取材・文/わたなべあや

国民の二人に一人はがんになる時代。がんのなかでも大腸がんになる方は非常に多く、食事やライフスタイルの欧米化が影響していると考えられています。

赤身肉や高脂肪食が発がんの一因であることは分かっていますが、だからといって肉や脂肪を極端に制限すれば大腸がんにならないというものでもありません。

では、大腸がんを予防、あるいは早期発見して治療するために何をすればよいのでしょうか。近畿大学医学部附属病院外科の奥野清隆教授にお話を伺いました。

■予防の第一歩は「大腸がん検診」

大腸がんの予防・治療には、早期発見することが何より大切です。「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、大腸がんはかなり進行するまで症状が出にくく、検診を受けないと気づくことができません。

早期発見に確実なのは大腸の内視鏡検査ですが、人間、症状がない時は内視鏡検査を受ける気にはなかなかなれないものです。女性の場合は、恥ずかしいと言って嫌がる方もいます。そのため、大腸内視鏡検査に踏み切るひとつのきっかけとして、「大腸がん検診」があります。

大腸がん検診は《便潜血反応2日法》という方法で行われ、ごく少量の便に血液が混じっていないかどうか2回に分けて検査します。もし1回でも便に血液が混じっていたら、そのときはじめて内視鏡検査を受ければよいのです。

■大腸がんは比較的治りやすい

そうして内視鏡検査を受けた方の約5%は大腸がんであることが判明しますが、多くの人は比較的初期のうちに発見できます。

大腸がんは比較的治りやすいがんなので、全体の7~8割くらいの方は手術すれば5年生存率(治療後5年間生存するという指標)を得ることができます。肝転移や肺転移がある場合は、さすがに治療は難渋しますが、リンパ節転移が認められるステージ3であっても、基本的には手術で取り除くことが可能です。

また、内視鏡検査では約30%の方に良性のポリープや小さなポリープが発見されます。このポリープは後にがんになることが多いため内視鏡で取り除くのですが、大腸がんになる前に摘み取ってしまうため、これは「大腸がん予防」だと言えるのです。

残りの約60%の方は内視鏡検査をしても何も見つからず、大腸がんでないことが証明されます。

■40歳をこえたら内視鏡検査を

大腸がんは、膵臓がんなどに比べて治りやすい病気ですが、やはり40歳以上の方であれば、3年に一度は内視鏡検査を受けましょう。ポリープができやすく、毎年取り除いている方の場合は1年に一度受ける必要が出てきますが、大腸にポリープがない(クリーンコロン)なら、米国でも3年に一度というのが標準的な考え方です。

内視鏡検査を受けるのがつらいと感じられる方は、薬で鎮静してうとうとしている間に検査することもできます。また、それでも心配な方や、S状結腸が人より長い場合は、《バーチャル内視鏡(CTコロノグラフィ)》による検査を受けるというのもひとつの方法です。

バーチャル内視鏡は、二酸化炭素を注入して大腸を膨らませ、うつ伏せと仰向けの状態でCTの撮影をします。その後、コンピュータで解析してポリープや癌の有無を確かめる検査法です。痛みなどの苦痛を伴わず、あたかも内視鏡で撮影したような画像を見ることができるのです。

普通の内視鏡検査でもバーチャル内視鏡でも、下剤を飲んで腸の内容物をすべて出しきるという点では変わりありません。下剤で腸の内容物を全部出しきってから検査することになります。便などで腸の壁が見えづらいようでは、大腸がんやポリープの見落としにつながるからです。

内視鏡検査の結果、ポリープや癌が見つかった場合は、内視鏡摘除(内視鏡でポリープを摘出する)や手術療法が必要となります。

このように大腸がんは、検診と内視鏡検査によって予防、もしくは早期発見して治療できる病気です。進行するまでは症状を感じにくいため、肝臓や肺への転移を起こしていたり、腸閉塞になって、ある日突然激烈な痛みや便臭のする汚物を吐いて救急車で担ぎ込まれたりする方もいます。

そのようなことにならないよう、たとえ元気に生活できていても、定期検診や内視鏡検査をしっかり受けましょう。

談/奥野清隆先生
近畿大学医学部外科学 主任教授、近畿大学ライフサイエンス研究所 所長。大阪府生まれ、1971年府立岸和田高校卒、1977年和歌山県立医科大学卒、近畿大学第1外科研修医、1979年大阪大学医学部癌研究施設、1986年米国ワシントン大学(シアトル)、フレッドハッチンソン癌研究センター上席研究員(senior fellow)1988年近畿大学第1外科講師、助教授を経て2003年教授(下部消化管部門)現在に至る。この間2014~2016年近畿大学医学部附属病院 病院長(兼任)、2016~現在 近畿大学ライフサイエンス研究所 所長(兼任)

取材・文/わたなべあや
1964年、大阪生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。2015年からフリーランスライター。最新の医療情報からQOL(Quality of life)を高めるための予防医療情報まで幅広くお届けします。趣味と実益を兼ねて、お取り寄せ&手土産グルメも執筆。

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