日照時間が長いほど開花が活発になるので、鉢は日当たりのよい場所に置くのが鉄則。ただし品種により、水温が上がりすぎると開花のペースが落ちる品種もあるので、夏場は注意が必要だ。

「スイレンの栽培は難しいと思っている方が多くいます。しかし、やってみれば驚くほど簡単に花を楽しむことができます。必要な環境は直射日光があたることです。マンションのベランダでも育てられます。水やりが必要ないので、旅行のときも安心です」

というのは、大分県日田市でスイレンとハスを育て園芸店などに出荷する宮川花園の宮川浩一さん(55歳)だ。ここでは宮川さんに園芸初心者でもできる温帯性スイレンの育て方について指導してもらった。園芸店などで苗とともに揃えるものを宮川さんに聞いた。

「スイレンを植える内鉢と、水を張って内鉢を沈めるスイレン鉢の2種を用意してください。大きさは置き場所の広さによります。あとは用土と肥料を準備します」

専用のものはなく、プラスチック容器や園芸用の鉢などを用いる。外のスイレン鉢は大きさやデザインなどによるが、数千円から1万円前後と種類が多い。土は粘土質であれば用土を選ばず、肥料もとくに指定はない。北川村の「モネの庭」では、近隣の田んぼの土を使っていた。

「ただし、肥料は水中だと溶け出すのが早くなるので、緩効性の固形肥料をおすすめします。園芸店で水生植物用の土と肥料を入手するのがよいでしょう。内鉢の用土に肥料を置きスイレンの苗を植えます。表面に赤玉土を敷くと泥の舞い上がりを防ぐ効果があります。その鉢をスイレン鉢に沈めれば完了です」(宮川さん、以下同)

鉢は2種類が必要

スイレンを植える内鉢(上)と内鉢を沈めるスイレン鉢の2種を用意。スイレン鉢は内鉢の直径の2倍以上が望ましい。内鉢は園芸用の鉢(穴はあってもなくても可)でよい。

土と肥料

赤玉土(上、5L、500円前後)は水で練って使い、水生植物用の土(中、5L、1000円前後)はそのまま使う。水生植物用の肥料(下、120g、400円前後)を元肥にする場合は鉢の下に敷く。追肥は鉢の上から押し込む。

植え付け

肥料は規定量を鉢の底に敷いておく。スイレンは粘土質の土であれば用土を選ばないが、腐植土などを3割程度混ぜると肥料の効果がより高まる。
葉の付け根部分が見える程度まで土を入れる。量は鉢の高さの7〜8分目。葉が乾燥しないようにときおり水をかける。完了すればスイレン鉢に沈める。

日当たりをよくして育てる

日頃の管理も難しくはない。目安として春に植えたら秋までに8週〜12週間ごとに追肥をし(取扱説明書に従う)、水が減ったら足していく程度だ。水は水道水でよい。スイレンは強い植物なので、病害虫の対処も基本的に必要ない。

「いちばん大事なのが日当たりです。植物は光合成により自ら栄養を作りますので、スイレンにとっては日光が食事のようなものです。少なくとも1日6時間程度の日照が必要になります」

水温が高くなると生長が進み、5月〜6月くらいから花を咲かせ始める。そのうちに葉が老化してくると腐って水が濁るので、付け根から切り落とす。

「もし夏に開花がとまったら、スイレンがエネルギー切れを起こしている可能性がありますので、追肥してみてください。日照がよければ秋まで次々に花を咲かせ、楽しませてくれるでしょう」

温帯性スイレンは耐寒性があるので、用土や地下茎が凍るほどの寒冷地でなければ水を張ったまま屋外で冬越しできる。寒冷地の場合は屋内へ避難させるが、屋内外とも水を切らさないよう注意する。

「翌年以降、地下茎が伸びて内鉢いっぱいになってしまうと、花が咲きにくくなるので茎をカットします(下写真)。カットした部分は株分けしてスイレンを増やすこともできます」

翌年の地下茎

内鉢から土ごと取り出し、地下茎の根を切る。一度掘り上げると根は腐ってしまうので、きれいに刈り取るのが肝心。地下茎は園芸バサミなどを使い生長点(先端)から7〜8cmのところ(赤破線部分)を垂直にカット。芽が付いている部分は株分けして育てることができる。

スイレンは冬越しをして、また翌春から可憐な花を付け始める。モネも春になりスイレンが咲くのを待ちわびながら「水の庭」を描き続けたに違いない。

メダカを飼うとボウフラ除けになる。メダカの投入は植え付けから1週間程度経過してから行なう。スイレン鉢が直径40cmなら10匹程度の飼育が目安。
宮川浩一さん。
祖父が65年前に始めた種苗場をスイレンとハス専門にして30年以上が経つ。個人向けの販売はネット経由で行なう。スイレンひと株で1600円〜(送料別)。

宮川花園

大分県日田市上城内町5-7
電話:080・9295・9701
https://lotus.raindrop.jp/howto/hardy.html

取材・文/宇野正樹、福田 誠 写真/宮川花園、PIXTA

※この記事は『サライ』本誌2025年1月号より転載しました。

『サライ』2025年1月号には長さ約76cm『睡蓮〈緑の反映〉』が引き出し付録に。

 

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