あらゆるパターンの相続トラブルを目撃してきた相続問題の専門家・曽根惠子さんに、これまであった相続トラブルの実例と、その解決策をご紹介していただきます。親はもとより自分自身も“終活”を意識する年齢にさしかかっているサライ世代。後戻りできない骨肉の争いを避けるために、ぜひ読んでおいてください。

【相続事件簿02】父の財産1億円は放棄!? 暴力で金を奪う実姉に家を追い出され老後貧困に?

今回の相談者は、津島道子さん(66歳・仮名)。津島さんは、東京都足立区に夫と賃貸住宅に住んでいます。津島さん夫婦のお嬢さん2人は、結婚して独立しており、孫も3人います。

「私たちは老後貧困まっしぐらというか……現在、駅からバスで20分の賃貸アパートに住んでいます。もともと、私たち家族は足立区内にある二世帯住宅に父親と住んでいたのですが、6年前に姉が3度目の離婚をして出戻ってきた時に追い出されたのです。このときに、姉の借金の精算のために、夫婦の貯金から300万円を出してしまい、生活に余裕がなく……」

聞けばお姉さんは現在70歳という年齢にも関わらず、美しく自信たっぷり。自分の意のままにならないと、暴力や暴言で家族を支配してきたそうです。

「姉は容姿で劣る私に対しても高圧的で、何事も自分の思うままにしてきました。

実は小さい頃から、おもちゃや服など欲しいものは何でも買い与えられ、両親も“お姉ちゃんはキレイなのに、道子はね……”とか、“お姉ちゃんにあげるんだから我慢しなさい”というふうに、姉を優先させてきました。

というのも、姉は気に入らないことがあると親にモノを投げつけたり、母親の財布を奪ってお金をとったりと、わがまま放題をしてきたので、私たち家族は“お姉ちゃんが暴れる”と思うと、つい言うことを聞いてしまうのです。

おそらく母が50代という若さでガンで亡くなったのも、姉からのストレスが原因なのでは……と思っています」

両親から蝶よ花よと育てられたお姉さんは、容姿が美しいから男性からモテるものの、結婚してもうまくいかず、離婚を繰り返してきました。

「姉は3回目の離婚をし、借金まみれで実家に戻ってきたときに、私たちを追い出したのです。今も仕事もせずにブラブラしています。父親の介護が必要になった時も、全くサポートせずに、私たちに介護を押し付け、悪びれもせずに韓国や台湾に遊びに行っていました」

相続の問題がおこったのは、先日90歳でお父様が亡くなったこと。亡くなる前の4年間、認知症になってしまったお父様の介護は、道子さん夫婦が行う羽目に。片道1時間、自転車で毎日実家に通っていたそうです。

「父親はもともと土地の名士で、“先祖代々の土地を長子に継がせたい”という思いが強くありました。父親自身は男の子に恵まれなかったので、孫と養子縁組をしました。

その孫というのが、姉が最初の結婚で産んだ男の子なのです。相手の家に置いて離婚したのに、養子縁組のために探し出したのです。ほとんど顔をみなかった孫と、養子縁組するほど、父の“長男”に対する執着の強さがわかり驚きましたね。

今、その男性は父親の住居部分の一室で暮らしています。

姉とはこれ以上関わり合いたくないので、相続放棄したいのですが、おとなしい夫と娘たちが“私たちばかりが損をしている”と激怒。姉に相続について聞くと“家しかない、お金はない”と繰り返すばかり」。

お父様が残したものは不動産だけではなく、数年前に土地を売却したことで預金があることがわかりました。評価をすると、土地の持ち分7000万円、預金3000万円で、少なくとも1億円の財産に。遺言書がないため、法定割合の3分の1だと3333万円になりますので、相続を放棄せずに、お姉様と養子である姉の息子と3人で遺産分割協議(※1)をして相続するのが第1選択となります。

ところが、道子さんは、「養子縁組した息子もいるし、姉の性格や態度は昔から変わらず、私に勝ち目はありません。夫や子供たちは不満を言いますが、私もこれから働けば済むことなので、父親の財産については相続放棄したいのです」とのこと。

また、道子さんはこう続けます。

「私が父親の財産を相続すると 姉は気に入らないはずで、そうした後の報復が怖いのです。夜中に私たちのアパートに来てドアを叩き“金を返せ!泥棒”など怒鳴ったりするかもしれない。3000万円は欲しいですが、姉とは関わらず、気持ちの安心、身の安全のほうを選択したいのです」

相続のストレスをかかえないために、敢えて財産を放棄するという道子さんの選択肢は一理あると言わざるを得ません。道子さんにはそれだけでなく、まだ課題もありました。

「もうひとつ不安があり、母親が亡くなった時に共有にした土地もあり、ずっと姉と共有し続けると自分たちの相続が大変になります。名義変更などはどうすればいいのでしょうか……」

*  *  *

さてこんな場合、いったいどのようにすればいいのでしょうか? 曽根さんの解説とアドバイスを聞いてみましょう。

※次ページ>>「家族に恐怖政治を行うモラハラ的な相続人がいるケースはどうすればいいか」

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