるため、ゆっくりと味わって飲むことが重要です。

日本酒一合はおちょこでゆっくり味わう文化

伝統的な日本酒の飲み方といえば、おちょこを使った飲み方があります。では、一合をおちょこで飲むとすると、何杯分になるのでしょうか。

おちょこの容量に基準は特に設けられていませんが、一般的に注ぐ量は20〜30mlです。つまり、一合(180ml)をおちょこで飲む場合、約6〜9杯分ということになります。

おちょこは、漢字で「猪口」と書きます。語源は“猪口(ちょく)→ちょこ”の転で、当て字とされるのが現在の一般的な見解です。宴会などでは、おちょこに並々と注ぐことはせず、適量を注いでは飲み、また注いでは飲みという形で、参加者同士が酒を注ぎ合いながら親睦を深める古来から続く共食の文化があります。

このような飲み方は、単にアルコールを摂取するためではなく、日本酒の香りや味わいをゆっくりと堪能し、同席する人々との時間を大切にする日本独特の文化です。ビールのようにゴクゴクと飲むのではなく、一口一口を味わいながら楽しむことで、日本酒本来の魅力を感じることができるでしょう。

日本酒何合で強いと言える? 自分の適量を把握することが重要

お酒の強さは、主にアルコールを分解する2つの反応に関わる酵素の活性によって決まります。日本人は、特に ALDH2(酵素活性が弱いタイプ)が多く、あまりアルコールの分解が得意でない人がいます。この酵素活性には大きな個人差があり、遺伝的要因が強く影響します。また、体重や血流量も関係するため、体格の大きい人の方が比較的多く飲める傾向にあります。この件に関しては、あまり飲めない顔が赤くなる人の方が新型コロナ感染症に対して防御的であるという佐賀大学での研究もあります。

重要なのは、自分の適量を把握することです。三〜四合飲める人でも、それがビール大瓶3〜4本に相当することを理解し、体調や状況に応じて調整することが大切です。やはりお酒は「楽しむ」ことが肝要です。楽しめる量で、楽しい時間を過ごす。「強い」からといって無理をせず、楽しく適量を守って飲むことを心がけましょう。

まとめ

日本酒一合は180mlとなりますが、その楽しみ方には奥深いものがあります。グラス注文との違いを理解し、そしてビールとの比較でアルコール量を把握し、おちょこでゆっくりと味わう伝統的な飲み方を体験することで、日本酒をより深く楽しむことができるでしょう。

大切なのは、酔うことが目的ではなく、美味しい日本酒を料理と一緒に味わい、素敵な時間を過ごすことです。和らぎ水(お水)をたっぷりと飲みながら、食事と一緒に楽しむことで、日本酒本来の魅力を感じることができます。

自分の適量を理解し、日本酒の伝統的な単位である「合」を通じて、この素晴らしい日本の文化をぜひ堪能してください。「ml」と「合」をまたいで「今日は何合飲んだかな」「ということは何ミリリットルだな」と考えるのも楽しみにつながると思います。

山内祐治(やまうち・ゆうじ)/「湯島天神下 すし初」四代目。講師、テイスター。第1回 日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMAコンクール優勝。同協会機関誌『Sommelier』にて日本酒記事を執筆。ソムリエ、チーズの資格も持ち、大手ワインスクールにて、日本酒の授業を行なっている。また、新潟大学大学院にて日本酒学の修士論文を執筆。研究対象は日本酒ペアリング。一貫ごとに解説が入る講義のような店舗での体験が好評を博しており、味わいの背景から蔵元のストーリーまでを交えた丁寧なペアリングを継続している。多岐にわたる食材に対して重なりあう日本酒を提案し、「寿司店というより日本酒ペアリングの店」と評されることも。

構成/土田貴史

 

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