談/辰巳芳子(料理家)
八丁味噌は、愛知県岡崎市発祥の豆味噌の銘柄です。水気が少なく運ぶのに便利だから、参勤交代の武将たちに運ばれ全国に知られるようになりました。江戸時代から武将のいのちを守ってきた、独特の風味を持った力の強い味噌です。
1645年創業の八丁味噌の老舗、岡崎市の「カクキュー」と私は、戦時中に母と名古屋に疎開していた頃からの付き合いだから、昭和14年ぐらいから八丁味噌をいただいていたことになります。
戦争の間は、私たちは八丁味噌がなければ生きられなかったですね。私の母は、「根性鉄火味噌」をおにぎりの具にと、よく作っていました。生姜、ししとうを微塵切りにして炒め、粉鰹節を加えてまとめたところに、最後に八丁味噌を加えて、強火でサラサラになるまで2時間ぐらい炒め続けてつくるのが「根性鉄火味噌」です。八丁味噌でければこの鉄火味噌は作れません。母は、私たちの栄養源である「根性鉄火味噌」を途切れないよう、1週間か10日に一度は作り、おにぎりの具にしてくれました。
八丁味噌を使った男の酒肴として手軽なのは、八丁味噌の田楽でしょう。「カクキュー」では、調味した田楽味噌を販売しています。田楽と聞くと醤油の匂いがするような和風のイメージがありますが、透明なパイレックスのガラス鍋に鶏がらのスープを張って、牛のすじ肉、里芋、大根、こんにゃくなどを煮て、カクキューの八丁味噌の田楽のたれをつけていただけば、まったく「田楽」の印象も考え方も変わるでしょう。これならワインにも合います。
大きなパイレックスの鍋を囲んで何人かで「洋風田楽」をいただいてもいいし、小さな一人用のパイレックスで食べるだけで、食卓の景色が変わります。
「カクキュー」では、八丁味噌の味噌煮込みうどんも作っていて、なかなか美味しいので、田楽を食べた締めにと、味噌煮込みうどんを取り寄せるのもいいでしょう。
私たちが米と大豆を残すには、毎日、お米を食べてお味噌汁をいただくのが一番ですが、他にも大豆で作った八丁味噌をまったく新しい考え方によって活用することで、大豆をいただき、親しみ、消費量を増やすこともできるのではないか、と思います。
一手間を惜しまず人をもてなそうとする日本人の「まめやかさ」。みんな、そのような「まめやかさ」を取り戻そう、と言いたいですね。
談/辰巳芳子(たつみ・よしこ)
料理家。1924年生まれ。聖心女子学院卒業。家庭料理、家事采配の名手として今も語り継がれる母、辰巳浜子の傍らにあって料理とその姿勢を我がものとし、独自にフランス、イタリア、スペイン料理も学び、広い視野と深い洞察に基づいて、新聞、雑誌、テレビなどで日本の食に提言しつづけている。 近年は、安全で良質の食材を次の世代に用意せねばとの思いから「大豆100粒運動を支える会」会長、「良い食材を伝える会」会長、「確かな味を造る会」の最高顧問を務める。
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以上、購入はカクキューオンラインショップ http://www.kakukyu.jp/shopping/
問い合わせはカクキュー http://www.kakukyu.jp/inquiry.asp まで。
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撮影/小林庸浩、構成/尾崎靖(小学館)
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