和食と合わせて堪能したい!仏ブルゴーニュの銘醸地「コート・ドール」の注目ワイン

取材・文/鳥海美奈子

世界有数のワイン産地、フランス・ブルゴーニュ地方。そのなかでも銘醸地として知られる「コート・ドール」は、フランス語で「黄金の丘」を意味する美しい地名を持っています。丘の標高は200~300mで、南北約50kmにわたりぶどう畑が続いています。

そんなコート・ドールは、さらに赤ワインの産地として有名な「コート・ド・ニュイ」と、白ワインの産地として知られる「コート・ド・ボーヌ」に大別されます。

栽培されるぶどう品種は、基本的に白ワインはシャルドネ、赤ワインはピノ・ノワールです。しかし、まったく同じぶどう品種ながら、コート・ドールにある26村で造られるワインは、驚くほど味わいにバラエティがあります。それは村ごと、また村のなかでも畑の場所により「テロワール」が異なるからです。

コート・ドールのぶどう畑。「黄金の丘」の名にふさわしく、秋には畑全体が紅葉に染め抜かれる美景を眼にできる。

近年、日本でもよく聞くようになったテロワールという言葉は、ワイン造りの思想を表します。フランスでは、畑の土壌や気象条件、さらにはぶどう品種やワイン造りに携わる生産者の考えなどを総括して、テロワールと表現しています。

■コート・ドールの土壌の特徴とは

ではコート・ドールの土壌はどのようなものなのでしょう?

ここは1億5000万年以上前のジュラ期前期の粘土や泥灰土、そしてジュラ紀中期の石灰質土壌が中心です。当時、ブルゴーニュ地方は海だったため、様々な海中生物の死骸などが沈殿し、石灰質土壌が形成されました。この土壌はコート・ドールのワインにミネラルをもたらし、繊細でエレガントなワインに仕上がるひとつの要因と考えられています。

しかし、同じコート・ドールのなかでも、その土壌は決して均一ではありません。畑に走る断層などの影響で、同じ村でも土壌がモザイク状に異なりますし、また畑の向きや斜面の角度により、風の通りや陽射しのあたり方も違います。そういった畑のすべての条件を精査したうえで、最上の畑にはグラン・クリュ、良質の畑にはプルミエ・クリュなどといったクラスわけを、ワイン法により定めているのです。

たとえば、グラン・クリュの多くは丘の中腹に位置し、斜面は東向きです。ぶどう栽培にはそもそも痩せた土壌が向いています。斜面にあるぶどう畑では栄養価の高い表土が流れ落ち、排水性も高くなるのでぶどう栽培には最適なのです。また東向きの斜面は、朝の太陽により畑に熱が1日中蓄積されるので、ぶどうを完熟させるのに最適と考えられています。

じつはこのグラン・クリュ、プルミエ・クリュ、村名ワインなどの格付けの基礎は、すでに中世の頃には確立されていたと言われます。

ブルゴーニュにおけるぶどう栽培の始まりはギリシャ、あるいはローマ時代といわれますが、ワイン造りの繁栄をもたらしたのは、中世のキリスト教修道院ベネディクト派とシトー派でした。とりわけシトー派の修道僧は質素な生活と重労働を生活の規範とし、岩だらけの荒れ地を切り拓いて、現在のコート・ドールのぶどう畑の基礎を造ったのです。

さらに修道僧たちは「土の味見をした」と言われるほど土壌の違いやその潜在能力を見極めることに熱心で、現在のグラン・クリュやプルミエ・クリュとほぼ同じ評価をそれぞれの畑に対して行っていました。

■実力派ドメーヌ『ドメーヌ マルシャン・フレール』

そのコート・ドールのなかの、モレ・サン・ドニ村とジュヴレ・シャンベルタン村という銘醸地に多くの畑を所有している『ドメーヌ マルシャン・フレール』は、1813年から7世代にわたり続く歴史あるドメーヌです。先日、現当主のドゥニ・マルシャン氏が来日しました。

ドメーヌ マルシャン・フレールの7代目当主ドゥニ・マルシャン氏。美食家で日頃、料理もよくする。来日時は自らのワインと和食の相性の良さを改めて実感したという。

10年ほど前まで、コート・ドールのワインは醸造テクニックを駆使した、抽出が濃く、厚みのあるがっしりとした味わいが主流でした。しかし近年は、ぶどう栽培を重視し、その上質なぶどうの良さをワインに表現しようとする生産者が増えています。

ドメーヌ マルシャン・フレールのワインは、ブルゴーニュらしい風格に満ち、重厚さは残しつつも、飲み口はとてもスムーズです。まさに、ネオ・クラシックという言葉がふさわしいワインといえます。

その現当主ドゥニさんに、モレ・サン・ドニ村とジュヴレ・シャンベルタン村のワインの特徴を繙いてもらいました。

「ジュヴレ・シャンベルタンの土壌は鉄分を多く含むため赤みを帯びています。カシスやチェリーなど赤い果物の香り漂う、骨格のしっかりした味わいが特徴です。土壌に鉄分が含まれているので、料理も鉄分を含んだ赤身の牛肉や魚、たとえば鮪などと好相性です。鮪の赤身の鮨とともに食べると後味のトーンがぴたりと一致して、絶品です」

ドゥニさんが来日時に行った都内の鮨屋で。鮨の鮪の赤身に、ジュヴレ・シャンベルタン・ヴィエーユ・ヴィーニュを合わせる。鮪の鉄分、づけの醤油の旨みが、ワインと調和する。

さらにこのドメーヌではジュヴレ・シャンベルタンのグラン・クリュのひとつ「グリオット・シャンベルタン」も所有しています。畑の面積が大変小さいグラン・クリュのため希少ですが、果物を煮詰めたコンポートや白胡椒、すみれなどの香りの要素が入り混じ香り、美しい酸とシルクのような舌触りで、一度飲むと虜になります。

グラン・クリュのグリオット・シャンベルタンの畑。鉄分を含んだ赤い表土の下には石灰質土壌が横たわり、それがグリオットのバランスの良い味わいの基礎を形づくる。

ジュヴレ・シャンベルタン ヴィエーユ・ヴィーニュ2013年 6800円。グリオット・シャンベルタン グラン・クリュ2013年 2万3000円/ドメーヌ マルシャン・フレール

そのジュヴレ・シャンベルタンの隣村にあたるのがモレ・サン・ドニです。

「モレ・サン・ドニの畑はより石灰質土壌が多く、比較的白い色をしています。ワインはやはりカシスや果物の香りが漂いますが、森のなかにわけ入ったような湿った樹木の香りもあり、深い余韻に満ちています。隣村だけにジュヴレ・シャンベルタンに似た要素もありますが、より優雅で複雑性のあるな味わいです」

モレ・サン・ドニの畑。ジュヴレ・シャンベルタンより白い土壌だとわかる。ドメーヌ マルシャン・フレールのぶどうは古樹が多く、幹が太い。

複雑性のあるモレ・サン・ドニのワインは、和食にもよく合います。たとえば菜の花やホタルイカなど春の食材を使った和食の前菜すべてに違和感なく調和します。

複雑性のある香り、果実とほどよいタンニンがあるモレ・サン・ドニのワインは春野菜の苦味を伴った、繊細な和食とも好相性。

このドメーヌは歴史があるため、ぶどうの古樹が多いのも特徴です。ヴィエーユ・ヴィーニュとは「ぶどうの樹齢の高いワイン」という意味ですが、このドメーヌの「モレ・サン・ドニ ヴィエーユ・ヴィーニュ」の平均樹齢はじつに51年。それだけに味わいにも集中力があり、コストパフォーマンスの高いワインとなっています。

さらに、「レ・ファコニエール」はモレ・サン・ドニのプルミエ・クリュのなかでも最もエレガントで、ブルゴーニュらしい繊細さを存分に味わえる1本です。

モレ・サン・ドニ ヴィエーユ・ヴィーニュ2014年 6300円、モレ・サン・ドニ プルミエ・クリュ レ・ファコニエール2013年 8000円/ドメーヌ マルシャン・フレール

今春はぜひブルゴーニュワインと和食の組み合わせを堪能してみてください。

【ドメーヌ マルシャン・フレールのワインについてのお問い合わせ】
電話:075・681・0721(木下インターナショナル)
オンラインショップ:http://www.kinoshita-intl.co.jp/

※記載のワインはすべて参考小売価格です。

取材・文/鳥海美奈子

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