あらゆるパターンの相続トラブルを目撃してきた相続問題の専門家・曽根惠子さんから、これまであった相続トラブルの実例と、その解決策をご紹介いただく当企画。
親のことはもとより、自分自身も“終活”を意識する年齢にさしかかっているサライ世代にとっては大切な知識である。後戻りできない骨肉の争いを避けるためにも、ぜひ読んでおいてほしい。
【相続事件簿10】
兄弟3人で実家を共有相続、問題先送りの代償は?
今回の相談者は、東京都下に住む結城信三さん(仮名・52歳)。信三さんは3人兄弟の末っ子であり、父親は10年前に胃がんで亡くなった。その後、母親が実家で1人暮しをしていたが2年前に亡くなった。男ばかりの3兄弟だが、それぞれ関東圏に自宅を購入して家族と暮らしていた。彼ら全員、両親と同居はしていない。
曽根さんのところに相談したのは、母親が亡くなって実家の相続手続きをするときに、3兄弟でそれぞれ3分の1とする共有名義にしたことに端を発する。
当時は、3人とも生まれ育った家を残したいという思いがあった。実家は空き家になるものの、先祖代々の仏壇があり、親戚が集まって法事を行うにも実家はあったほうが便利だった。それゆえに、実家は3人の共有名義にして、落ち着いたら分け方を決めようということになっていたという。
「しかし、母親の死後、2年が経過し、母親の3回忌も終えました。実家に対する気持ちの整理もついたので、そろそろ実家を分けようかという話になったのです」と結城さんは言う。
兄弟3人で話し合ったところ、兄2人は売却して3等分にすればいいという意見だが、結城さん自身は生まれ育った実家を残していきたいという気持ちが強くなっていった。
そもそも、末っ子の結城さんは両親にかわいがられていた。誰よりも実家の近くに住み、夫婦で母親の生活のサポートをしてきた。先に父親が亡くなった時も献身的に看病していたのは結城さんだったという。それゆえに、兄たちも結城さんのいうことは無碍にできない。
「兄達は、実家を残したいならそれでいいから売るのはやめてお前たち家族が住め、と言ってくれました。もちろんそれはいいのですが、兄達の家族が文句を言い出しました。家は売ればお金になります。私達兄弟は皆、結婚が遅く子供の大学の費用などを払い切ったばかりで、本当にお金がないのです。だから相当モメることが想定されるので、ぜひお力を貸してください」
それでは曽根惠子さんのアドバイスを見てみよう。
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