取材・文/わたなべあや
高血圧は、サイレントキラーの異名を持つ通り、これといった症状がなく、気がつかないうちに進行してしまう病気です。そのまま放置すると脳梗塞や脳出血をおこしやすくなるので非常に危険で、これらの恐ろしいい病気にならないように未然に高血圧を予防する必要があります。高血圧に詳しい生長会府中病院 脳卒中センターの福永隆三先生にお話を伺いました。
高血圧はなぜ怖いのか
高血圧とは、血管の壁を内側から外側に向かって押す力が高くなっている状態で、血管の壁は、その力に抗うために分厚くなります。すると血管の内側が狭くなり、柔軟性もなくなるため、やがて動脈硬化になってしまうのです。また、細動脈や細小動脈という細い血管は、高血圧から毛細血管を守るために細くなるので、脳梗塞や脳出血になるリスクが高まります。
また、高血圧によって体中の動脈に高い圧力が加わると、脳や心臓がダメージを受けやすいのですが、腎臓や脳の一部である眼底の動脈にも悪影響が及ぶことがあります。これら人間にとって重要な臓器に障害が及ぶことがあるので、高血圧は予防する必要があるのです。
あなたは本当に高血圧?
まずは、本当に血圧が高いのかどうか調べてみましょう。一度血圧を計って数値が高くても、だから高血圧だと思い込まないでください。その時たまたま仕事が忙しかったのかもしれませんし、緊張して上がりやすくなっていたのかもしれません。血圧は、落ちついた状態で計ります。しかし、日を変えて何度計っても最大血圧が140mmHgを越えたら、高血圧の可能性があります。
本当の血圧を知るため、正しい計り方を覚えておきましょう。
朝、起床後1時間以内に排尿し、ゆったりと5分間ほど座って、食事や薬を飲む前に2回計りましょう。血圧計は、必ず上腕(心臓の高さ)に巻きます。肘のあたりにまかないように注意してください。血圧を2回計った平均値が、あなたの血圧です。一緒に脈拍も取るといいでしょう。基本的に毎日計りますが、忘れても気にせず続けて記録しましょう。一度くらい血圧が上がったからといって、病院でも薬を出しません。長い目で見てどうなのか、変動を知ることが大事です。
高血圧を未然に防ぐ
高血圧とまでは言わなくても、ちょっと気になる、予防したいという方は、まずご自身で食事の塩分やカロリー、糖質を意識しましょう。なんとなく意識するというのも難しいので、食べたものを記録するのがおすすめです。ご自身で気づき、意識することは、意外と食事の改善に役立ち、血圧の安定に影響するものです。
また、減量すると血圧を下げることができます。約4kgの減量で最大血圧は4.5mmHg、最小血圧は3.2mmHg改善するとの報告があります。
運動は、習慣化して続けることが大切で、速歩や軽いジョギング、水泳、水中ウォーキングなどの有酸素運動が効果的です。一週間のうち、30分の運動なら6日間、60分の運動なら3日間行いましょう。30分でも60分でも、強すぎない強度でゆったりとした気持ちで行います。
年令を重ねるにつれてリスクが高まる高血圧。知らない間に進行し、心臓や脳、眼など、さまざまな臓器の障害が起こります。そうなる前に意識して食生活を改善し、運動する習慣を身につけましょう。
談/福永隆三先生
生長会府中病院 脳血管センター顧問。昭和53年大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院第一内科、神戸掖済会病院内科、大阪労災病院内科副部長。大阪労災病院第二循環器内科部長、大阪労災病院高血圧卒中内科部長を経て、星ヶ丘厚生年金病院内科部長、同副院長。所属学会は日本内科学会、日本高血圧学会、日本脳卒中学会。日本内科学会認定内科医、日本脳卒中学会専門医。
取材・文/わたなべあや
1964年、大阪生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。2015年からフリーランスライター。最新の医療情報からQOL(Quality of life)を高めるための予防医療情報まで幅広くお届けします。趣味と実益を兼ねて、お取り寄せ&手土産グルメも執筆。