文/鈴木拓也
慢性腰痛やぎっくり腰といった、原因となる明確な病気がなく、MRIで検査しても病因が特定できないものを「非特異的腰痛」とよぶ。
以前は、非特異的腰痛の人に対して医師は「あまり体を動かさず、安静第一」とアドバイスすることが多かった。ところが、腰痛に対する医学的な理解が深まった今は、家事などできる範囲での活動は、強いて増やしたほうが治りが早いと、考えが変わりつつある。
突然のぎっくり腰で痛みが激しいときも、一両日は安静にしておき、そのあとは痛み止めの薬を使い、様子を見ながらできるだけ普段通りの活動をすべきだという。
非特異的腰痛の場合、腰をかばうようなライフスタイルを長く続けると、猫背気味になって筋肉が硬くなり、血流が滞って、疲労物質がたまってしまう。そのため、ちょっと背筋を伸ばしたり、腰を反らそうとしたときに、苦痛を感じやすくなる。
これが続くと、痛覚過敏になってしまい、腰痛自体は治っていても、痛みに対する恐怖感や不快感がずっと残り、「まだ腰痛は治っていない」と思い込んでしまうという。
こうした負のサイクルを解消し、非特異的腰痛をいやすシンプルな方法を提唱しているのが、東京大学医学部附属病院の松平浩特任教授。著書の『腰痛は「動かして」治しなさい』(講談社)では、非特異的腰痛解消に向けた様々な体操が紹介されている。
なかでも「基本のこれだけ体操」は、やり方は簡単で時間も30秒しかかからない、万人向けの内容となっている。やり方は以下のとおり。
■1:膝を伸ばし直立した状態で、両足を肩幅より少し広く開く。
■2:両手を臀部にあてる。手の指は真下を向く。
■3:顎を引き、口から「ふー」と息を吐きながら、上体をゆっくりと後ろに反らし、「痛気持ちいい」箇所でストップ。3秒そのままの姿勢を保持。膝は曲げず、両手は骨盤を押し込むイメージで。
■4:姿勢を元に戻す。これを10回繰り返す。
「基本のこれだけ体操」は動画も公開されているので、参考にしてほしい。
松平浩特任教授による「基本のこれだけ体操」の動画
1日1回朝に行うことで、非特異的腰痛は快方に向かうはずだが、もし脚の痺れなど異変を感じたら、無理して続けず、医師の相談を受けること。
本書ではほかに、「うつぶせで行うぎっくり腰体操」や、コアマッスルを鍛え腰痛を予防するアームレッグレイズなど、バリエーション豊富な腰痛対策が取り上げられている。もし今腰痛に悩んでいるか、しばしば腰痛に襲われるので予防したいとお考えであれば、本書を読まれてみてはいかがだろうか。
【今日の一冊】
『腰痛は「動かして」治しなさい』
(松平浩著、講談社+α新書)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062729499
文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。
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