さて、曽根さんは、三田さんの1億4000万円の相続財産を確認、評価してリスト化した。そして納税額を減らすために、いったんは母親が全部を相続し、その後に母親が節税対策を取ることで、二次相続の対策まで含めた提案をした。
相続税は、相続対象が不動産か現金かでも税率が変わり、不動産の用途(自宅用か事業用かなど)も影響してくる。
父親の財産の半分は、両親が住んでいた都内の自宅(戸建て)だった。母親が1人暮しを続けるには広すぎること、清掃、庭の手入れなど維持が大変なことなどから、資産組替が妥当だ。そうすれば、二次相続での相続税の負担増が回避できる。戸建ての自宅を売却し、駅に近いコンパクトなマンションなどに住み替え、残りは賃貸不動産にしたり、子供に贈与したりして、評価を下げておくようにする方法がいいと曽根さんはアドバイスした。
「今回は、ひとまず母親に全てを相続してもらい、その後の時間で負担が少なくなるように対策を実行していきます。二次相続までのイメージができたので、不安がなくなり、母親を中心に妹とも協力してサポートしていこうと思いました。自分たちの負担もなく、本当によかった。」
三田さんの場合は、配偶者税額軽減の特例を使うことで節税ができたが、安易にこの特例を使ってしまい、二次相続の時に苦しむというケースも少なくない。二次相続の対策まで提案、サポートしてくれる専門家選びがポイントになる。
監修・曽根惠子さん
夢相続 代表。PHP研究所勤務後、不動産会社設立し、相続コーディネート業務を開始。1万3000件以上の相続相談に対処、感情面、経済面に即したオーダーメード相続を提案。『相続はふつうの家庭が一番もめる』(PHP研究所)、『相続に困ったら最初に読む本』(ダイヤモンド社)、『相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル』(幻冬舎MC)ほか著書多数。
取材・文/沢木文
イラスト/上田耀子