「トリガーポイント」とは、筋肉内に生じる発痛点のことです。
腰や脚の痛みの原因にもなり、神経痛などと間違われることも少なくありません。
その特徴や治し方について解説します。

「トリガーポイント」は筋肉の中にできる発痛点

「トリガーポイント」というと、「くわしく知らないけど、なにやら痛みの原因になるらしい……」。そのようなイメージでしょうか?

意味としては全くそのとおりで、「痛みの引き金になるポイント」という意味で「トリガーポイント」と名付けられました。

「トリガーポイント」がどこにできるかというと、こり固まった筋肉の中にできます。

例えば肩や首などの筋肉がこると、こりこりとすじ状のこりやこわばりを感じると思います。

そのこりの中に、押したりもんだりするととくに強い痛みを感じたり、いわゆるツボを押されるような心地よいひびきを感じる部分があるとすれば、おそらくそれがあなたの「トリガーポイント」のひとつです。

筋肉が疲労するとこのようにすじ状にこわばりができますが、これを索状硬結(さくじょうこうけつ)といいます。

その索状硬結の中にさらに敏感な小さいしこり状のかたまり、ポイントができますが、それが「トリガーポイント」になります。(下図)

「トリガーポイント」の痛みの特徴

「トリガーポイント」による痛みにはいくつか特徴があります。

その特徴のひとつは、離れたところに痛みをおこすことです。

例えば股関節の奥に小殿筋という筋肉がありますが、そこに「トリガーポイント」ができると、下の図のようにお尻から太ももの後ろ側や横、ふくらはぎやすねの外側にかけて痛みやしびれをおこすことがあります。

この図の場合、×印がトリガーポイントの生じている部分(小殿筋)で、赤いエリアがそこから痛みがおこる部位になります。

もちろんそのトリガーポイントの近くに痛みをおこすことも多いですが、このようにかなり離れたところまで痛みが出ることも少なくありません。

このような痛み(の出かた)を「トリガーポイントによる関連痛」といいます。

また特徴のふたつ目は、この小殿筋の例もそうですが、トリガーポイントのできやすい場所(好発部位)と、それによって痛みが生じる範囲(関連痛の生じる部位)がある程度決まっていることです。

そのため、どこに痛みが出ているかがわかれば、おおよそどこにトリガーポイントができているかを推測することができます。

ただし、例えば下の画像のように、同じように腰に痛みが出ていたとしても、その部位に痛みをおこす可能性のある筋肉(トリガーポイント)は複数あるという場合もありますので、どこが本当の原因になっているか見極めていく必要があります。

また、痛みには実際に複数の筋肉=トリガーポイントが原因になっている、というケースもよくあります。

「トリガーポイント」は見落とされやすい

例えば腰痛で病院にかかったとして、「トリガーポイントが原因です」といわれることはあまりないでしょう。

これにはいくつかの理由が考えられますが、まずそのひとつとして「トリガーポイントは画像検査でわからない」ということがあります。

腰や脚の痛みで検査をする場合、ほとんどはエックス線検査やMRI検査になると思いますが、エックス線検査では筋肉は写りませんし、MRIでは筋肉は写ってもトリガーポイントまでは判別できませんので、画像で診断するのは困難だと思われます。

またいくつかの診断基準があるのですが、はっきりとその診断基準をみたすような所見や反応をみせるケースは、あまり多くはありません。

それから、これは筆者の個人的な意見となりますが、触診などで「トリガーポイント」を見極めるには、ある程度の熟練が必要なため、見つけることが難しいのかもしれません。

筋肉の中の小さなしこり状のポイントを見つけるわけですから、日ごろから人体、また筋肉の触診や施術をくりかえしていないとなかなか難しいはずです。

このようにいくつかの理由から「トリガーポイント」は見落とされやすくなってしまっていると思われます。

腰や脚に痛みをおこすトリガーポイント

以下に、腰や脚の痛みの原因となるトリガーポイントの例を図示します。

図の中の×印がトリガーポイントのできやすい部位(好発部位)で、赤い部位がそこから生じる痛み(関連痛)の出やすい部位となります。

脊柱起立筋のトリガーポイント

腰方形筋のトリガーポイント

中殿筋のトリガーポイント

大殿筋のトリガーポイント

梨状筋のトリガーポイント

大腿筋膜張筋のトリガーポイント

小殿筋のトリガーポイント

大腿四頭筋(外側広筋)のトリガーポイント

ハムストリングのトリガーポイント

腓腹筋のトリガーポイント

腓骨筋のトリガーポイント

いかがでしょう、あなたの痛みと似たパターンはあったでしょうか?

これらの図と似たような症状があるようなら、あなたの痛みもトリガーポイントが原因かもしれません。

「トリガーポイント」の治療

医療機関での「トリガーポイント」の治療は、薬によるものと注射によるものがほとんどのようです。

ペインクリニックにおいては、「トリガーポイント注射」として麻酔薬を注射する治療がおこなわれることがあります。

他には指圧マッサージなど手技による施術治療や鍼灸治療、温熱療法、ストレッチやトレーニングなどの運動療法なども有効とされています。

筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)では、手技による施術治療に加えて症状や体力に応じたストレッチやトレーニングの指導をメインにおこなっています。

症状やその程度にもよりますが、自分自身でセルフケアやエクササイズをおこなうことで、「トリガーポイント」の症状を改善していくことも十分に可能です。

「トリガーポイント」のセルフケア

「トリガーポイント」のセルフケアとして、筆者はテニスボールによるセルフマッサージとストレッチをまずはおすすめしています。

以下の過去記事を参考にご自身でもおこなってみてください。

腰痛に効くツボはココ! 中殿筋をテニスボールでゆるめて腰痛改善【川口陽海の腰痛改善教室 第87回】https://serai.jp/health/1069105

ヘルニア・脊柱菅狭窄症|テニスボールで脚の痛みやしびれを改善する方法【川口陽海の腰痛改善教室 第78回】https://serai.jp/health/1050575

片側の腰が痛いときに効くツボ(トリガーポイント)とストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第75回】https://serai.jp/health/1044313

3分で腰の疲れをとって腰痛を予防! 誰でも毎日できる簡単ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第88回】https://serai.jp/health/1070834

この記事が腰痛や坐骨神経痛改善の一助になれば幸いです。

拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。

文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html

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