文/鈴木拓也
わが国の高齢化はますます進み、来年は5人に1人が75歳以上という人口構成になる。
一方、「アクティブシニア」という言葉をよく聞くようになった。その意味は、介護を受けず、趣味・仕事に意欲的に取り組む高齢者を指す。2030年にはアクティブシニアの比率は8割を占めるというデータもあり、年はとっても元気な人が増えるのは、前向きにとらえていいだろう。
ただし、老いるがままに任せてはアクティブシニアへの道は難しく、個々人は多少とも健康管理を心がける必要がある。そして、そのための健康法は世の中にたくさんある。
今回は、その一つを紹介しよう。その名も「シニアヨガ」。 5千年の伝統を持つヨガを高齢者向けにアレンジしたもので、NPO法人「日本シニアヨガ協会」が啓発活動をしている。都内を中心にグループレッスンをするほか、オンラインや講師を派遣しての出張レッスンもしているという。
年齢とともに衰える「伸びる」力を改善
当協会の認定本として『理学療法士が教える 伸びるだけ!シニアヨガ』(創元社)が刊行された。これにより、関東圏外の人もこの健康法を実践できるようになった。
書名にもあるように、本書のキーワードは「伸びる」。
首を伸ばす、背伸びをするなど、上に伸びる力の重要性が説かれている。この力は、年とともに衰えが目立ちやすく、高齢者によく見られる背が丸まった姿勢は、伸びる力が低下したことの表れだという。
逆に、伸びることは「健康スイッチ」となる。そのスイッチをオンにするのに有効なのが、シニアヨガであると、理学療法士でありヨガインストラクターの著者、藤田日菜子さんは力説する。
さらに、シニアヨガには、マイルドな筋トレ、バランス練習、有酸素性運動という側面もある。こうした運動は、認知症や骨粗鬆症の予防にもなることが認められており、シニアに嬉しい様々な効果を得られるのも特徴だ。
まずは「プレヨガ」で準備運動
本書のシニアヨガは、「プレヨガ」「伸びトレ」「アーサナ」の3本立てとなっている。
プレヨガは、いわば準備運動。「呼吸を整え、背骨や手首足首をほぐし、自分の体の伸び力をチェック」するために行い、何種類かある。
以下は、呼吸しながら左右の脇腹の広がりと肋骨の動きを意識するというもの。
1. 横からわき腹の肋骨をつかむように両手を置く。
2. 鼻でゆっくりと呼吸する。吐くときはわき腹がなるべく小さく縮むように吐ききり、吸うときは自分の手を押し広げるように吸う。
3. 3~5回繰り返す。
「伸びトレ」で正しい体の使い方を確認
次いで行うのは、アーサナ(ヨガの動作)を簡略化した「伸びトレ」だ。
これには、硬くなった背骨や関節などの伸びる力をサポートする効果があるという。なるべく目を閉じて行うのが、効果をアップさせるポイント。以下は、その1つ「仰向け胸伸ばし」。
1. 丸めたバスタオルやたたんだクッションを床に横向きに置き、それに肩甲骨の下あたりが当たるようにして仰向けになる。バスタオルは胸が伸びて「気持ちいい」と感じられる高さに。
2. 両手は横に伸ばすか、首の後ろで組む。
3. 力を抜いてリラックスし、お腹や胸・わきの伸びを感じる。
4. 3~5呼吸体勢をキープする。
本格的なアーサナに挑戦
伸びトレが無理なくできるようになったら、アーサナをやってみよう。
その前に姿勢チェックをする。壁に軽く背が触れるように立ってみよう。後頭部、肩甲骨、お尻の3点が壁についていて、「腰の後ろに手の平一枚、首の後ろに指二本の空間がある」のが、理想の立ち姿勢となる。猫背や反り腰だと、頭や肩甲骨が壁から少し離れているが、ともかくアーサナをやってみよう。そのあとで同様の姿勢をとったときに、わずかな変化を感じるかもしれない。その変化は、アーサナの実践を積み重ねることで、はっきり分かるほどになるはずだ。
アーサナも何種類かあるが、以下は「三角のポーズ」。肩が軽くなり、肩こりの改善に役立つ。
1. 足を腰の幅に開いて立ち、片手を首の後ろに当てる。
2. ひじを上に持ち上げる。体の側面の伸びを感じよう。
3. 右手の指先を見ながら、真上に腕を伸ばす。手は天井からひっぱりあげられるように遠くに伸ばし、胸に入る呼吸を感じよう。
4. 目を閉じて、3~5呼吸体勢をキープ。
このように本書は、写真と(QRコードによる)動画で、さまざまな種類のシニアヨガを独習できる。アクティブシニアを目指すなら、ぜひともチャレンジしてみたい。
本書内写真:Yasuchin
【今日の健康に良い1冊】
『理学療法士が教える 伸びるだけ!シニアヨガ』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。