取材・文/末原美裕
京都で長年活躍している目の肥えた方々が足繁く通うお店は、間違いなく感動と出会えるところ。本連載では目利きの京都人の方が太鼓判を押すお店を紹介していきます。
今回、京都人のお墨付きの場所を教えてくれるのは、三軸組織(さんじくくみおり)織元 西陣織織元「綵巧(さいこう)」代表取締役の室門 恒明(むろかど つねあき)さん。
室門さんが代表を務める、「綵巧」には世界に二台しか存在しない大型環状織機があります。その織機は「三軸組織」を製織できる唯一のものです。
「三軸組織は、千年以上前、京都で誕生したと伝えられている<京くみひも>の技術と、イタリアのトーションレースの技法との融合によって生まれた織物のことです。奈良時代に大陸から技法が伝わり、経典を保管する組紐や貴族の正装の装飾品に使われてきました。それらの品々は、今も正倉院や法隆寺の宝物館、安芸ノ宮島厳島神社等に大切に収蔵されていますよ」と室門さん。
「五辻のこんぶやさん」と京都人から親しまれている
五辻の昆布 本店
「お歳暮やお中元、誰かに手土産を持っていこうかという時に寄らせてもらって、もう30年になります。“こんぶやさん”と一口に言っても、種類が多くて珍しいものも揃っているので、相手の好みに合わせた品物を選ぶことができるんです」と室門さんがおすすめしてくれたのは、「五辻の昆布 本店」。千本通り沿いのお店で、近くには北野天満宮があります。
軒先には、今ではあまり見かけない塩昆布用の機械切り・手で押切りされた昆布が数種類並び、お店に入る前から思わず手が伸びてしまいます。
落ち着いた店内には、出汁昆布はもちろん、佃煮からふりかけ、お茶、甘味など昆布にまつわる商品が所狭しと並べられています。
「手土産を渡す相手の年齢だったり、家族構成を伝えると、店員さんがいつも的確に商品をセレクトしてくれるんです。手土産や贈答品はいつもこのお店だけで決まるから安心ですね」と室門さん。
今のおすすめを「五辻の昆布」の久世 章斗(くせ あきと)代表取締役専務に聞いてみました。「各季節限定の昆布の佃煮はいつもご好評いただいています。この夏は新生姜入り塩昆布の「洛水」(8月まで、580円・税込)がおすすめです。みずみずしい新生姜と昆布の相性は抜群ですよ」
新生姜の穏やかな辛味とまろやかな昆布の組み合わせはご飯のお供にぴったりです。
また、約2㎝四方に刻まれた昆布が入っている「だし昆パック」(1300円・税込)を使うといい昆布出汁が手軽にとれると人気です。「昆布本来の旨味を伝えたくて作りました。手間をかけずに“ほんまもん”の味わいが感じられますよ」と久世さん。
「五辻の昆布がある西陣の界隈には、徒歩圏内に京料理・てんぷらの<天喜(てんき)>、京菓子の<千本玉壽軒(せんぼんたまじゅけん)>、赤飯と豆大福といえば<金時>、老舗パン屋の<大正製パン所>など大々的には知られていないけれど、名店がたくさんあります。西陣全体を楽しんでもらいたいですね」と話す久世さんからは西陣への誇りを感じました。
お土産に昆布を買いながら、西陣をぶらりと歩いてみれば、ほんまもんの京都時間が過ごせるはずですよ。
■室門恒明さん
三軸組織織元 西陣織織元である有限会社 綵巧 の代表取締役。
1948年、京都・西陣に生まれる。西陣織屋で働いたのち、1962年に2代目を継ぎ現職となる。世界に2台しか存在しない大型環状織機を使い、「京くみひも」の技術と、イタリアのトーションレースの技法との融合によって生まれた織物である、「三軸組織」という希少な織物を製織している。“最高”の西陣織を発信する織元。
http://nishijinori-saiko.jp
■五辻の昆布 本店
営業日:年中無休
営業時間: 9:00~18:00
住所:京都市上京区五辻通千本東入る西五辻東町74-2
TEL:075-431-0719
アクセス:京都市バス「千本今出川」下車 徒歩約5分
https://itutuji.com
取材・文/末原美裕
小学館の編集者を経て、フリーの編集者・ライター・Webディレクターに。2014年、文化と自然豊かな京都に移住。