祖父母の家、実家の借金を必死で返していた父。祖父母に懐く私がその事実を知らなかったのも、父の配慮だった

その後、母親は再度働きに出たそう。めぐみさんは実家から同じホテルで働き続けますが、実家を出ることを母親から提案されます。

「母親は前より精力的に働くようになり、私よりも帰宅時間が遅くなることもありました。私は家にいたのに実家の手伝いをする気になれなくて、家に帰ってきてもただボーっとするだけでしたね。そんな私を見かねてなのか母親から、『一人暮らしを始めなさい』と言われました。その頃には兄はすでに家を出ていたから、父と顔を合わせなければ実家の居心地も良かったのでまったく考えていなくて。その後は休みの日に不動産屋に連れて行かれたり、家具を見に行ったり……、追い出されるような感じで一人暮らしを始めることになりました」

一人暮らしを始めてから経つこと数年、めぐみさんに生まれて初めての彼氏ができたそう。実家に帰省してその報告を母親にした時はとても喜んでくれたと言います。

「彼は同い年の紹介で知り合った、介護の仕事をしている男性でした。とても優しくて、今までの男性のイメージを払拭してくれましたね。初めてできた彼氏だったんで、つい嬉しがって、母親にポロっと伝えてしまって。そしたら母親が食い気味に『紹介しなさい』と。付き合ってすぐで親に合わせるなんて重くないのかなと不安だったんですが、彼は快諾。3人の仕事終わりに一緒に食事をしました。母親も彼も終始ニコニコしていて、楽しかったです。

そして、その後母親と一緒に実家に戻って、そのまま実家に泊まることに。その時に男っ気がまったくない私のことをずっと心配していたと言われました。その流れで、私はずっと聞きたくても聞けなかった両親の関係を初めて聞けたんです。不仲なんだと思っていたのに、母からは『お父さんのことが好きだから、祖父母の面倒も見ようと思った』という意外な回答が返ってきました。さらには、実家を建てた時と一緒に祖父母の家も修繕したんですが、両方のローンを祖父母に代わってずっと父が払っていたと聞かされました。何の役にも立たないと思っていた兄も実家を出てからずっと毎月決まった額を家に入れていたみたいで。兄は私よりずっと前から実家に借金があることを知っていたんですね。父の配慮から、祖父母に懐く私には伝えないようにしていたみたいでした」

めぐみさんは母親に紹介した男性と結婚。仕事も資格を取り、旦那さんと同じ介護の仕事をしています。あれから父親とのわだかまりはどうなったかを聞くと、「ずっと会話もなかった関係だから急に近くなるなんてことはないけど、徐々にですかね。私が結婚した時に、祖父母のお葬式でも泣かずに立派に喪主を務めた父が別人のように号泣したんですよ。相手のご両親がひくぐらい(苦笑)。男の人が嫌いという先入観で父親のことが何も見えていなかったんだなって少し反省しました」と笑顔で語ります。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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