色鮮やかで、まるで熱帯魚のよう――沖縄の魚と聞くと、そんなイメージが思い浮かぶのではないでしょうか。
実際、那覇市の牧志(まきし)公設市場に行っても、ターコイズブルーのようなイラブチャー(アオブダイ)、真っ赤なミーバイ(スジアラ)などが並んでいます。
ところが、沖縄県で最も多く漁獲されているのは、実は「まぐろ類」なのです。平成26年の魚種別漁獲量(沖縄農林水産統計年報)によると、全漁獲量のうち、まぐろ類が58.9%を占めています。
これらのまぐろは沖縄近海で獲れ、その約半数は那覇市で水揚げされています。沖縄県の県魚はグルクン(和名:たかさご)ですが、那覇市の市魚といえばまぐろ、というわけです。
この沖縄産まぐろの一大拠点となるのが、那覇市の泊(とまり)漁港にある市場『泊いゆまち』です。「いゆ」は魚、「まち」は市場の意味。まぐろ専門店を中心に、水産物仲卸業者の23店舗が軒を連ね、一般客でも買い物ができます。また、その日に水揚げされたまぐろを解体する処理室も併設され、時間が合えば、ガラス越しに見学することもできます。
仲買人で、この市場の広報担当もしている當山清伸(とうやま・きよのぶ)さんに話を伺いました。
「まぐろの水揚げ量では、まぐろ遠洋漁船の基地となる静岡県の焼津漁港が有名ですね。でも、それは船内で急速冷凍した冷凍まぐろが主となります。一方、冷凍しないまぐろの水揚げ量となると、和歌山県那智勝浦の勝浦漁港、宮城県塩竈市の塩釜漁港などが上位に挙げられます。
しかし、実際に漁場としている場所は沖縄周辺だったりするのです。案外知られていませんが、沖縄近海は日本有数のまぐろの漁場なのです。
沖縄はまぐろの漁場が近いので、その水揚げ量でも全国トップクラスを誇っています。漁船内で冷凍せずに、マイナス1℃のチルド状態で港まで運びます」
この當山さんの言葉通り、『泊いゆまち』には冷凍していない“生鮮まぐろ”がずらりと並んでいます。