腰の片側だけに痛みがある場合、腰周囲の筋肉が緊張していることが原因の場合があります。
そのような場合は、ツボ(トリガーポイント)をねらってほぐし、ストレッチをすることで改善することができます。
腰の片側に痛みを起こす筋肉
例えば腰方形筋(ようほうけいきん)という筋肉があります。
この筋肉は腰に手を当てた時にちょうど親指があたる部分にあり、肋骨と骨盤をつないでいる筋肉です。腰がつらい時に揉んだり押したりしたくなったり、押されると気持ちよい部分、というとわかるでしょうか。腰や背骨を支える重要な筋肉で、特に長時間座ったままでいたりすると負担がかかり、こり固まってしまいます。
筋肉はこり固まると血行不良を起こし、血行が悪くなるとさらにこり固まるという悪循環に陥ってしまい、最後はトリガーポイントといわれるしこり状の発痛点ができてしまいます。
腰方形筋に発痛点=トリガーポイントができると、腰の横から骨盤のまわりに痛みが起こります。
上の図の「×印」がトリガーポイントで、そこから赤い範囲に痛みやしびれが起こります。
まさによくある腰痛の痛みのパターンと一致すると思いますが、あなたの腰痛とも似ているでしょうか? このような痛みは背骨や神経からではなく、筋肉から起こることがあるのです。
トリガーポイントについては本連載ではおなじみですが、詳しく知りたい方は次のページをご覧ください。
腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療(https://www.re-studio.jp/backpain/pg122.html)
このような筋肉の緊張(トリガーポイント)から発生する痛みを改善するには、原因となっている筋肉をほぐし、ストレッチで伸ばしてゆるめ、血行を回復することがとても効果的です。
【1】テニスボールで腰まわりの筋肉の緊張をゆるめる
筋肉の緊張をほぐしてゆるめるにも様々な方法がありますが、筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)では、テニスボールを使ったセルフマッサージをおすすめしています。
硬球のテニスボールをご用意ください。
まず、ボールを当てる部分を、以下の画像でおおよそイメージしてください。
横にまっすぐ伸びた赤い点線が、腰のベルトのラインくらいです。
その上で、背骨から7~10cmくらい外側、上の画像の丸く点線で囲われたあたり、おへその真裏くらいの高さで、腰に両手を当てたときに、親指があたるくらいの場所です。
それでは実際にテニスボールを使ってほぐしてみましょう。
自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより(https://www.re-studio.jp/dvd.html)
1.床に仰向けになり、両膝を立てます。バスタオルやヨガマットなどを敷くとより良いでしょう。
2.体を傾けるようにして、腰のクビレより少し上、おへその真裏くらいの位置で、背骨から7〜10cmほど外側にボールを入れ、ゆっくりと体重を乗せるようにしましょう。腰のあたりにボールを当てようとすると、つい腰を持ち上げて上から乗っかってしまうかもしれませんが、この方法だといきなり強い刺激がかかりますので、あまりおすすめできません。体を傾けて優しく当てるようにしてください。
3.息を吐いて体の力を抜いていきます。特にボールが当たるところの力をうまく抜くようにしてください。多少痛みがあったりすると、つい当てている部分に力が入ってしまうと思いますが、そうすると筋肉が固まってうまくほぐれません。あえて力を抜くようにすることで、奥の方までほぐすことができます。グリグリと転がすように刺激するのは、痛みがある時にやると逆に痛みが増したりしますので、やらないようにしましょう。
4.うまくポイントに当たると、「痛気持ちいい」「ジーンと効く感じ」「ツボを押されている感覚」などがあります。このような感覚を感じるところを探しながら、1cmずつくらいボールを動かしていきます。
ちょっとした位置やボールを当てる角度により、効く感じが変わると思いますので、「どのへんが効くかな?」とボールを当てながら探してみてください。
時間としては、
・1か所10~20秒程度
・全体でも5~15分程度
くらいから始めることをおすすめしています。
あまり長い時間行うと、その後で、または翌日などにかえって痛みが増したりしますので、はじめは短時間で様子をみながら行ってください。大丈夫なようでしたら、少しずつ時間を伸ばしてみましょう。
痛みが残ったり、あとで痛みが増したりするようなら、刺激が強過ぎるか時間が長過ぎるので加減してください。
また、ほぐしているときの感覚ですが、
・ほぐしている時に「痛気持ちいい」「ジーンと効く感じ」「ツボを押されている感覚」などがある
・ほぐした後に、そのあたりが「軽くなる感じ」「すっきりする感じ」「ホカホカする感じ」「じわっと血が巡る感じ」など良い感じがある
このような感覚があれば効果があります。
逆に
◆ほぐしている時に「すごく痛い」「嫌な感じや不快感」などがある
◆ほぐした後に痛みが残ったり、痛みが増したりする
このような場合は、うまくできていないか、またはテニスボールでほぐすのは適していないと思われますので、やめておきましょう。
【2】ほぐした筋肉をストレッチで伸ばす
テニスボールでほぐしたら、その部分をストレッチして伸ばします。3つのストレッチをご紹介します。
寝て行う腰痛対策ストレッチ
1.仰向けから片膝を胸に引き寄せ、その膝を反対に倒して腰をひねるようにストレッチします。
下の画像の場合、左膝を抱えてから右方向に腰をひねるように倒しています。適度に腰からお尻の筋肉が伸びたところで止め、そのまま力を抜いて深呼吸しながら、30秒~1分ほどストレッチします。
2.ゆっくりと脚を戻して仰向けに戻ります。
3.反対側も同じように行います。これを2~3回繰り返します。
この動作をすることに怖さがある場合は、少しずつゆっくりやってみてください。
痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。
座って行う腰痛対策ストレッチ
1.上の画像のように、片足を曲げ片足は伸ばす姿勢で床に座ります。この姿勢で伸ばした足の内腿や腿裏がきついようなら、伸ばす方の脚の膝を軽く曲げてもOKです。
2.上半身を伸ばした足の方向に倒していきます。可能な場合は手で足先をつかめると良いのですが、無理な場合は上半身を倒すだけでOKです。上の画像のように上半身を右に倒すと左の腰(腰方形筋)が伸びます。
3.ろっ骨と骨盤の間が拡がるように適度に伸びたところで止め、そのまま30~60秒ほどキープしてください。呼吸は楽にゆっくりと繰り返し、力を抜いて上半身の重みだけで伸ばしてください。
4.終わったらゆっくりと上半身を戻し、反対側も同じようにやってみましょう。
片側2~3回ずつ行いましょう。
このストレッチが難しい場合は、下の画像のように立っておこなってみましょう。
立って行う腰痛対策ストレッチ
片腕をまっすぐ上に伸ばしたところから、反対方向に体を横にゆっくり倒します。上の画像の場合、左腕を上げて体を右に倒していますが、このとき、左腰の横が伸びていきます。不安な場合は、画像左のようにイスなどを使っておこなってもOKです。
※痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。
以下の記事でも様々な腰痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひご覧ください。
腰痛改善には骨盤を整える股関節のストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第70回】(https://serai.jp/health/1034491)
腰痛持ちに良い腹筋 悪い腹筋|本当に正しい腰痛トレーニングとは【川口陽海の腰痛改善教室 第69回】(https://serai.jp/health/1032786)
リモートワーク腰痛を解消するにはトリガーポイントマッサージ!【川口陽海の腰痛改善教室 第68回】(https://serai.jp/health/1030955)
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オススメの腰痛・坐骨神経痛改善ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第61回】(https://serai.jp/health/1020567)
また、拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
ろっ骨をほぐして腰痛を改善する方法を多数ご紹介しておりますので、お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html