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ワイン

【日本ワイン生産者の肖像1】曽我貴彦さん(ドメーヌ・タカヒコ)|日本の風土に合うピノ・ノワールを求めて

■タカヒコの精神を受け継ぐ者たち

今、余市では「タカヒコ・ファミリー」とも言える新規ドメーヌが続々と立ち上がっている。ドメーヌ・アツシスズキの鈴木淳之さん、ドメーヌ・モンの山中敦生さんなど、曽我さんのもとで研修した人たちが独立、醸し始めたワインはタカヒコ精神を受け継ぎ、いずれも個性的だ。

「以前は、ワイナリーを立ち上げるのに1億、あるいは2億円必要だといわれていました。僕はワイナリー設立のために、自己資金として1000万円ほど貯めていたんです。新規の意欲的なワイナリーを増やしたいと考えていたから、1000万円くらいで醸造所を始められるという前例を作りたかった。醸造機械の購入資金で500万円、リフォームで500万円というイメージです。ワイン醸造をするためにはステンレスタンクを買わなければいけないとみな思い込んでいます。でもステンレスタンクが60万円、合成樹脂タンクが6万円なので、そちらを使えばかなり割安になる。僕がお世話になった、余市で良質なぶどうを栽培する農家の木村さんや中井さんは、今までワイナリーに良質なぶどうを提供し続けてきてくれました。でも、彼らの子供たちの世代では、ぶどうを売るだけでなくワインも造ってくれたらと、そう願っています」

シンボルマークとなっている紋は、「5・3の桐」を 「5・3のピノ・ノワールの葉」に曽我さんがアレンジしたもの。

それは、自らの人生を託した地、余市全体の発展をも願うゆえだ。曽我さんには7歳の男の子と、4歳の女の子がいる。今、お子さんたちが通う小学校の生徒は、全部でわずか12名。農家やワイナリーを増やし、消費者と交流し、観光ももっと盛んにしたい。小学校の子供の数も20数人くらいにできればと思う。

「余市の畑は1ヘクタールで300~400万円ほどなんです。僕は全体で4.6ヘクタール持っているので、醸造所建設費などのほかに、畑の購入資金で1600万円かかった。同じ北海道でも、1ヘクタール 100万円ほどで買えるところもあります。もし自分一代だけでワイン造りをやるなら、より価格の安い土地を買ったと思う。でも将来的に子供などの次代にワイン造りとその文化を受け継いでもらいたいと考えたとき、リスクはより少ないほうがいい。余市は、昔から果樹が盛んだったという歴史があります。産地の偉大性はお金には変えられないと思って、ここに決めたというのもあります」

醸造所は納屋を改造したもの。現在、新しい貯蔵庫を建設中。今後は、そこで飲みごろまで置いてから販売することも考えている。

余市の未来。そこには大いなる、豊穣なるワイン文化が、育まれていることだろう。そのときドメーヌ・タカヒコのワインは日本の、余市の食文化の誇りを、高らかに謳い上げているに違いない。

アプリコットやオレンジピールの香りが印象的な「ナナ・ツ・モリ ブラン・ド・ノワール」3600円。ヨイチノボリ パストゥグラン」3500円はピノ・ノワールにツヴァイゲルトというぶどう品種をブレンド。よりスパイシーな味に仕上がっている。ドメーヌ・タカヒコの代名詞であるピノ・ノワール「ナナ・ツ・モリ ピノ・ノワール」3700円。

取材・文/鳥海美奈子
2004年からフランス・ブルゴーニュ地方やパリに滞在して、文化や風土、生産者の人物像などとからめたワイン記事を執筆。著書に『フランス郷土料理の発想と組み立て』。また現在は日本の伝統文化、食や旅記事を『サライ』他で執筆している。

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