文/鈴木珠美
過去に何度も女性系の各種メディアで作ってきた企画がある。
それは「胸がきゅんとした、男性の運転」。
思い出す限り並べると、
20代の女性ファッション誌で、
20代向け女性の生活サイトで、
30代向け女性のライフスタイルマガジンなどなど、
タイトルは毎回変わるが狙いは同じ。女性が男性の運転を見て、どきどき、恋心のようなときめきを覚えた瞬間を尋ねる企画だ。
15年前に行ったときも、
10年前に行ったときも、
5年前に行ったときも、
大抵、上位は同じ答えがランクインする。携帯からスマートフォンになり、電気自動車が走るようになっても、女性の心がときめく瞬間はあまり変わっていない。
「女性が、胸がきゅんとした男性の運転」について質問し、上位に挙がった回答を下記にいくつか紹介。
□運転が上手
・スマートに一発で縦列駐車。かっこいいなって思いました
・狭いスペースでもさっと停める一連の流れが素敵だった
・車線変更、合流などとってもスマート
・アクセル、ブレーキの踏み方などていねいで怖くない
□車のトラブルに強い
・タイヤがパンクしたときに、簡単に修理をしてリカバリー。素敵だなって思いました
・道でバッテリー上がりの車と遭遇。車を停めて手助けしていた様子が頼もしかった
□周囲に優しい
・横断歩道では停まって手で「どうぞ」と。優しいなって思いました
・車線変更する車などスマートに譲る。余裕がある大人な雰囲気が良かった
・譲られたときのお礼が慣れた感じでよかった
□道に詳しい
・ナビ通りの案内で行くのではなく、抜け道を探して走る様子に頼れると思った
・ナビはあくまで参照程度。道に詳しく自分で走っている様子がかっこよかった
□助手席への気配り上手
・先に私を助手席に乗せてくれて、ドアを閉めてくれた。紳士なふるまいにどきどきした
・トイレ休憩など適度に休憩してくれた
・寝てもいいよと気遣い
・少し強めのブレーキをしたときに私の体が前に行くのを支えようとしてくれた。頼もしさを感じました
ブレーキしたときに助手席の人が前のめりになるのを手でかばう……というのは、反対意見もある。「手を差し出す余裕があるならしっかりとブレーキを踏んでほしい」といったもの。とにもかくにも、運転が上手なこと、マナーを守っていること、適格な判断力と行動力、そして周囲と助手席に座った人への気配りが感じられると、女性は「素敵な男性!」と感じる。上記に挙げたことと真逆のことをすれば、評価は当然、急降下。
私自身も、素敵だなーと思う、殿方の車の運転に身をゆだねた経験はある。
待ち合わせ場所に行くと、男性は車の外に出ていてラゲッジルームに荷物を入れていた。私が到着したことに気がつくと、助手席のドアを開け、私が座ったことを確かめると「締めるよ」と声をかけ、ていねいにドアを閉めた。
車内は綺麗に整理整頓されていて余計なものが一切ないスッキリした空間。BGMはラジオだった。「飲み物を買うならコンビニに寄る? すぐに必要ないなら高速のサービスエリアで軽く朝食をとろうと思っているんだけど」
提案もスマート。目的地に行く前に高速道路のサービスエリアで朝食をとることにした。エンジンをかけ、車はすーっとていねいに発進。高速道路に乗る前の幹線道路は少し混んでいたけれど、無駄のない車線選びでスムーズに車は進む。男性の目線は常に前方。ときどきサイドミラー、ルームミラーに目をやる。周囲の流れをきちんと把握していることが助手席に座っている自分に伝わると、自然に安心感が増し、運転もとても心地がよく感じられる。車間距離も、ブレーキを踏むタイミングも適切だから、安心。ETCレーン選びも駐車場でも迷いがなく、無理、無駄がない。他車に道をゆずるときもスムーズでメリハリがある。周囲への車に対する対応力には頼りがいを感じてしまう。
交通ルールを守り周囲への気配りができると、運転者の性格もいい人に思えてくる。当たり前のことを当たり前にできることが魅力的。車は公共の道を共有して走っているけれど、車内はいわば移動型の部屋。つまり、車内というプライベートの空間の中で見る姿はその男性の本当の姿と対面しているような気持ちになってくる。さらに車内はプライベート、外は社会。社会に対して、彼自身がどう接するのかをも見ているような感覚になる。
車という道具は、人となりを見る機会にもなっていると思う。
どう活用するかは運転者次第だ。
文・鈴木珠美
カーライフアドバイザー&ヨガ講師。出版社を経て車、健康な体と心を作るための企画編集執筆、ワークショップなどを行っている。女性のための車生活マガジン「beecar(ビーカー)https://www.beecar.jp/ 」運営。