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歳を重ねるにつれて高くなっていくのが血圧の数値。厚生労働省によると、2020年の患者調査で主な疾病の患者数のトップとの結果が出ています。収縮期血圧の保健指導判定値である130を基準に、高血圧にならないように生活習慣を整えることが大切です。

ただ、現代はいくら気をつけていても、寝不足など生活習慣の乱れやストレス、思いがけない事態など、血圧が上がる要素が多い時代です。「薬だけに頼らない薬剤師」として、超短期間で健康診断の数値改善を行なう長島寿恵さんは、日常生活での体の使い方を修正することで高血圧を予防しながら、「人生100年時代」を上手に生きていく考え方や運動を提唱しています。

今春、台湾でも出版されるほど注目を集めている著書『薬に頼らず血圧を下げる1回1分降圧これだけポーズ』(PHP研究所)から、東洋医学の考え方や武道の動きを取り入れた「降圧ポーズ」をご紹介します。

文/長島寿恵

生活習慣を見直すと、血圧を下げるヒントが見えてくる

「高血圧」と診断されたら、まず生活習慣を見直すことが、とても大切です。

見直す際はクヨクヨと後悔するのではなく、また、億劫がらずに、「よし、それなら“自分の意志”で生活習慣の改善に取り組んでいこう!」と前向きに考えます。「自分の意志」であることをしっかり認識して血圧の改善に取り組むと、そのプロセスでさまざまな気づきがあり、意識も変わってきます。「意志を持つ」というとストレスのように感じるかもしれませんが、「自分で自由に行動が変えられる」と考えるとよいでしょう。意志は自由があるからこそのものです。

過食や間食を改善しようとするとき、「食事は貴重な命を戴くことである。感謝しよう」と、自分の意志で認識を改めれば、食行動は自ずと変わることでしょう。

「高い血圧は今すぐ下げなければいけない」「血圧が上がっているからもうダメ」など、いろいろと考えてしまうと思いますが、思考を巡らしたり反省したりといったことができるのは、人間に与えられた特権だと考えると、気持ちが楽になります。動物はおそらく本能だけで生きていますから、自分の行動を振り返って反省したり工夫したりすることは難しいと思います。対して人間は、本能を司る脳の部分(脳幹)の外側に「人間脳(大脳皮質)」があります。人間脳を持った私たちは、失敗したときに反省したり思い悩んだりして、次に生かせるよう工夫することができます。血圧についても同じことです。血圧が高いという現状を、「自分に与えられた課題」と捉え、それを否定するのではなく生かしていく方法を模索するうちに、血圧を改善するヒントが必ず見えてくると、私はいつもお伝えしています。

「腹式呼吸」のススメ

血圧の高い方は、どちらかというと、肩に力が入って上半身で呼吸をしている人が多いため、呼吸が浅くなりがちです。そうした人には、「腹式呼吸」がおすすめです。

腹式呼吸は副交感神経を活性化するとともに、ストレスの解消にも役立つので、高血圧対策にもとても適しています。基礎代謝が向上して、ダイエットの効果も期待できることから、肥満を伴う高血圧の方はぜひ身につけてください。移動中でも作業の合間でも、腹式呼吸はいつでもどこでも可能です。寝つきのよくない方、眠りの浅い方は、就寝の際に寝床に仰向けになって行なうとよいでしょう。1〜3分間ほど繰り返すだけで心身がリラックスし、血流が整って、血圧も安定してきます。

「不動の心」を養う

「うなーじー」というポーズをご紹介します。正しい姿勢で背筋がスッと伸びると、客観的に物事を捉えることができるようになって心が落ち着き、血圧も安定してきます。落ち着いた心で、冷静さを身につけることが、現代社会においてはとても大切なことに感じられます。

インターネット技術が発展・普及した現代では、世界中の情報を誰でも簡単に入手できますが、便利な半面、うっかりすると情報に振り回されて、本当は自分がちゃんと知っている解決方法を、見失ってしまう可能性が生じます。そうしたことを無意識のうちに回避することができるようになるためには、どんなことにもブレない、動じない「不動の心」を養いたいものです。

武道に学ぶウォーキング

私は薬剤師の資格を有していますが、薬だけに頼ることなく、体の内側から生活習慣病を改善するために、武道と漢方医学の考えを取り入れた独自の運動法などを考案し、提唱しています。

武道の体の使い方を身につけ、漢方医学の考え方を組み合わせて運動すると、スポーツクラブやジムといった特別な場所へ行く時間がなくても、日常生活の中で無理なく減量したり、血圧を下げたり安定させたりすることができます。西洋医学に基づいたトレーニングは、「数」をがんばれば効果が現れるという考え方が基本です。「1日1万歩」「スクワット100回」などはその典型です。一方、日本の武道では古来、「数」より「質」を重んじてきました。

武道では、おなか(下腹部)に力を入れて、腰から前に出ていくイメージで足を踏み出します。私は「武道ウォーク」と称して、健康増進に取り入れています。このような歩き方をすると、自然と「身の丈」に合った歩幅になります。腰から重心がずれることなく、足にバランスよく負荷がかかるので疲れにくく、ひざや腰を傷める心配もありません。このように、おなか(下腹部)に力を入れ、背筋を伸ばした正しい姿勢で歩けば、質のいい動きが実践でき、しゃかりきに1万歩歩いたり、スクワットを100回したりしなくても、脂肪は適切に消費され、血圧も適正な状態に維持できます。無理することによって生じてしまうケガなども予防できます。また、心臓や血管にやさしいので、日常生活に上手に取り入れると継続しやすいと思います。さらに、腰痛やひざ痛などを抱えている人は、その痛みの改善にもつながります。

武道の動きとは、「自分を守り、自分を生かす」動きなのです。「数」よりも「質」―これが、これからの時代に必要な考え方だと、私は思っています。

『薬に頼らず血圧を下げる1回1分降圧これだけポーズ』(長島寿恵 著)
PHP研究所

▼詳細はこちら
https://www.php.co.jp/family/detail.php?id=84643

長島寿恵(ながしま・ひさえ)

薬剤師・健康運動指導士。健康増進コンサルティング株式会社代表取締役。青森県出身。東京薬科大学薬学部薬学科卒業。大学在学中からエアロビクスのインストラクターとして活躍。その後、運動指導を続けながら薬局勤務を経て現職。「お薬だけに頼らない薬剤師」として、全国の自治体、企業、健康保険組合、学校などで講演活動を行なう。参加型でアクティブな講演は「簡単、明瞭、即効力! 体が喜ぶ講演だった」とリピーターが後を絶たない。東洋医学の考えと武道の動きを取り入れ、超短期間で健康診断の数値結果を改善するだけでなく、休職しがちだった従業員の心身の不調も改善。オーダーメードの、からだ調整「時間体操」で、個人だけでなく企業の健康もサポート。近年は働き方改革や健康経営のコンサルティングにも注力している。著書に『薬に頼らずコレステロール ・ 中性脂肪を下げる方法』(アチーブメント出版)、『血圧が下がる生き方』(笠倉出版社)がある。
https://kenkouzoushin.co.jp/
https://hisaestyle.com/

 

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