シェイクスピアや『不思議の国のアリス』の作家、ルイス・キャロルをはじめ、英語の文学には、目には見えないものや、本来は存在しないはずの存在が、いきいきと描かれてきました。
妖精や幽霊だけでなく、希望や時間、記憶といったかたちのないものも、ことばの中で息づき、今も日常の英語表現の中に生きています。今回は、そんな「見えないもの」や「架空の存在」が、登場する表現をみていきたいと思います。
さて、今回ご紹介するのは “I got ghosted.”です。

“I got ghosted.” の意味は?
“I got ghosted.” を直訳すると、“ghost” は(幽霊)ですが、
正解は……
「急に連絡を絶たれた。」「(相手に)突然無視された。」
という意味になります。
“ghost” という言葉は、最近では動詞としても使われ、“to ghost someone” とは、特に恋愛の場面で、急に連絡を絶つことを指すようになりました。
それまでやり取りをしていた相手が、理由や説明もないまま、ある日突然、連絡を取らなくなってしまう。まるで幽霊のように、すっと姿を消してしまうイメージから、この表現が使われるようになったようです。
たとえば、
1. We were texting every day, and then I got ghosted.
(毎日やり取りしてたのに、急に連絡が途絶えたんだ。)
2. He ghosted me after our second date.
(2回目のデートのあとから、彼は連絡をくれなくなったの。)
などと言うことができます。
「自然消滅」というよりも、どこか意図的にフェードアウトされたり、突然音信不通になったりと、関係を終わらせる意思が感じられる場合に用いられます。

「いないはずの存在」を使う英語表現
英語には、“fairy”(妖精)や “witch”(魔女)、“phantom”(幻)など、現実にはいない存在や、目には見えないものをもとにした表現が数多くあります。ここでは、いまも日常会話で使われている言い回しをご紹介します。
1. Zombie(ゾンビ)
feel like a zombie
(疲れ切って、意識がぼんやりしている状態)
I didn’t sleep at all. I’m a zombie today.
(まったく眠れなかった。今日はぼんやりしてる。)
2. Shadow(影)
be a shadow of oneself
(以前の面影がない、すっかり変わってしまうこと)
He’s a shadow of his former self.
(彼はすっかり変わってしまい、以前の面影がない。)
3. Phantom(幻)
phantom vibration
(着信がないにもかかわらず、携帯電話が鳴ったかのように錯覚することをさす、現代的な表現)
I thought my phone buzzed, but it was a phantom vibration.
(スマホが鳴った気がしたけど、気のせいだった。)
4. Fairy(妖精)/Unicorn(ユニコーン)
fairy tale
(おとぎ話、現実離れした話)
It sounds like a fairy tale.
(まるでおとぎ話みたい。)
unicorn(比喩)
(理想的すぎる人や条件)
He’s looking for a unicorn employee.
(彼は、ほとんど存在しないほど完璧な社員を探してる。)
5. Monster(怪物)
a monster at work
(怪物級にすごい人)
She’s a monster at work. She finished the project in one day.
(彼女は仕事では怪物級で、あのプロジェクトを一日で仕上げてしまった。)
6. Witch hunt(魔女狩り)
witch hunt
(不当な批判や、集団的な攻撃)
This feels like a witch hunt.
(まるで魔女狩りのようだ。)
現代社会を語る比喩として今も使われています。

最後に
1922年に出版されたマージェリィ・ウィリアムズの児童文学『The Velveteen Rabbit』は、世界中で読み継がれ、多くの翻訳や舞台化、アニメ化がなされてきました。
本物になりたいと願う、うさぎのぬいぐるみに起こる奇跡の物語です。
物語のなかで、ともに子ども部屋で暮らすおもちゃの馬は、語ります。
“Real isn’t how you are made. It’s a thing that happens to you.”
(翻訳::池上カノ)
(本物ってね、どう作られたかじゃないんだよ。それは、きみに起こるなにかなのさ。)
この物語は、ただのぬいぐるみという存在が、愛によって少しずつ「本物」になっていく姿を描いています。見えない愛情や思いが、その存在を変えていくのです。
幽霊や妖精、怪物や幻といった存在もまた、単なる空想ではなく、私たちの心の動きや、人との関係、社会の空気を映し出す鏡のようにも思えます。
目に見えないものの中にこそ、ほんとうに大切なものが、ひそんでいるのかもしれません。
次回もお楽しみに!
●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。 その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。
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●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











