文/柿川鮎子
ペットとして飼育する人が増えているフクロウ。「フクロウカフェ」など実物と触れ合うことができる場も増えました。フワフワの羽毛は柔らかく、まるで平らにした小麦粉を上から触るような感触です。
フクロウというとミミズクが思い浮かぶ人も多いでしょう。でも、フクロウという名前のフクロウはいるけれど、ミミズクという名前のフクロウはいないって、ご存じですか?
フクロウは日本の広い地域で生息し、主に平地から山地の林、農耕地、草原などで暮らしているフクロウ目フクロウ科フクロウ属の野鳥です。
一方のミミズクは、羽角(うかく)と呼ばれる耳毛を頭の両端にもっている鳥の総称です。ズクはフクロウを表す古い言葉のひとつで、平安時代から用いられています。ピンとたった角のような羽で、後ろから見ても明らかに飛び出ているのがわかります。つまり耳のついたズクだからミミズク、というわけです。
ミミズクのようにズクがつくと羽角がありそうな印象を受けますが、そういうわけでもありません。たとえばアオバズクには羽角がありません。逆にシマフクロウは、名前がフクロウですが、羽角をもちます。ややこしいですね。
羽角は人間のように耳の穴の外側につく耳朶のような役割は特になく、集音には役に立っていない様です。なぜこのような羽が頭に付いているのか、何の役割をしているのかについては、まだ研究途中でよくわかっていません。いまのところ、シルエットが葉に見えるように擬態しているのではないかという説が有力です。
実際の耳は顔の両端についていて、人間のように真横ではなく、右は上、左は下というように高低をつけた大きな穴になっています。特にフクロウ類は鳥類の中でも聴覚能力が優れており、地中にいるネズミが動く小さな音も聞き分けることができます。人が音として認識できないレベルの音を聞き分け、さらには音からその動物との位置を割り出し、狩りをすることができる優れた能力をもっています。
意外と知られていないミミズクの「耳」の秘密、いかがでしたか?
文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。