廃墟の涸れた池に水が甦り、月光にあそぶ貴公子の幽鬼が舞う……。かの世阿弥作の謡曲『融』(とおる)は、仲秋の名月の夜を舞台にした、能の代表的演目のひとつ。源氏物語の光源氏のモデルとされた源融(みなもとのとおる)の優美な生活への追憶を通して、滅び去った美しく高貴なものへのあこがれをうたいあげる名曲です。
この「秋の名曲」をじっくりと味わえるイベントが、10月27日(木)に東京・千駄ヶ谷の国立能楽堂で開催されます。お囃子ワークショップ、演目についての解説に続き、能『融』を拝見します。
今回演じられる『融』は、後半のみどころを半能として演じられますが、観世流の特殊演出「舞返」の小書が付き、テンポの速い「急之舞」が入る華やかな演出となります。
お囃子で日本の音楽の源流を聴き、謡の体験を通して美しい日本の言の葉を味わいつつ、能が伝えてきた650年の伝統を体感できる催し。能は初めてという方にもおすすめのイベントです。
【ジャポニスム振興会 東京公演】
能の来た道、日本のゆく道 巻三
お話・ワークショップ・半能『融 舞返』坂口貴信
能『融』秋の名曲に秘められた鬼のものがたり
■日時:平成28年10月27日(木) 開演19時・開場18時15分 ※21時頃終了予定
■会場:国立能楽堂(東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1)
■主催:ジャポニスム振興会
■協力・後援:一般社団法人東京能楽囃子科協議会
■後援:公益財団法人日本伝統文化振興財団、特定非営利活動法人和文化交流普及協会
【プログラム】
■お囃子ワークショップ(お囃子解説と演奏)
お話:大倉源次郎、成田寛人(笛)、田辺恭資(小鼓)、柿原孝則(大鼓)、大川典良(太鼓)
■謡のひと時~能『融』のお話
会場のみなさまと謡を連吟します
森常好(ワキ方)、武田宗典(シテ方)
■観世流 半能『融 舞返』
シテ 坂口貴信
ワキ 森常太郎
笛 一噌幸弘
小鼓 大倉源次郎
大鼓 佃良太郎
太鼓 林雄一郎
後見 観世芳伸、武田友志
地謡 角幸二郎、清水義也、坂井音隆、長山桂三、谷本健吾、武田宗典
■能舞台 案内・解説(ご希望の方)
※料金や申し込み方法については下記ウェブページをご参照ください。
http://japonisme.or.jp/event/161027/
文/編集部