吹く風も冷たくなり、おでんが恋しい季節になりました。12月号特集「おでん東西」では、出汁や味付け、たねが異なる各地のおでんとその歴史、おでんの美味しい作り方やユニークな話題をご紹介しています。
おでんのルーツは豆腐に串を打ち、味噌を塗って焼いた豆腐田楽です。豆腐のほかにもこんにゃくや里芋が使われ、やがて串に刺したまま煮込むようになりました。これがおでんの原型です。呼び名は宮中で使われていた女房詞(にょうぼうことば)から出たもので、「御田」と書きます。
東京は鰹出汁で醬油の味付け、京都や大阪は昆布が主体の出汁に牛すじを加えたコクのあるつゆが昔ながらの味です。たねも東京は練り物が多く、関西はさえずり(舌)やころ(皮)といった鯨の部位が入ります。名称も東西で異なり、「スジ」といえば、関西では牛すじ、東京では魚の練り物である魚すじです。
名古屋には八丁味噌で煮込むおでんがあり、静岡県では、鰯や鯖の雑節を削った「だし粉」をかける食べ方があります。青森県や北海道では生姜をすり下ろした味噌だれをかけるのが一般的です。おでんのルーツが豆腐田楽であることを考えると、つゆやたれに味噌を用いる地域があることは興味深いことです。
静岡のおでんは牛すじの出汁に醬油を加えた黒いつゆが特徴。たねは練り物が多い。写真/多賀谷敏雄
■最新号の目次はこちら