一条天皇への不満を皇太子に語らせる
I:ここで場面は一条天皇の年上の皇太子(東宮)、居貞(いやさだ)親王(演・木村達成/後の三条天皇)の在所に転じます。
A:皇統を整理すると、第62代村上天皇のふたりの皇子は、冷泉天皇(63代)、円融天皇(64代)として即位します。円融天皇の次は、冷泉天皇の皇子花山天皇(65代)が継いでいます。居貞親王は、花山天皇の異母弟になります。一条天皇は66代目になります。
I:居貞親王と一条天皇は父方でも母方でも従兄弟なのですが、冷泉系と円融系が皇統を交互につないでいるのは、鎌倉時代後期の持明院統と大覚寺統の皇統争いを思い起こさせますね。
A:道長の父藤原兼家は、冷泉天皇に長女の超子を入内させ、居貞親王が誕生していました。こうしてみると、異なる皇統それぞれに娘を入内させていた兼家の入内工作はうまく展開したということでしょう。この時に居貞親王に嫁いで敦明親王を儲けていた藤原娍子(演・朝倉あき)は道長のはとこにあたる女性で、太政大臣藤原師伊(もろただ)の孫になります。ここで居貞親王が、「出家した尼が子を生むとは由々しきことだ」と出家の身で皇女を生んだ中宮定子に関して、当時の貴族社会の空気を簡潔に表していることに留意いただければと思います。
I:なるほど。
A:そして、ナレーションで居貞親王のことを「道長のもうひとりの姉の子である」ということが説明されました。詮子の姉でもある超子ですね。『光る君へ』では劇中に登場しない人物がいます。そうした存在を把握すると「裏設定」のようで楽しいですよ。例えば、まひろの姉や異母弟たち、為時にも兄為頼がいて、劇中で藤原宣孝(演・佐々木蔵之介)が担っていた役割の半分くらいは為頼がやっていたことだといいます。藤原伊周(演・三浦翔平)の異母兄道頼も登場しませんでした。そういう人物に思いを馳せるのも楽しかったりしますね。
【越前雲丹と藤原宣孝のプロポーズ。次ページに続きます】