野生種と初期に改良された品種

ニンファエア・アルバ(Nymphaea alba)

野生種の温帯性スイレンだが、美しい花が大きく咲くため園芸種としても親しまれている。冷涼な地域に自生していたため、春先の頃から生長し開花時期も早い。

‘フロエベリ’(Nymphaea ‘Froebeli’)

初日は濃いピンクの花が星形に開く温帯性スイレン。野生種の「ルブラ」を固定化した栽培種で、スイスのカール・オットー・フレーベルが1898年に作出した。

ニンファエア・メキシカーナ(Nymphaea mexicana)

米国のフロリダ州からテキサス州、メキシコまで自生する温帯性の野生種。鮮やかな黄色の花弁で葉の表面に茶色の斑点。品種改良において黄色のスイレンの親となっている。

19世紀後半に登場したスイレンの育種家、マルリアックは生涯で100種を超える品種を作出した。城山豊さん(https://serai.jp/hobby/1210116)はマルリアックの登場により、スイレンの品種改良が進んだという。

「マルリアックは1860年よりスイレンの品種改良に取りかかります。それから1910年までの間に数多くの品種を世に出しました」(城山さん、以下同)

マルリアックが品種改良に取りかかる4年前に、スウェーデンでニンファエア・アルバ(学名/上写真1番目)の変種である赤色のスイレン「ルブラ」が発見されている。

「これが、その後の温帯性スイレンに赤色の改良品種が増えていくきっかけになりました。さらに1881年にはメキシコ原産のニンファエア・メキシカーナ(上写真3番目)という黄色いスイレンが紹介され、日本原産のヒツジグサなどと交配し、様々な色と形のスイレンが作られていったのです」

育種家・マルリアックがモネと同時代に作出した品種

‘アトロプルプレア’(Nymphaea ‘Atropurpurea’)

鮮やかな赤の花弁が星形に開き、黄色の雄しべがコントラストを見せる。温帯性の栽培種。マルリアックが1890年に作出し、その後、赤い花の園芸品種として派生種は多数。(C) Latour-Marliac

‘マリアセア・ロゼア’(Nymphaea ‘Marliacea Rosea’)

ピンクの花は開花すると数日で白色に近づいていく。マルリアックが1887年に作出、パリ万博の時点で存在した品種のひとつ。モネも会場で目にしたかもしれない。(C) Latour-Marliac

‘スルフレア’(Nymphaea ‘Odorata Sulphurea Grandifloria’)

野生種を交配しマルリアックが1888年に作出。モネが1894年に注文した記録が残るマルリアックの育種園は、現在もフランス南部のル・タンプル シュルロに存在。(C) Latour-Marliac

鮮やかに彩られていく『睡蓮』

白一色だったスイレンが、赤や黄色に彩られていく時代、モネの『睡蓮』には様々な色の花が水面に浮かんでいる。新しい品種の登場と呼応するように、晩年までモネは彩り豊かなスイレンを描き続けたのである。

モネが温室で育てた青いスイレン

ニンファエア・カペンシス・ザンジバリエンシス(Nymphaea capensisvar. zanzibariensis)

モネが熱帯性の青いスイレンを1897年にマルリアックから購入した記録が残る。憧れだった青のスイレンは屋外の「水の庭」では育成がかなわず、温室で育てられた。

写真/北川村「モネの庭」マルモッタン、PIXTA、ラトゥール・マルリアック

※この記事は『サライ』本誌2025年1月号より転載しました。

『サライ』2025年1月号には長さ約76cm『睡蓮〈緑の反映〉』が引き出し付録に。

 

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