ケンカ別れをしたまま15年の歳月が過ぎ……。完全に縁が切れないようにつないでくれていたのは兄だった
電話で実家に一度帰って来るように言われた加奈子さんは翌週に休みを取り島根へ。その場では冷静な話し合いとはならず、ケンカしたまま実家を飛び出してしまいます。
「最初から母親は怒っていて、父親は呆れている感じでした。私はいつから始めているのか、どんなお店なのかなど嘘を言わずに正直に言いました。ただ認めてもらいたかったから。
でも『すぐに辞めろ』とか、『恥ずかしい』とか色々言われて……。私も興奮してしまっていたので何を言ったかよく覚えていませんが、最後に『もう二度と帰ってきません』と言い捨てて、家を出ました。あの時は本当にもう二度と帰るつもりはありませんでした」
それから15年、本当に加奈子さんは島根に戻ることはなく。さらには内緒にしてくれなかった妹とは帰省時にいなかったこともあり、京都に来たきりになっていました。その絶縁関係を打破してくれたのは年子の兄だったと言います。
「兄が仕事で京都に来たんです。その時には私は知り合いの紹介で結婚相談所の仕事をしていて、夜の仕事は27歳の時に辞めていました。でも数年経っていると歩み寄るタイミングを完全に見失っていましたね。そんな中で兄とは唯一連絡を取っていたんです。兄は実家を離れて東京で生活していたこともあり、両親と関係なく付き合うことができていたので。
兄は私には両親の近況を、両親には私の様子を伝えてくれていたみたいなんです。そして、両親との仲を繋いでくれたのも兄でした。『もう一回ちゃんと話をしに実家に帰ってこい!』と怒ってくれて。すごく怖かったので、兄に付き添ってもらい実家に帰りました」
15年ぶりに見た両親の姿は想像していたよりも小さかったそう。「会えていなかった分、普通なら少しずつ感じる両親の老いがより深く心に残ってしまって。これから何ができるかわからないけど、何があっても逃げずに話し合っていきたいと思います」と加奈子さんは語ります。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。