ライターI(以下I): 左大臣藤原道長(演・柄本佑)が狩衣姿でまひろ(演・吉高由里子)宅を訪れました。
編集者A(以下A):従者の百舌彦(演・本多力)も同道していました。道長の来意については視聴者の方も予想していたかとも思われますが、案の定、『枕草子』に対抗した新たな物語の執筆を依頼するためでした。
I:しかし、まひろの常に煮え切らない態度にもどかしい思いをする人、逆に「わかる、わかる」と共感する人、どちらの比率が高いでしょうか。
A:「そうやすやすと新しいものは書けませぬ」とか「買いかぶりにございます」という煮え切らないまひろに対して、道長はきっと「俺の願いを一度くらいかなえてくれてもよいではないか」くらいは思っているだろうなと想像してしまいました。
二妻源明子の子供たち
I:さて、最近毎週のように展開される「道長の妻たち」のさや当てですが、今週は道長が正妻倫子(演・黒木華)とすれ違っているような描写の直後に、二妻源明子(演・瀧内公美)と同衾する刺激的な場面が登場しました。明子は倫子所生の頼通(演・渡邊圭祐)が元服して正五位下の官位を与えられたことに言及して、まもなく元服する自分の息子たちにも頼通同様に処遇してほしい旨、道長におねだりする様子が描かれました。
A:どこかで見たような場面と思った視聴者も多かったと思います。かつて、藤原兼家の妾妻だった藤原道綱の母(劇中では藤原寧子/演・財前直見)は息子道綱(演・上地雄輔)の処遇について、藤原兼家にしつこいくらいにお願いしていました。その結果なのかどうか、道長の異母兄にあたる道綱は道長政権で大納言という要職を務めています。
I:子の処遇を気にする親の心はいつの時代も変わらぬということでしょうか。
A:この場面を見て、二妻の息子が立身する要諦は、「野心」を見せないことなんだと感じました。道長異母兄の道綱は「野心」を見せず、一見凡庸であるかのように振る舞い、間違っても道長へ反旗を翻すそぶりも見せない。「この兄は自分に逆らわないだろう」ということで、道長は道綱を要職につけていると思われます。
I:そういえば、道長は明子に対して「明子が争う様子を見せれば、息子たちもそういう気持ちになってしまう。気をつけよ」とたしなめていました。なんだか貴族社会で生きていく「処世術」も大変ですね。そういえば道長の直下の右大臣藤原顕光(演・宮川一朗太)は道長とは従兄弟の関係ですが、凡庸だったといわれています。これも凡庸に見せかける顕光の処世術なのでしょうか……。
A:ちょっと脱線しますが、倫子と明子の男兄弟の処遇も比較すると面白いですよ。明子の兄源俊賢(演・本田大輔)は参議に列せられ、公任(演・町田啓太)、斉信(演・金田哲)、行成(演・渡辺大知)と並んで「四納言」と称される立場を得ます。倫子の男兄弟源時中、扶義は、道長の最側近の地位は得られなかったようです。男兄弟の処遇でいえば明子に軍配があがったなと思ったりします。
【まひろとあかねの『枕草子』談義。次ページに続きます】