人の生き方は、本当にさまざまです。ふと目にした記事や番組で、ある人物の人生に心を打たれることがあります。羨ましさや反省が入り混じり、「自分はどうだっただろう」と考えさせられることもあるでしょう。

どこで差がついたのか…運や環境だけでは片づけられない何かがあるのかもしれません。志を持ち、機会を逃さず、行動を重ねる。先人の言葉には、その要点が短く、鋭く残されています。今日の言葉が、あなたの選択を整えるヒントになりますように。

今回の座右の銘にしたい言葉は、「意気衝天」(いきしょうてん) です。

「意気衝天」の意味

「意気衝天」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「意気込みが天を衝くほど、激しく盛んなこと」とあります。「意気」は気力や心意気、「衝天」は天に向かって突き進むこと。あわせると、気持ちが高く燃え上がり、いまにも天を突き抜けそうな勢いがあるということです。

年齢を重ねるほど、体力や環境の変化に合わせて「守り」に入りやすい一方で、心の火まで小さくしてしまう必要はありませんね。「もう一度挑戦したい」、「役割が変わっても、前向きに歩きたい」。その気持ちを、短い言葉で端正に言い切れるのが「意気衝天」です。

例えば、第二の仕事に踏み出す、地域活動を始める、学び直しをする。そうした決意を「意気衝天の思いで臨みます」と添えると、勢いだけでなく、覚悟も伝わります。

元気さよりも「品よく」、気合いよりも「格調高く」、自分の背筋を伸ばしてくれる言葉。それが「意気衝天」です。

「意気衝天」の由来

「意気衝天」という四字熟語そのものが特定の中国古典の一節から直接生まれたわけではありません。「意気」と「衝天」という二つの言葉が組み合わさってできた言葉です。

しかし、そのルーツを探ると、中国の歴史書『史記』などに通じる精神性が見えてきます。

例えば、「天を衝く」(つく)という表現は、古くから非常に激しい怒りや、悲しみ、そして盛んな意気を表す表現として使われてきました。

「衝」という字は、「要衝」(ようしょう)や「衝撃」(しょうげき)という言葉にも使われるように、突き当たる、重要な地点、という意味を持ちます。そこから転じて、「天を衝く」という表現は、人間の内側から湧き出る感情が、物理的な限界を超えて天にまで達する様子を描写しているのです。

『史記』に「怒髪、天を衝く」(冠を衝く)という言葉がありますが、これは激しい怒りで髪の毛が逆立ち、被っている冠を突き上げる様子を表しています。

同じ「天を衝く」ほどのエネルギーでも、「意気衝天」は怒りではなく、「前向きなパッション」に使われます。

「意気衝天」を座右の銘としてスピーチするなら

四字熟語はやや改まった響きがあるため、語り口は柔らかく、笑顔を忘れずに。言葉の格調と、人間的な温かみのバランスが取れたとき、スピーチは聴衆の心に届きます。

以下に「意気衝天」を取り入れたスピーチの例をあげます。

第二の人生へつなげるスピーチ例

私の座右の銘は、「意気衝天」です。天を突き上げるほどみなぎっている状態を表す言葉です。この言葉を意識するようになったのは、50代に差しかかった頃のことでした。

それまで夢中で走り続けてきた仕事も、ある時期からふと「あとは流していけばいいか」という気持ちが頭をよぎるようになっていたのです。若い頃のような無我夢中の熱量は、確かに薄れており、正直に言えば、「もう十分やった」という言い訳を、自分に許し始めていた時期でもありました。

そんなとき、ある先輩からこの言葉を教えていただきました。「意気衝天。この四字が一番似合うのは、若者じゃない。経験を積んだ人間が、それでも前を向くときの言葉なんだ」と。

経験があるからこそ、見えるものがある。失敗を知っているからこそ、より深く挑める。若い頃の勢いとは違う、腹の底から湧き出るような気力。それを「意気衝天」と呼ぶのだと、そのとき初めて腑に落ちた気がしました。

人生はまだ続く。むしろ、ここからが面白い。天を衝くほどの気力で、これからの日々を歩んでいきたい。そう思っています。

最後に

年齢を重ねた世代の「意気衝天」は、若い頃のような無鉄砲な勢いとは違います。

経験という土台があり、分別というブレーキも持ち合わせている。その上で、あえてアクセルを思い切り踏み込む。それが、大人の「意気衝天」です。人生100年時代といわれる今、50代、60代は折り返し地点を過ぎたばかりの「青春の第二章」です。誰に遠慮することもありません。意気で、天を衝き上げるほどに人生を楽しみたいものですね。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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