腰痛や肩こりなど身体の不調が、右か左の片側に出やすいという症状がよく見受けられます。
それにはさまざまな原因が考えられますが、大腰筋という筋肉が影響している場合があります。
大腰筋の働きとそのチェックやトレーニング法について解説します。
腰痛や坐骨神経痛の治療にたずさわっていると、肩こりや膝痛などの筋・関節痛や他の身体の不調についても相談されることがよくあります。
そこでよく聞かれるのが、
「右(左)にばかり症状が出るの」
「症状が全部こっち側(片側)なんですよ」
「左(右)ばかり痛くなるんです」
というような訴えです。
この記事をお読みになっているあなたも、思わず
「そうそう! 同じ同じ!」
とうなずいているかもしれませんね。
このようにさまざまな不調が身体の片側に出やすいという訴えは本当に多いのですが、そのはっきりした原因はよくわかりません。
おそらく普段の姿勢やクセ、利き腕、よくおこなう作業、など色々な要因が重なっておこるのでしょう。
これらの要因によって、身体の左右の筋力や柔軟性のバランスがくずれたり、負担が一方に集中したりして不調としてあらわれるのだと思います。
そのなかで筆者がとくに影響が大きいのではないかと考えているのが、【大腰筋】のバランスです。
大腰筋とは?
大腰筋(だいようきん)は、下の図のように腰椎から骨盤の中をとおり、大腿骨につながる筋肉です。
途中で骨盤から大腿骨につながる腸骨筋と一緒になり、2つの筋肉を合わせて腸腰筋と呼ばれます。
からだの深部にある筋肉なので、インナーマッスルにも分類されます。
大腰筋はたくさんの働きを担っていますが、大きく分けて次の3つの働きがあります。
1)股関節を屈曲させる
主に股関節を曲げる動作に関わります。歩く時に脚を前方に振りだしたり、階段を昇る時や走る時に膝を持ち上げたりするような動作です。
2)体幹を横方向に曲げる
背骨(腰椎)や胴体(体幹)を左右横方向に曲げる時に働きます。また背骨(腰椎)や胴体(体幹)が左右方向に傾くような時、反対側の大腰筋は逆方向に背骨をひっぱって支えます。
3)姿勢を支える
股関節、骨盤、背骨(腰椎)を支える働きがあります。腰椎の前弯や骨盤の前傾を適切に保つように働きます。それが結果として背骨や全身の姿勢を適切に支えることにもつながります。
身体(体幹)の左右方向の動きを制御したり、姿勢、とくに背骨(腰椎)を支えたりする働きがありますので、大腰筋が弱ってこれらの働きが十分にできなくなると、全身に影響をおよぼす可能性があるのです。
大腰筋のテストをしてみよう
もしあなたが、肩と腰など右か左の片側に症状がおこりやすいようでしたら、大腰筋の筋力をテストしてみると、そちら側の大腰筋が弱くなっているかもしれません。
次のようにやってみてください。
自宅で出来る腰痛トレーニングより(https://re-studio.jp/dvd/)
仰向けに寝て膝を伸ばし、おへその下を引っ込めるようにお腹に力を入れます。
腰が反って床から浮かないように、腰を軽く丸めて押し付けるような感じです。
そこから膝を伸ばしたまま、股関節からまっすぐに片脚を上げます。
この時に腰に不安があるようなら、上げない方の脚は膝を曲げて立てた状態でおこなってください。
背中や腰はなるべく力を抜き、お腹(大腰筋)の力を使うような感覚で上げていき、限界まで上げたらゆっくりおろします。
脚を上げる高さは、身体の柔らかさによって個人差がありますので、無理のないところまで上げてください。
脚が下につくギリギリまでおろしたら、踵が下につかないうちにまた上げていきます。これを片脚10回ずつおこないましょう。
上げる時のしんどさや、10回終わった後の疲れ方などに左右差はありますでしょうか?
もし差があれば、よりつらい方の大腰筋が弱っている可能性があります。
大腰筋のトレーニング
前記のチェックでもし差があるようなら、大腰筋のトレーニングをおこないましょう。
実は先のチェック法はそのまま大腰筋のトレーニングにもなります。これを10回1セットとして、1日1~3セットほどおこないましょう。
また、他にも次のような方法があります。
イスに腰かけて、背筋をまっすぐ伸ばします。おへその下を少しへこますようにして体幹をしっかり支えてください。
そこから片脚を少し持ち上げます。あまり高く上げなくていいので、脚の裏を床から3~5cm程度上げましょう。
この時に座っている上半身(お尻から上)が横に傾いたり、背中が丸まったり後ろに傾いたりしないように気をつけてください。
最初に座った状態から上半身は動かさずに、脚だけを持ち上げます。
上げた状態で3秒止め、ゆっくりおろします。
おろしたら次は反対の脚を同じように上げて、止め、ゆっくり降ろします。
これを10回1セットとして、1日1~3セットほどおこないましょう。
※ご注意)痛みのためにこのチェックやトレーニングができない、またはこのチェックやトレーニングをすると症状が悪化する時はやめてください。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
腸腰筋を鍛えて腰痛改善! 腰が痛くても安全なトレーニング法【川口陽海の腰痛改善教室 第86回】(https://serai.jp/health/1067156)
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html