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文/鈴木拓也

鉄道の楽しみ方として、最近注目されている「廃線めぐり」。
コアな鉄道ファンばかりでなく、シニアの間でも人気が出始めているという。裾野の広がりに合わせて関連書籍も何冊か出ているので、刊行ほどないガイドブック『廃線探訪入門』をもとに、そのあらましを概観してみよう。

■士幌線など代表的な廃線が旅情を揺さぶる

北海道の帯広~十勝三股間を結んでいた国鉄士幌線。昭和の終わり頃に廃線となり、今は代わりに1日4便の路線バスが走る。

士幌線跡は、「ファンの間でもとくに人気の高い」スポットだそうで、地元のNPO 法人「ひがし大雪自然ガイドセンター」が主催する見学ツアーに参加すれば、列車が走らなくなって久しいコンクリートアーチ橋梁群を間近に見ることができる。

中でも、ダム湖の造成とともに鉄道橋としての役目を終えたタウシュベツ川橋梁は、水位の下がる寒冷期だけその姿を現す必見の史跡。

タウシュベツ川橋梁(撮影/岩崎量示)

タウシュベツ川橋梁(撮影/岩崎量示)

興味ある人を廃線探訪に誘う第1章では、士幌線のほか、特筆すべき廃線が紹介されている。現地を撮った写真を見ると、旧駅舎、トンネル、保存車両などもあり、廃線が雑草に覆われた線路だけではない、見どころの多い場所だと理解できる。

■大都市にも痕跡をとどめる廃線たち

廃線が残されているのは、どちらかと言えば人口の少ない山あいの地域と思われがちだが、実は大都市圏にもあるという。

第2章は、東京、名古屋、大阪に痕跡をとどめる廃線めぐりの案内となる。例えば、東京の上野界隈。かつては、不忍池の東側を半周するように都電の専用軌道が敷かれていたという。そのしるしとして、池之端七軒町の停留場があった所に都電7500形の車両が鎮座している。また、近くには京成電鉄の博物館動物園駅の旧駅舎がたたずむ。

豊洲の東京都観光汽船の水上バス乗り場付近からは、平成元年に廃止された東京都港湾局専用線晴海線の橋梁が臨め、銀座8丁目の郵便局の近くには「浜離宮前踏切」が立っているが、これは汐留~築地市場間の貨物専用引込線があった名残である。

晴海線の橋梁(撮影/松尾諭)

晴海線の橋梁(撮影/松尾諭)

このように、往時の面影を断片的にとどめる廃線は大都市にもある。時には、古い地図とにらめっこして忍耐強く探す労力が求められるが、こうした作業も廃線めぐりの魅力の1つだという。

なお、本書の後半では「歩ける廃線跡」と「旅に出たい廃線スポット」と銘打って50近い廃線が載っており、かなり参考になる。

■なかには復活を遂げた廃線も

観光資源を兼ね、「復活」した廃線も幾つか取り上げられている。その1つが岡山県の片上鉄道だ。
大正12年開業の本線は、柵原鉱山の輸送路線として活躍するが、平成3年に鉱山縮小と自動車輸送化という時代の流れに逆らえず廃止。翌年に有志からなる片上鉄道保存会が設立され、車両・設備の保存に乗り出す。その成果として柵原ふれあい鉱山公園ができた。

同公園では、修復された吉ケ原駅舎が立ち、保存車両も見学でき、廃線跡を生かした自転車道が整備されるなど、観光地としてよみがえった廃線のモデルケースとなっている。

柵原ふれあい鉱山公園の保存車両(撮影/坪内政美)

柵原ふれあい鉱山公園の保存車両(撮影/坪内政美)

*  *  *

廃線探訪と聞くと、門外漢にはどことなくモノトーンのイメージがあるが、本書を読めば、実はカラフルで楽しみの多い世界であることがわかる。「鉄道ファンでないから」と食わず嫌いにならず、一度近場の廃線を訪れてみてはいかがだろうか。

【今日の鉄道趣味を楽しむ1冊】
『廃線探訪入門』

https://www.amazon.co.jp/dp/4635821668

(旅と鉄道編集部著、本体1,600円+税、天夢人)『廃線探訪入門』

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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