文・写真/山本益博
牛肉と言えば、関西です。そこで、牛肉をステーキでなく、いろいろな部位を楽しませてくれる京都・祇園『にくの匠 三芳』へ出かけてきました。
カウンター席とテーブル席、計16席ほどの小さな店で、カウンター内で調理するご主人の伊藤さんがいろいろと牛肉にまつわる話をしてくださいます。
まずは、コンソメスープから登場。ふたを開けると、トリュフの薄片が幾枚も浮かんでいます。10月はイタリアでは白トリュフの季節。本場のアルバから届いた最上質の白トリュフは香り高いコンソメに妖艶な花を添えてくれました。
続いて、牛舌やサーロインの刺身、その後は、典雅なゆり根のお椀、これなどは京都ならではですね。
そうして、前半のハイライト、上海蟹と牛肉にキャビアを添えたお凌ぎ。「お凌ぎ」とは、料理の途中で出てくる御飯のことで、すきっ腹を調整する役目の小品なのですが、これがご馳走でした。
上海蟹と牛肉の刺身がこんなにも相性が良いとは思いませんでした。そこへ添えられているのがキャビアです。お飾り程度の量ではなく、上海蟹と牛肉を取り持つ仲人役としては立派なキャビアです。しばし、陶然となって、久しく忘れがたい料理となりました。
さらに、松茸が牛肉の脂ヘットで揚げられ、その後に霜降り牛肉のしゃぶしゃぶ。料理の締めにサーロインとシャトーブリアン(最上のヒレ)のローストが出されました。
イタリアの白トリュフ、上海蟹、オーストラリアのキャビアなど国際色豊かなフルコースでしたが、いただいてみた食後の感想は「美味しい和食」ということでした。
牛肉を日本料理の中に組み込んでしまう関西の和食の底力を見せつけられた一夜でした。
【今日のお店】
『にくの匠 三芳』
■住所:京都市東山区祇園町南側570-15
■営業時間:営業時間:18時~23時
■定休日:日曜日
■電話: 075-561-2508受付時間:18時~23時(日曜を除く)
http://niku-miyoshi.com/
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。