“支えてくれた”彼という関係性を気づかせてくれた母親の一言
彼への気持ちがわからないものの自分から別れを言い出してはいけないものだと思い込んでいた彩香さん。その気持ちに気づいてくれたのは母親でした。
「彼のことが好きかわからなかったまま、付き合いはさらに1年以上続きました。私から彼を振るなんて立場にないから、彼が望むのであれば一緒にいるしかなかった。家族とも公認の仲みたいになっていたし。
でも、気持ちの変化に母親は気づいていたみたいで。私が家で彼の話をしなくなったところから異変に気づいて、相談にのってくれました。素直な気持ちを伝えたところ、『支えてくれたからといって、自分の気持ちを抑える必要はない。普通のカップルなんだから』と言われました。普通のカップルじゃなかったんですよね。自分が自分で病気だったことを後ろめたい過去のようなものだと考えていたんだなって思いました」
その後、彼とは話し合い、別れを選びます。彼はそこでも優しく、彩香さんの気持ちを受け入れてくれたそうです。
「彼には感謝しかありません。辛い入院生活を超えられたのは彼がいてくれたからだと思っています。でも、普通のカップルのように気持ちがなくなったという理由で、別れを選びました。彼と別れてきた日に病気が発覚した時でさえ母親の前で泣かなかったのに、あれから初めて泣いたんですよ。母親は笑いながら慰めてくれました」
彩香さんはそこから再発もなく、元気に生活をしています。その後家族との関係に変化は何かあったのか聞いてみると、「最近、姉が結婚したんです。今までは姉にだけ結婚しなさいと言っていた母親でしたが、それが今私に向かっている感じですね。父親は昔から穏やかな人だったけど、年々丸くなってきています。今は母親と私が目の前でよくケンカしているので近くでオロオロしていますよ。あれから7年ちょっと。これからもこの日常を大切にしていきたいと思います」と彩香さんは語ります。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。