文/川口陽海

ヘルニア・腰痛・坐骨神経痛「痛くて顔を洗えない、前に屈めない」を改善するストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第27回】

腰椎椎間板ヘルニア、腰痛、坐骨神経痛の際、痛みで体を前に屈めることができなくなることがあります。

■朝、顔を洗えない
■靴下や靴を履くのが大変
■下の物を取ったり拾ったりするのが怖い
■髪を洗うときに体を前に曲げられない
■しゃがめないので自販機で飲み物を買えない

地味に毎日続くこのような症状は、本当につらいですよね。

今回は、筆者の腰痛トレーニング研究所でおすすめしている、体を前に屈める時の痛みを改善するストレッチをご紹介します。

前に屈めない原因は2つ

それは、

1 腰や骨盤、脚などの筋肉が固く緊張している
2 体幹をしっかり支えられない(体幹インナーマッスルの機能低下)

この2つです。

体を前に屈めるには、

『腹圧と腹筋や背筋で体幹を支えながら、腰やお尻、下肢の筋肉を適度にゆるませる』

必要があります。

簡単に図で説明すると、下の画像のようになります。腹圧と腹筋や背筋で体幹を支えながら、腰やお尻、下肢の筋肉を適度にゆるませる

しかし、慢性の腰痛や坐骨神経痛の方の場合、

『腰や骨盤、脚の筋肉が固く緊張しているうえに、体幹をしっかり支えられない』

ために、スムーズな前屈み動作ができず、痛みがおきてしまいます。

体幹をうまく支えられないので、痛みを避けるために手を膝について支えたり、体を前に曲げずまっすぐ下に腰を落としたり、といった不自然な動作をするようになってしまうのです。

でも大丈夫!

腰や骨盤、下肢の筋肉をゆるめ、体幹をしっかり支えられるようにすれば、痛みなく前屈み動作ができるように回復します。

前屈み動作で痛みの原因となる筋肉

次のような筋肉が緊張してこり固まると、前屈み動作で痛みの原因となります。

【脊柱起立筋】【脊柱起立筋】

脊柱起立筋は背骨の両側にあり、腰から首までつながっている筋肉です。

文字通り背骨を起立させて支えたり、身体を反らせる時などに働きます。

脊柱起立筋が緊張すると、前屈みになる時に上の図の赤い部分のように、腰からお尻にかけての痛みを起こします。

【腰方形筋】【腰方形筋】

腰方形筋は、腰に手を当てた時に親指が当たるあたりにあり、肋骨と背骨(腰椎)と骨盤をつなぐ筋肉です。

腰が疲れた時や痛む時などに、自然と指で押したり揉んだりする部分です。

この筋肉は骨盤や腰、背骨を支えたり、身体を左右に曲げる時などに働きます。

腰方形筋が緊張すると、前屈みになる時に上の図の赤い範囲のように、腰からお尻にかけての痛みを起こします。

【中殿筋】【中殿筋】

中殿筋は、骨盤と大腿骨をつなぐ筋肉です。

骨盤や股関節を支えたり、股関節を動かしたりする役割があります。

中殿筋が緊張すると、前屈みになる時に上の図の赤い範囲のように、腰の真ん中あたりからお尻にかけての痛みを起こします。

【ハムストリング】【ハムストリング】

ハムストリングは腿の裏の筋肉で、骨盤の坐骨結節から膝下の脛骨につながる筋肉です。

膝を曲げたり歩く時に脚を後ろに蹴り出したり、骨盤や股関節を支えたりする役割があります。

ハムストリングが緊張すると、前屈みになる時に上の図の赤い部分のように、腿の裏に痛みをおこします。

本連載をいつもご覧の読者の方はお気づきかもしれませんが、これらの痛みの原因となる筋肉は、前回記事にした、『朝起きるときの痛み』の原因となる筋肉と重複するものが多いのです。

また、腰や骨盤の周囲や下肢には他にもたくさんの筋肉があり、それらが痛みの原因となる場合もあります。

これらの筋肉をストレッチすることで、前屈み動作の際の痛みを改善することができます。

ストレッチをする前に緊張した筋肉をほぐすと効果的

ストレッチをする前に、緊張した筋肉をほぐすとより効果的です。

テニスボールを使って腰やお尻、脚の筋肉をほぐしてみましょう。

自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより

仰向けで膝を立て、身体を傾けてテニスボールをお尻や腰のあたりに優しく当て、そっと体重をかけていきます。仰向けで膝を立て、身体を傾けてテニスボールをお尻や腰のあたりに優しく当て、そっと体重をかけていきます

何か所かあてていくと、痛気持ちよく効くポイントが見つかると思います。

ポイントが見つかったら、そのまま身体の力を抜きます。とくにボールが当たっているところの力をうまく抜いてください。

10~20秒ほど当てたらボールを少しずつずらし、次のポイントを探します。

このように繰り返しながら、腰からお尻、脚にかけてよくほぐすようにしてください。

下の図は先ほど見た骨盤周囲の【中殿筋】の図ですが、図の中にある✖印のあたりが緊張して痛みの原因になりやすい部分です。【中殿筋】

この✖印のあたりを狙ってボールをあててみましょう。

他の画像も参考に、効くポイントを探してみてください。

このような『緊張して痛みの原因になりやすい筋肉内のポイント』を『トリガーポイント』と言います。

トリガーポイント』について詳しくは、以下のページをご覧下さい。

腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療

テニスボールでほぐす方法は、本連載で以前詳しく記事にしております。よろしければそちらもぜひご覧いただき、参考になさってください。

テニスボールで腰ほぐれる!5分でできる簡単ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第4回】

※ご注意)
強くやり過ぎたり、長時間やりすぎたりすると、かえって痛みが増すことがあります。
はじめは1カ所10~20秒程度、全体でも5~10分程度にしましょう。

また、ほぐしている時に『すごく痛い』『嫌な感じや不快感』などがある、またはほぐした後に痛みが残ったり、痛みが増したりする。このような場合は中止してください。

前屈み動作の痛みをやわらげるストレッチ その1

今回は、イスに座っておこなうストレッチを3つご紹介します。

一つ目は、イスに座って上半身を前に屈めていくストレッチです。

下の図のように、イスに座ったところから上半身を前に屈めていきます。イスに座ったところから上半身を前に屈めていきます

この時に、背中は大きく丸めず、股関節から体を倒すようにしてください。

図では手のひらを床につけていますが、そこまでできなくても可能なところまで前に屈めてみましょう。

そのまま力を抜いて深呼吸しながら、30秒~1分ほどストレッチします。

そしてゆっくりと上半身をおこして戻ります。

これを2~3回繰り返します。

このストレッチは、背中から腰の筋肉を伸ばすストレッチです。

立ったままの前屈では痛みが出る方でも、このストレッチはできる場合が多いです。

この動作をすることに怖さがある場合は、少しずつゆっくりやってみてください。

※ご注意)
痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。

前屈み動作の痛みをやわらげるストレッチ その2

2つ目は、お尻の筋肉(殿筋)のストレッチです。

1つ目のストレッチが問題なくできるようでしたら、このストレッチも試してみてください。

自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより

足の裏がしっかりつく高さのイスに、やや浅めに腰かけます。片方の足首を、反対の膝に乗せます

片方の足首を、反対の膝に乗せます。

そのまま上半身を股関節から前に倒しますそのまま上半身を股関節から前に倒します。

背中や腰は丸め過ぎず、胸を脚に近づけるようにしていきます背中や腰は丸め過ぎず、胸を脚に近づけるようにしていきます。

適度にお尻の筋肉が伸びたところで止め、30秒~1分ほど伸ばします。

終わったら上半身をゆっくり戻し、反対の足も同じようにおこないます。

片側2~3回ずつおこないます。

※ご注意)
痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。

前屈み動作の痛みをやわらげるストレッチ その3

3つ目はお尻から腰にかけてのストレッチです。

1つ目、2つ目のストレッチが問題なくできるようでしたら、このストレッチも試してみましょう。

自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより

足の裏がしっかりつく高さのイスに、やや浅めに腰かけます。

片方の足首を、反対の膝に乗せます片方の足首を、反対の膝に乗せます。

組んだ脚の膝を手で軽く押さえ、上半身を反対方向にひねります組んだ脚の膝を手で軽く押さえ、上半身を反対方向にひねります。

上半身をひねったまま、斜め方向に倒していきます上半身をひねったまま、斜め方向に倒していきます。

股関節から倒すようにしてください。

股関節の中が開くような感覚、またそこから腰の横から背中にかけて伸びるような感覚が出たらそこで止め、30秒~1分ほど伸ばします股関節の中が開くような感覚、またそこから腰の横や背中にかけて伸びるような感覚が出たらそこで止め、30秒~1分ほど伸ばします。

終わったら上半身をゆっくり戻し、反対の足も同じようにおこないます。

片側2~3回ずつおこなってみましょう。

※ご注意)
痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。

腰の痛みをやわらげるストレッチについては、本連載で以前詳しく記事にしております。よろしければそちらもぜひご覧いただき、参考になさってください。

慢性腰痛を改善!誰でも簡単にできて効果的な6つのストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第21回】

また、以下の記事で様々な腰痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。

ヘルニア・狭窄症|ストレッチで改善する座っている時の痛みやしびれ【川口陽海の腰痛改善教室 第8回】

1日10回で腰痛・坐骨神経痛を改善!|誰でもできる簡単ヒップリフトエクササイズ【川口陽海の腰痛改善教室 第10回】

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文・指導/川口陽海
厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。

【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616
http://www.re-studio.jp/index.html

 

 

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