サライ世代にもなると、血気盛んであった頃からすれば、角も取れて随分と丸くなったように思います。また、人生長く生きていれば、それなりに多くのことを学び、悟ることができたようにも感じます。

しかし、その一方で未だ多くを悟りきれていないことも自覚するものです。若い頃「もっと、勉強すればよかった」と後悔するのは、まだまだ、頭が柔軟な証拠。先人が残してくれた名言や諺から、若かりし頃とは一味も二味も違った学びや悟りが得られるのではないでしょうか?

今回の座右の銘にしたい言葉は「一病息災(いちびょうそくさい)」 です。

目次
「一病息災」の意味
「一病息災」の由来
「一病息災」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に

「一病息災」の意味

「一病息災」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「ちょっとした病気のある人のほうがからだに注意するので、健康な人よりもかえって長生きするということ」とあります。

つまり、「病気がない方がいい」と思いがちですが、「ちょっとした病気や不調があるからこそ、毎日健康に気を使う習慣」が身に付き、それが未来の元気につながるのです。

たとえば、高血圧や糖尿病など、加齢とともに増える生活習慣病も、その存在を悲観する必要はありません。逆に、それらと上手につき合うことで、自身の生活習慣を見直し、健康的な毎日を送れるきっかけになります。

「一病息災」の由来

「息災」という言葉は、仏教が由来で「災いや病気を除く」「健康で元気であること」を意味します。その「息災」に「一病」の「一つの病気」が加わることで、ネガティブな意味だけでなく、「自分の体と上手に付き合う知恵」という前向きなニュアンスを持つ言葉となります。元々は「無病息災」という「病気をせず、健康である」という意味の四字熟語をもじったものと考えられています。

年齢を重ねるほど「健康が気になる」という人は多いでしょう。誰もが願う「無病息災」。もちろん、健康であることは何よりの宝です。しかし、人生の円熟期を迎えたサライ世代にとって、より深く、そして味わい深い人生を送るための指針となるのは、むしろ「一病息災」という言葉ではないでしょうか。

たとえば、健康診断で少し数値が悪かった……。そんなときこそ、自分自身の体を見直し、食生活や運動習慣に気を配ることができます。「自分は病気一つないから大丈夫」と過信するよりも、ほんの少しの持病や違和感を覚えている人のほうが、生活習慣を慎重に保つことで、結果的に穏やかで健やかな日々を過ごせることがあるのです。

「一病息災」を座右の銘としてスピーチするなら

スピーチで「一病息災」を語る際は、「病気自慢」や「不幸話」に聞こえないよう、細心の注意が必要です。深刻な闘病記ではなく、病を得たからこその「前向きな変化」や「新しい発見」に焦点を当てましょう。ユーモアを交え、あくまで軽やかに語るのが肝心です。

以下に「一病息災」を取り入れたスピーチの例をあげます。

健康を気遣うきっかけとしてのスピーチ例

本日は「私の座右の銘」についてお話しさせていただきます。私が大切にしている言葉は、「一病息災」です。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、「一つくらい病気があった方が、かえって健康に気を遣うようになり、結果として長生きできる」という意味の言葉です。

実は私も数年前、健康診断で血圧が少し高めだと指摘されました。最初はショックでしたが、それをきっかけに生活を見直すようになったのです。毎朝のウォーキングを始め、塩分を控えた食事を心がけ、定期的に医師の診察を受けるようになりました。

すると不思議なもので、以前よりもずっと体調が良くなり、同年代の友人たちからも「元気だね」と言われるようになりました。もしあの時、血圧の指摘がなかったら、今でも不摂生な生活を続けていたかもしれません。

「一病息災」は、病気そのものを良いものだと言っているわけではありません。しかし、体の小さなサインを見逃さず、それを健康への気づきとして活かすことの大切さを教えてくれる言葉だと思います。

人生100年時代と言われる今、完璧な健康を求めるよりも、自分の体と上手に付き合いながら、質の高い生活を送ることが重要ではないでしょうか。小さな不調さえも、より良い人生を送るためのパートナーとして受け入れる。そんな前向きな生き方を表現した「一病息災」という言葉を、私は座右の銘として大切にしています。

最後に

「一病息災」とは、病と闘うための言葉ではありません。病と「共に生きる」ための、賢く、そして温かい知恵です。

完璧な「無病」を目指し、少しの不調に一喜一憂する生き方は、時に私たちを疲れさせます。それよりも、今ある自分を静かに受け入れ、一つの病を人生の「道しるべ」として、日々の暮らしを丁寧に紡いでいく。そんな「一病息災」の生き方こそ、私たちサライ世代の人生を、より一層味わい深く、豊かなものにしてくれるのではないでしょうか。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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