私を「うどん好き」にした店があります。かつて大阪・羽曳野市にあった『釜竹』です。初めてこちらのうどんを口にしたとき、小麦粉の味がしっかり伝わってきたのを覚えています。
この『釜竹』の品書きには、「釜揚げ」と「ざる」しかありません。うどんの美味しさを突き詰めると、こういうことになるのでしょうが、誰にでもできることではありません。よほどうどんそのものに自信がないと、できないことです。
ただし、うどんは2種類、太打ちと細打ちがあります。温かい「釜揚げ」には太打ち以外考えられませんが、冷たくしていただく「ざる」は細打ちが適しています。冷たい細打ちのうどんののど越しが何とも堪らないのですね。
この「釜竹」が東京・根津へ進出してきて、羽曳野まで足を運ばなくていいようになったのが10年ほど前、今では行列の絶えないうどん屋になりました。
店主は羽曳野『釜竹』の二代目、平岡良浩さん。父親譲りのうどん職人で、妥協は一切なし。毎日、丁寧な仕込みをすまし、注文をうけてから、うどんを切ります。この手間暇を惜しまない仕事が、美味しいうどんを生み出す秘訣なんですね。
夏場になると、店の前に並んででもたべたくなる「細ざる」です。はじめは、そのまま。次は刻んだ葱を添え、さらにはてんかす(揚げ玉)、最後はおろした生姜をつゆに少々、落としてうどんを楽しみます。
【根津 釜竹】
住所/東京都文京区根津2−14−18
TEL/03−5815−4675
※予約は平日の夜のみ
営業時間/【火~土】11:30~14:30(L.O.14:00)/17:00~21:00(L.O.20:30)
【日】11:30~14:30(L.O.14:00)/夜は休み
【祝日】11:30~14:30(L.O.14:00)/17:30~L.O.20:00
※祝日が日・月の場合には、各曜日の営業内容。
(手打ちのため、うどんが無くなり次第閉店)
定休日/日曜日の夜、月曜日
http://kamachiku.com/
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。
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