文・写真/山本益博

今年の11月3日~5日の3日間、宮崎県・延岡市で『のべおか国際食卓会議』が開かれました。

メインのゲストは、東京『すきやばし次郎』の小野二郎さんと、イタリア・モデナにある『オステリア・フランチェスカーナ』のマッシモ・ボットゥ―ラシェフ。二人の対談では「伝統と進化」について、極めて興味深い話が披露されました。

そのイベントの前日、小野二郎さんと市内の日本料理店『きたうら善漁。』(きたうらぜんりょうまる)を訪れたのですが、二郎さんは、魚の鮮度の良さばかりではなく、料理人の腕の良さが素材の持ち味を最大限に引き出している、と絶賛でした。

その料理の中から、ふたつご紹介いたしましょう。

ひとつは「いかの刺身」。鮮度が極めて良いため、旨味より甘みを引き出した調理で、包丁が冴えていることもあって、ごく細く切られたいかの角が立っていると、二郎さん感心しきりでした。東京まで運ばれてきたいかは、絶対にこのようにはならないと。

もうひとつは「かつお」。色からしてピンク色で、いつもの赤身のかつおと違う。口に運べば、あの赤身独特の酸味がありません。どうやら、これはかつおの漁法に違いがあるらしく、よく知られた1本釣りでは、かつおが甲板に打ち付けられた瞬間に身が傷み、血が回ってしまうのだという。

二郎さんは「かつお独特の香りが出てくる前のかつおを初めて食べた」とびっくりされていました。

『きたうら善漁。』の吉田善兵衛さんの父親は漁師さんで、店名はそれに由来するのですが、魚の扱いには長けた、というより、獲り方まで指定して、仕入れる料理人です。

品書きには、こう記されていました。

《『善漁。』は、ただの料理屋でございます。そのため素材の持ち味を超える旨い料理はつくれません。驚きや面白さもございません。また、自分らしさや、宮崎の自然、季節を表現しているわけでもございません。そこにはなにも無く、ただ理(ことわり)を料(はか)る、それだけでございます。》

【今日のお店】
『きたうら善漁。(きたうらぜんりょうまる)』
■住所:宮崎県延岡市本町1丁目3-14
■営業時間:18時~21時
■定休日:日曜
■電話: :0982-31-0051(要予約)
http://zenryomaru.jp/

文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。

 

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