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遺作にして最高傑作!建築家・岡田信一郎が魂を燃やした「明治生命館」

明治生命館

現在の明治生命館。

昭和9年に完成した「明治生命館」は、昭和の建築としてはじめて重要文化財に指定された、記念碑的な名建築だ。

設計者の岡田信一郎(1883〜1932)は、病弱で一度も海外旅行をしたことがなかった。にもかかわらず、ギリシャ神殿と見まがうばかりの質の高いビルを造り出してしまった。そこには岡田の卓越した力量を見て取ることができる。

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岡田信一郎(1883年-1932年、建築家)

さて、「明治生命館」はコンペで岡田の案が採用された。当初は、「三菱二号館」の西側にビルを建設する予定だったが、岡田の提案で「二号館」を取り壊して大規模なビルとすることになった。この「二号館」を設計したのが、コンペの審査員であり、明治建築界を代表する曾禰達蔵であった。しかも曾禰は岡田の師匠にあたる。

岡田は建設に際して曾禰に直談判し、許しを得たという。この「二号館」も、現存していれば重要文化財級の建築で、曾禰の代表作と呼ぶに相応しい名作であった。曾禰にとってもお気に入りの作品であったに違いないが、許可を出したところに、岡田との強い信頼関係がうかがえる。彼の才能を高く評価してのことだったろう。

そんな経緯があるから、岡田にとっても一世一代の大プロジェクトであったに違いない。しかし、「明治生命館」の建設が始まると、程なくして岡田は病に倒れる。毎日、現場の様子を8ミリビデオで撮影させ、病棟から指示を出し続けていたが、ついには完成を見ることなく亡くなってしまった。いま見ることができる「明治生命館」は、岡田の意志を受け継いだ弟の岡田捷五郎らが中心となって完成させたものなのである。

「明治生命館」は岡田の遺作であるとともに、日本を代表する様式建築のひとつである。館内外を見て回ると、細部にわたるまで抜かりないデザインが施され、目を奪われる。

「取り壊すからには、それを超えるものを造る」と情熱を抱き、そして病と闘いながら創作へ執念を燃やした岡田の、魂の結晶といえる傑作なのだ。

文・写真/山内貴範
昭和60年(1985)、秋田県出身のフリーライター。『サライ』では旅行、建築、歴史などの分野を中心に執筆中。47都道府県を取材やプライベートで歩き回った経験を生かし、各地にある歴史的な史跡や魅力的な建築などを紹介していきます。

サライ2016年7月号の大特集は、「和魂洋才の『東京』」です。日本橋を歩き、近代建築を訪ね、洋食に舌鼓を打ちます。

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