昨年春の緊急事態宣言以降、感染症予防のためテレワーク、リモートワークが推奨されていますが、在宅勤務により腰痛になってしまったり、もともとの腰痛が悪化してしまったりする人も増えています。
そのような場合、テニスボールを使った簡単で気持ち良いマッサージで解消することができます。
在宅勤務で腰痛になる原因
それは運動不足とストレスです。
在宅勤務になってみて、「日頃何気なくおこなっていた通勤やオフィス内の移動などが意外と運動になっていた」と気づいた方も多いのではないでしょうか。
筆者が担当した患者さんは「トイレも3歩で済んでしまう!」と言っていましたが、在宅勤務では、コピー機まで書類を取りに行ったり、トイレに数十メートル歩いたり、ランチに外に出たりといったことが全くなくなります。
そのために運動量が大幅に減ってしまいます。
そのうえ長時間座ったままPCに向かっていたりすれば、腰を中心に身体(筋肉)が凝り固まって血行が悪くなってしまいます。
これが腰痛の原因となります。
また、日頃何気なくおこなっていたオフィスでの雑談やランチに行くなど、気分転換をする機会がなくなってしまいます。
さらに仕事に必要なちょっとしたことをすぐに質問したりもできず、仕事を進行する上でストレスになってしまったりする場合もあるようです。
このようなことが長期間続くと大変なストレスとなります。
ストレスは様々な心身の不調の原因となりますが、その一つとして「脳が痛みに過敏になる、痛みに弱くなる」、という状態になってしまうことがあります。
つまり、ストレスがない場合には感じないような痛みであっても、ストレス下にあると強い痛みに感じてしまう場合があるのです。
これも腰痛の原因となってしまいます。
腰痛とストレスと脳の関係については過去にも記事にしておりますので、以下の記事を参考にしてください。
ストレスからおこる腰痛~腰痛とストレスと脳の関係~【川口陽海の腰痛改善教室 第7回・前編】(https://serai.jp/health/343117)
脳の鎮痛機能を回復させる方法~ストレスからおこる腰痛~【川口陽海の腰痛改善教室 第7回・後編】(https://serai.jp/health/343516)
痛みの原因は筋肉の発痛点=トリガーポイント
長時間座ったままなど、同じ姿勢でいると、筋肉は徐々に凝り、固まってしまいます。
すると筋肉内の血行が悪くなり、さらに凝り(筋肉の過緊張)が進行するという悪循環になっていきます。
そうすると筋肉内にしこり状の塊が発生し、そこから痛みが出るようになっていきます。
このような痛みを起こす筋肉の過緊張を、発痛点=トリガーポイントといいます。
トリガーポイントについては、本連載ではおなじみですが、詳しくは以下のページもご覧ください。
腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療(https://www.re-studio.jp/backpain/pg122.html)
例えば、腰痛をおこすトリガーポイントには以下のようなものがあります。
以下の図の×印がトリガーポイントの好発部位で、そこから赤い範囲に痛みが生じます。
脊柱起立筋のトリガーポイント
腰方形筋のトリガーポイント
中殿筋のトリガーポイント
いかがでしょう? あなたの腰が痛む部分はこれらの図と似た感じではありませんか?
もしあなたの腰痛が凝り固まり過緊張を起こした筋肉のトリガーポイントであれば、自分で筋肉をほぐすことで解消することができます。
トリガーポイントをマッサージする方法
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)では、テニスボールを使ったセルフマッサージをおすすめしています。
硬球のテニスボールをご用意ください。
腰痛を改善するためにテニスボールで狙う場所は、主に次の3か所です。
(1)背骨のすぐ横 【脊柱起立筋】
(2)肋骨と骨盤の間((1)のやや外側) 【腰方形筋】
(3)お尻の上半分(骨盤の骨の下) 【中殿筋】
(1)背骨のすぐ横 【脊柱起立筋】
腰のあたりを手で触ると、背骨のすぐ横に筋肉の盛り上がりがあるのがわかると思います。
これが脊柱起立筋です。背骨を支えたり動かしたりする筋肉です。
脊柱起立筋は背骨の両脇を腰から背中、首までつながっている長い筋肉ですが、腰痛の原因となるのは主に背中の半分から下くらいの部分です。
(2)肋骨と骨盤の間 【腰方形筋】
腰方形筋は、腰に手を当てた時にちょうど親指があたる部分にあります。
腰がつらい時に揉んだり押したりしたくなったり、押されると気持ちよい部分、というとわかるでしょうか。
腰方形筋は肋骨と骨盤をつないでいる筋肉で、腰を支えたりするはたらきがあります。
とくにずっと座りっぱなしでいたりするとこの筋肉に負担がかかってこり固まってしまい、腰や骨盤周囲などに痛みを起こします。
(3)お尻の上半分 【中殿筋】
中殿筋は、お尻の上半分あたりにある筋肉です。股関節を動かしたり、骨盤を支えたりするはたらきがあります。
腰がつらい時にこのあたりをトントンしたくなったり、実際にトントンすると少し楽になったりすることがあるかもしれません。
ずっと座りっぱなしや立ちっぱなしが続くと、この筋肉に負担がかかってこり固まってしまい、腰や骨盤周囲などに痛みを起こします。
場合によっては腿の方まで痛みが出たりすることもあります。
まずはこれらの筋肉や部位をなんとなくイメージして頭に入れておきましょう。
テニスボールの当て方
それでは実際にボールを当ててマッサージしてみましょう。
ボールの当て方には少しコツがあります。
腰のあたりにボールを当てようとすると、つい腰を持ち上げて上から乗っかってしまうかもしれませんが、この方法だといきなり強い刺激がかかりますので、あまりおすすめできません。
下の図のように身体を傾けるようにして、ゆっくりとボールに体重を乗せるようにしましょう。
自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://www.re-studio.jp/dvd.html)
そして息を吐いて身体の力を抜いていきます。とくにボールが当たるところの力をうまく抜くようにしてください。
多少痛みがあったりすると、つい当てている部分に力が入ってしまうと思いますが、そうすると筋肉が固まってうまくほぐれません。
あえて力を抜くようにすることで、奥の方までほぐすことができます。
グリグリと転がすように刺激するのは、痛みがある時にやると逆に痛みが増したりしますので、やらないようにしましょう。
ポイントの探し方
ではどのあたりにボールを当てたら良いでしょうか?
これは人によってポイントが変わってきますが、次のようにおこなうと効くポイントが見つけやすいでしょう。
1.狙う場所で説明した(1)(2)(3)の部分の中から、まずは一番痛みが気になるあたりや、自分で押したり揉んだりしたくなるあたり、マッサージして欲しいと思うあたりにボールを当ててみましょう。
うまくポイントに当たると、『痛気持ちいい』『ジーンと効く感じ』『ツボを押されている感覚』などがあります。
このような感覚を感じるところを探しながら、1cmずつくらいボールを動かしていきます。
(1)脊柱起立筋や(2)腰方形筋の場合、筋肉に沿って縦方向に少しずつずらしながらポイントを探しましょう。
(3)中殿筋の場合は、骨盤の骨のきわやその下あたりを少しずつずらしながらポイントを探してみましょう。
自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://www.re-studio.jp/dvd.html)
ちょっとした位置やボールを当てる角度により、効く感じが変わると思いますので、「どのへんが効くかな?」とボールを当てながら探してみてください。
マッサージする時間
テニスボールでマッサージするのは、どのくらいの時間が適しているのでしょうか?
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)で指導する時は、
◎1か所10~20秒程度
◎全体でも5~15分程度
くらいから始めることをお勧めしています。
あまり長い時間おこなうと、その後で、または翌日などにかえって痛みが増したりしますので、はじめは短時間でおこなって様子をみてください。
短時間おこなって大丈夫なようでしたら、少しずつ時間を伸ばしてみましょう。
痛みが残ったり、あとで痛みが増したりするようなら、刺激のしかたが強すぎるか時間が長すぎますので加減してください。
マッサージした時の感覚
マッサージしている時やその後に、
◎『痛気持ちいい』『ジーンと効く感じ』『ツボを押されている感覚』などがある
◎マッサージ後に、そのあたりが『軽くなる感じ』『すっきりする感じ』『ホカホカする感じ』『じわっと血が巡る感じ』など良い感じがある
このような感覚があれば効果があります。
逆に
◆ほぐしている時に『すごく痛い』『嫌な感じや不快感』などがある
◆ほぐした後に痛みが残ったり、痛みが増したりする
このような場合は、うまくできていないか、またはテニスボールでほぐすのは適していないと思われますので、やめておきましょう。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
ヘルニア・腰痛を改善! 寝ながらできる腰痛体操 誰でもできる5つのストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第66回】(https://serai.jp/health/1028037)
オススメの腰痛・坐骨神経痛改善ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第61回】(https://serai.jp/health/1020567)
腰痛に効くツボはココ! 腰方形筋のトリガーポイント【川口陽海の腰痛改善教室 第57回】( https://serai.jp/health/1015863 )
ヘルニア・坐骨神経痛 腿の裏側の痛みを改善するストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第50回】(https://serai.jp/health/1006854)
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html