■奈良で栽培される酒米「露葉風」で醸す

『四季咲』シリーズに使われる酒米は2種類。全国の生産量の9割を岡山県が占める「雄町(おまち)」と、奈良県でしか栽培されていない「露葉風(つゆばかぜ)」のいずれかを、折々に目指す酒のタイプによって使い分けます。さらに、酵母を変え、仕込み方を工夫することで、各季節ごとのイメージにかなう性質の酒を、手間のかかる小さな単位で労を惜しまず醸しています。

なお、『四季咲  半夏生』には、地元産の酒米「露葉風」が使われています。

岡山が生んだ酒米「雄町」は有名ですが、露葉風についてはほとんど一般には知られていません。もともとは昭和38年に、愛知県で誕生した品種です。母方は「白露」、父方は「早生双葉」で、酒造好適米として奈良県では唯一の奨励品種に登録されていたものだそうです。

美味いお酒のもとになる米の中心部「心白(しんぱく)」が大きいことから、酒造りには向いているものの、意外と原料処理が難しいこと、冷涼かつ寒暖の差を必要とするなど、その栽培性の悪さも手伝って、昭和45年(1970)には約120ヘクタールの作付け面積を誇っていたのですが、平成13年にはわずか1ヘクタールにまで減少。より酒造りがしやすく、知名度の高い「山田錦」などに取って代わられたのです。

リサイズ種麹

蒸して冷ました酒米に種麹菌を振りかけている作業風景。

しかし、長龍酒造では「奈良の酒米で良い酒をつくりたい」という想いから、地元の農協と取り組みを開始。2軒の農家の協力を得て「露葉風」を復活させることに成功、いまでは約20ヘクタールまで作付けを増やしたと聞いています。

もう一方の岡山産の酒米「雄町」に関しても強いこだわりを持っています。長龍酒造が使うのは、かの山田錦と双璧を成す雄町の名産地・岡山県でも、その発祥の地といわれる「高島地区」の高品質で希少な雄町のみです。そのために早くから、高島の農家・農協との絆を深めて安定確保を実現しています。

■出荷されるまでマイナス5℃で保管し鮮度を維持

『四季咲  半夏生』の味わいについてですが、まず香りがとても華やかです。口に含むと、ほどよい甘みがありますが、同時に、酒米「露葉風」の特徴のひとつでもある”フレッシュな酸味”を感じさせます。芳醇にして爽快感あふれる味わいです。新酒の時期でもないのに、生酒ならではのフレッシュさと、ほのかな苦みとを感じさせる所以(ゆえん)は何でしょうか。

瓶詰めから出荷するまでの間、蔵内のマイナス5℃の冷蔵庫で管理されていることで、未だ新酒時に近い状態を維持したまま、その新鮮さを失っていないのです。

夕暮れどきの縁側で、薬味をたっぷりのせた冷奴などを肴(さかな)に、きりっと冷やした『四季咲  半夏生』の杯を口に運ぶ。そんな夏の風景に馴染むお酒です。

トリミング半夏生1

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