あらゆるパターンの相続トラブルを目撃してきた相続問題の専門家・曽根惠子さんから、これまであった相続トラブルの実例と、その解決策をご紹介いただく当企画。
親のことはもとより、自分自身も“終活”を意識する年齢にさしかかっているサライ世代にとっては大切な知識である。後戻りできない骨肉の争いを避けるためにも、ぜひ読んでおいてほしい。
【相続事件簿07】親子円満でないと相続税がかかる!?
今回の相談者は、村田春奈さん(仮名・55歳)。89歳になる彼女の父親は、娘である春奈さんから財産について何を聞いても、「おまえに教える必要はない」の一点張りという。
春奈さんの母親は15年前に亡くなっており、子供は春奈さんと妹さんの2人。春奈さん姉妹は結婚して実家を離れたが、ふたりとも父親が住む神奈川県相模原市のマンションの近くに家を持ち、行き来をしてきた。
「父はもともとまわりに頼ることが嫌いで、基本的に私達には弱みを見せない性格です。母が亡くなってからは自分で家政婦さんを雇って家事をしてもらってたほどで、とにかく子供には頼りたくないようなのです。私たちも父はとっつきにくいので、母親が亡くなってからはなおさら、どう接していいかわからないまま、今に至ります。」
「父は最近、骨折してしまい、入院を余儀なくされて、現在もリハビリ中です。ひとりでの生活は困難となり、しばらくは自宅に戻れないため、私と妹が交代で病院に行って、父のサボートをしています。それでも父はそんなに嬉しそうな様子もなくて……。」
そんな春奈さんの気がかりは、相続のこと。
「父は会社を経営していたのですが、私も妹も会社を継がなかったため、70歳で従業員に譲ってからも、80歳までは監査役として会社に顔を出していました。そんなことから、かなりの預金があるかと思われますし、自宅のマンションも父親名義です」
「2年前に、相続税の改正が行われたことから、相続税が気になるようになりました。私達が父に“どれくらいの預金があるの?”など聞いてみましたが、“教える必要ない”の一点張り。」
不安になった春奈さんと妹が、父親の入院中にふたりで実家に行って父の財産に関する書類などを確認してみたところ、預金は3000万円、有価証券が2000万円あることがわかった。
「合わせて自宅マンションの評価額を調べたところ1500万円となり、確認できた財産だけでも6500万円となりました。」
相続人が2人の場合、相続税の基礎控除が4200万円、父親の財産はそれを2300万円超えるため、相続税の申告が必要になり、概算で230万円の相続税がかかるという計算となる。
さて、こんなケースでは、どういう対策が求められるのだろうか。相談を受けた曽根惠子さんのアドバイスを見てみよう。
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