腰部脊柱管狭窄症などで手術をする場合、その回復を良好にするには手術前からトレーニングをおこなうのが大切です。
数か月前からトレーニングをおこない、筋肉量を増やすのが望ましいのです。
その理由とトレーニング方法を解説します。
腰部脊柱管狭窄症などでなかなか痛みやしびれなどの症状が良くならない場合、やむをえず手術を検討される方もおられるでしょう。
緊急的な手術が必要であれば別ですが、数か月から1~2年くらいのスパンで、症状の進行や年齢、体力などを考慮して手術をおこなうか検討されることが多いようです。
その間に、手術後の回復を早めるだけでなく、症状の進行を遅らせたりするためにも筋力トレーニングをすることを強くおすすめします。
手術後の回復には筋肉量が影響する
脊柱管狭窄症に限りませんが、ケガや病気からの回復や手術後の回復は、筋肉量が多い方が良好ということがあらゆる研究から明らかになっています。
みなさんも感覚的には理解できるかと思いますが、ケガや病気や手術などで2週間安静にしていると、健康な成人では10%、高齢者では20%の筋委縮(やせ細り)がおこるといわれています。
また同じく手術後などに外固定(ギプスなど)をおこなった場合でも、5%の筋委縮や10~20%の筋肉量の減少がみられるといわれています。
とくに高齢者が病気やケガで入院、手術をおこなった場合、筋肉量が少ないと合併症が大幅に増加したり、予後も良くなかったり、病院滞在期間が長くなったりなどの弊害がおきやすいと報告されています。
そのため、プレリハビリテーションとして手術前から筋力トレーニングをおこない、術後の筋肉量の減少を抑制することが推奨されています。
筋肉量が多いほど体内にたくさんのアミノ酸やグリコーゲンなどの栄養素を蓄えることができます。
ケガや病気、手術後などは、回復のためにこれらの栄養素がたくさん必要ですから、筋肉量が多いほど回復力が高くなり、治りや術後の予後も良くなるのです。
逆に筋肉量が少ないと、その筋肉をさらに分解してこれらの栄養素を補うことになりますから、より筋肉がやせてしまい、栄養素も足りずに回復が遅れたり予後が良くなかったりするのです。
こういった理由から、手術前にトレーニングをおこなって筋肉量を増やすことが大切なのです。
どのようなトレーニングをおこなったらいいか?
一般には、ウオーミングアップ(ストレッチ)、有酸素運動(ウオーキングなど)、抵抗運動(筋トレ)、クールダウン(ストレッチ)などを計50分、週3回以上することが推奨されています。
(奈良県立医科大学 大人の健康情報 手術前にしておくこと ~プレハビリテーションで術後回復を促進~より https://nara-kenko-fair.com/adult/164/)
脊柱管狭窄症の場合、腰や脚の痛みやしびれなどがあるかと思いますので、その症状に応じて適したトレーニングをおこなう必要があります。
またその他に持病などをお持ちの場合もありますから、それらも考慮しておこなうよう、医師や専門家に相談しながらおこなうのが望ましいと思います。
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)では、運動制限があるような持病がなく、軽度のトレーニングが可能な脊柱管狭窄症の方には、下半身の筋力トレーニングからおこなうことをおすすめしています。
その理由としては、
◎下半身の筋肉は大きいためトレーニングにより筋肉量を増やしやすい
◎痛みなど症状に応じた負荷の調節がしやすい
◎比較的どなたでもおこないやすい
◎症状の改善にもつながりやすい
などからです。
以下を参考におこなってみましょう。
大殿筋のトレーニング
大殿筋は、お尻の大きな丸みをつくる筋肉で、骨盤から大腿骨につながっています。股関節を動かしたり、骨盤や背骨を支えたりする非常に大事な筋肉です。
大殿筋のトレーニングにはさまざまな方法がありますが、まずヒップリフトのトレーニングをおすすめしています。
自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://re-studio.jp/dvd/)
仰向けで膝を立て、踵をできるだけお尻に近づけます。
そこから、おしりを締めるようにしながら、3~5秒かけてゆっくり持ち上げ、1番持ち上がったところで1秒止めます。
この時に腰や脚に力を入れすぎないように、お尻を締めて大殿筋の力を使うことを意識してください。
1秒止めたらゆっくり降ろします。
お尻が下につかないところで止め、そこからまた上げていきます。
これを1セット10回、週に3~5日程度からはじめてみましょう。
1週間できたら、次の週には1セット1~2回、回数を増やしておこないます。つまり1セット11~12回です。
このように週に1~2回ずつ回数を増やしていき、数週間から数か月続けて1セット30~50回を目標に頑張ってみましょう。
ご注意)このトレーニングをおこなうことで痛みが出る、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
太もも(大腿部)のトレーニング
太ももには、大腿四頭筋やハムストリング、内転筋群など強く大きな筋肉が集中しています。
これらの筋肉は、立つ時や歩く時、身体を支えたり動かしたりする時にはたらく大事な筋肉です。
これら筋群のトレーニングにもさまざまななものがありますが、ワイドスクワットのトレーニングからおこなうことをおすすめしています。
いわゆる四股踏みスクワットです。
自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://re-studio.jp/dvd/)
足を広めに開き、つま先を45度くらいに外に向けて立ち、下腹を引っ込めるようにお腹を締めます。
膝に手を置くようにしながら腰を落とします。
腰を落とすときに、上半身はなるべくまっすぐにして、前傾姿勢にならないようにするのがいいでしょう。
できれば太ももが床と平行になるくらいまで腰を落とします。
そこまで落とすのが無理な場合は、膝が45度曲がるくらいまで頑張ってみましょう。
そこから腰を上げていきますが、内ももとお尻を締める力で戻るようにおこないます。
内ももとお尻を締める力とは、例えば膝の間に大きなボールをおいて、それを膝で絞めてつぶすようなイメージです。(上図)
内ももやお尻を意識して使うようにすると、それらの筋肉にも効いてきます。
実際にバランスボールなどを挟んでおこなうのもいいでしょう。
一動作をゆっくり5~10秒くらいかけ、これを1セット10回、週に3~5日程度からはじめてみましょう。
1週間できたら、次の週には1セット1~2回、回数を増やしておこないます。つまり1セット11~12回です。
このように週に1~2回ずつ回数を増やしていき、数週間から数か月続けて1セット30~50回を目標に頑張ってみましょう。
※ご注意)痛みのためにこの動作ができない、またはこの動作をおこなうと症状が悪化する時はやめてください。
その他ストレッチやインナーマッスルのトレーニングなどは過去の記事が参考になると思います。
以下のページを参考に取り組んでみてください。
1日5分で腰痛を解消! 寝たままできる効果絶大な5つのストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第117回】(https://serai.jp/health/1141936)
腰・お尻・太ももの裏|痛む部位別におこなう腰痛・坐骨神経痛改善ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第100回】(https://serai.jp/health/1096269)
姿勢を良くして腰痛改善! 背骨のニュートラルポジションとは? ニュートラルポジション獲得エクササイズ(その1)【川口陽海の腰痛改善教室 第128回】(https://serai.jp/health/1168532)
姿勢を良くして腰痛改善! 背骨のニュートラルポジションとは? ニュートラルポジション獲得エクササイズ(その2)【川口陽海の腰痛改善教室 第129回】(https://serai.jp/health/1170961)
自宅・室内で腰痛改善! 足踏み運動で下半身の筋力アップ!【川口陽海の腰痛改善教室 第118回】(https://serai.jp/health/1143858)
この記事があなたの腰や脚の痛みを改善する一助になりましたら幸いです。
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お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html