小暑は「お中元」を贈る時期

強い日差しとともに、次第に気温が上がってまいりました。この時期になりますと、日頃お世話になっている方へ今年はどのようなお中元を贈ろうかと思案を始める頃ではないでしょうか。こうしたことも季節を感じる一つの楽しみです。

日本人は、“二十四節気”を定め、古くから季節ごとの行事や慣わしを大切にしてきました。このことは、それだけ日本人がこの国の気候風土に感謝をし、愛していたことを物語っているのではないでしょうか? この記事を通して、改めて二十四節気を理解し、より深く日本文化の素晴らしさを感じていただきたいと存じます。

さて今回は、旧暦の第11番目の節気「小暑」(しょうしょ)について下鴨神社京都学問所研究員である新木直安氏に紐解いていただきました。

目次
小暑とは?
小暑に行われる行事とは?
小暑と大暑の違いとは?
小暑に旬を迎える食べ物
小暑に見頃を迎える花
まとめ

小暑とは?

「小暑」とは、7月前半にあたる二十四節気の一つです。「小さく暑い」と書くことから、本格的に暑くなる少し前のことを指します。梅雨の晩期にあたり、集中豪雨などが多くなります。そして梅雨が明けると、南から熱い風が吹きはじめ、大気は夏らしい気配に満たされ、次第に気温が上昇していきます。蝉も鳴き始め、夏の訪れを感じる時期でしょう。

二十四節気は毎年日付が異なりますが、小暑は例年7月6日〜7月7日になります。2022年の小暑は7月7日です。また、期間としては、次の二十四節気の「大暑」を迎える、7月7日~7月22日頃までが該当します。

また、小暑は日頃お世話になっている人に「お中元」を贈る時期でもあります。贈る時期は地方によってずれがありますが、7月初旬から15日ごろまでに贈る習慣があります。一方、旧盆の地域では、7月末から8月中旬とされています。ただ、最近では地域に関係なく、7月中旬くらいまでに贈るのが一般的です。

小暑に行われる行事とは?

小暑に行われるイベントは、星祭の行事「七夕(たなばた)」です。元々は中国の行事であり、「乞巧奠」(きこうでん)と言います。陰暦7月7日の夜に行われた年中行事で、織女は手芸に巧みであることから、裁縫が巧みになれるよう願うものでした。この行事が渡来し、日本古来の棚機津女(たなばたつめ)の祭と結びついて、乞巧奠の儀として完成しました。

平安時代、宮中で乞巧奠は盛んになり、鎌倉時代には民間に七夕として広がったといわれています(諸説あり)。やがて宮中の乞巧奠は、室町時代から歌を供えるようになり、中世末の戦乱で途絶えました。その後、元禄8年(1695)に「七夕御遊」(たなばたのおんあそび)が再興。民間だけでなく、江戸時代には武家社会にも定着しました。乞巧奠は現在も冷泉家で執り行われ、高倉流などの衣紋の流派が神々にお供えする食事を再現するなどしています。

『名所江戸百景』(国立国会図書館デジタルコレクション)より、江戸時代の七夕の様子。

ちなみに、京都市上京区にある白峯神宮の地主社(じしゅしゃ)にお祀りされている神様は、「精大明神」(しらげだいみょうじん)という蹴鞠の神様です。この精大明神は、七夕の神様としても信仰を集め、今日でも精大明神例祭「七夕祭」が斎行されており、「蹴鞠」や「小町おどり」が奉納されています。京都市内では“七夕さんのおまつり”として有名です。

小暑と大暑の違いとは?

小暑の次の節気は「大暑(たいしょ)」です。小暑が「小さな暑さ」と書くのに対して、大暑は「大きな暑さ」となっています。これは、さらに暑い季節がやってくるという意味です。大暑は7月22日頃に当たり、夏本番といった気候になります。

小暑と大暑の違いは時期の違いで、暦上では小暑が先に、大暑が後にやってきます。ちなみに、小暑と大暑を合わせた約1か月間は、「暑中」と呼ばれる最も厳しい暑さの続く時期です。小暑までに出すのは「梅雨見舞い」、小暑から大暑までが「暑中見舞い」、そして8月7日頃の立秋以降は「残暑見舞い」と区分されています。

小暑に旬を迎える食べ物

小暑の時期に旬を迎える野菜、魚、京菓子をご紹介します。

京菓子

くずまんじゅう

古来より日本では、四季折々の移ろいを書画や詩歌で繊細に表現し、雅さや風情を感じ取る心をはぐくんできました。千年の都において昇華した京菓子もその一つでしょう。

下鴨神社に神饌などを納める「宝泉堂」の社長・古田泰久氏に小暑の時期の京菓子の楽しみ方について語っていただきました。

「小暑の時期は、『くずまんじゅう』という生菓子を提供します。練り上げた熱い状態の葛で、こし餡を丸く包んだお菓子です。葛の根は葛根(かっこん)と呼ばれ、解熱薬として古来から珍重されてきました。暑い日に『くずまんじゅう』を食すことで、自然と汗がひいていくのを感じられるのはそうした効果もあるのでしょうね」と古田氏。

社長の古田泰久氏。「茶寮宝泉」の玄関前にて。

「くずまんじゅう」は、見た目も瑞々しく、喉越しも爽やかな生菓子です。保存のためにと冷蔵庫に入れてしまうと凝固しますので、購入後はできるだけ早くお召し上がりになることをおすすめします。これから暑くなりますので、和菓子を通じて清涼を感じていただけたら、幸いです。

野菜

小暑に旬を迎える野菜は、トウモロコシです。サラダやスープ、コロッケに加えて、実をほぐして天ぷらにするなど様々な食べ方で親しまれています。夏には鉄板焼きやバーベキューでも楽しまれます。その際、下茹でしてから焼くと、焼きムラができないのでおすすめです。

また、枝豆もこの時期に旬を迎えます。“畑の肉”と呼ばれる大豆の完熟前の実であり、タンパク質やビタミンB1・B2が豊富で、野菜の中でも栄養価が高いとされます。ビールのおつまみなど、夏の栄養補給におすすめです。

旬を迎える魚は、ハモです。主に関西で珍重される魚で、京都や大阪の夏を印象付ける風物詩となっています。特に産卵を迎えた6月~7月が最も美味しい旬。小骨が多いハモは、元々食べる習慣はない魚でしたが、骨切りの技術により淡白で上品な食材となりました。

小暑に見頃を迎える花

小暑は、気温が高くなり、暑さが増していく季節に当たります。ここからは、小暑の訪れを感じさせてくれる花をいくつかご紹介しましょう。

ハス(蓮)

ハス(蓮)が見頃を迎えるのは、この小暑の時期です。水面から伸びた茎の先に青々とした大きな丸い葉が開き、その葉の間から明るいピンク色の花を咲かせます。蓮は早朝に開花し、午前中の早い時間に花を閉じてしまいます。そのため朝7時~9時半頃の早い時間に見に行くのがおすすめです。

ナデシコ(撫子)はピンクや白、赤といった色の小さな花が多く咲く姿が印象的な花です。「やまとなでしこ」という言葉があったり、秋の七草に選ばれていたりと、昔から日本人に好まれてきました。ちなみにその種類は300種を超えており、カーネーションやカスミソウもナデシコ科の植物です。

まとめ

梅雨も終わりにさしかかり、暑さが増していく「小暑」。外を歩けば、どこからか蝉の声が聞こえてくるでしょう。これから訪れる夏の暑さを乗り切るために、この時期から体調管理に気を配ることも大切です。

監修/新木直安(下鴨神社京都学問所研究員) HP:https://www.shimogamo-jinja.or.jp
協力/宝泉堂 古田三哉子 HP:https://housendo.com 
インスタグラム:https://instagram.com/housendo.kyoto
構成/豊田莉子(京都メディアライン)HP:https://kyotomedialine.com Facebook

 

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