長らく、恵比寿の『シャトーレストラン ジョエル・ロブション』でシェフをつとめていた渡辺雄一郎シェフが、満を持して独立。台東区駒形の墨田川べりにレストランを開きました。
店名の「Nabeno-Ism」とは、渡辺シェフの愛称「ナベさん」と、彼が料理を学んだ辻調理師専門学校がある大阪・阿倍野(あべの)をかけたところに由来します。レストランとしては、とてもユニークな名前ですね。
ディナーのコースはひとコースのみで、東京、それも下町の食材や食品がいろいろとお皿を飾ります。それは、たとえば両国『江戸蕎麦ほそ川』の「そば粉」や、日本堤『バッハ』のコーヒーまで、多岐にわたります。
今回、季節を感じさせたひと皿に「江戸東京野菜、馬込半白胡瓜と西瓜 酒蒸し鮑と共に肝のサルミソースを添えて」がありました。香り高いあわびに肝をベースにしたこくのあるソースを敷き、横に、胡瓜と西瓜の組み合わせの付け合わせが添えております。その胡瓜と西瓜の相性の良いこと!「胡瓜・西瓜」の言葉遊びに終わらない美味しさでした。
また、子羊に枝豆と水茄子を添えた主菜は、子羊と茄子の古典的相性をアレンジしたもので、水茄子がフランス料理で見事に生かされたひと皿となりました。
レストランは駒形橋のすぐ近くの川べり、隅田川の花火を見るのには特等席と言えます。
【Nabeno-Ism】
住所/東京都台東区駒形2-1-17
TEL/03-5246-4056(予約制)
営業時間/【ランチ】12:00~13:30(L,O)15:00 Close
【ディナー】18:00~21:00(L,O)23:00 Close
※日曜日はランチ営業のみ
定休日/月曜日と毎月第4火曜日(変動あり)
http://nabeno-ism.tokyo/
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。
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