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旅行

住んだ人がみな不幸になる「ルート66」の呪われた町。潜入取材の廃屋で見たものは…

文・写真/大井美紗子(海外書き人クラブ/アメリカ在住ライター)

アメリカはアリゾナ州に、「呪われた町」と噂されるゴーストタウンがある。キャニオン・ディアブロ(悪魔渓谷)の端に位置する、ツーガンズ(Two guns)がそれだ。一時は大勢の観光客で賑わったものの、たった50年でゴーストタウンに成り果ててしまった。一体この町に何が起きたのだろう?

アパッチ族が惨殺された洞窟

時は1878年に遡る。ネイティブアメリカンのアパッチ族とナバホ族が、このツーガンズ周辺で衝突を起こした。

ナバホ族に追われたアパッチ族は、小さな洞窟に身を潜めた。ナバホ族は洞窟入口で火を焚き、アパッチ族を炙り出す作戦に出た。慌てて逃げ出そうとした者は入口で射殺され、洞窟に残った42人は煙にまかれて命を落とした。そうして全員の息の根を止めた後、ナバホ族は彼らの武器や財産を身ぐるみはいでその場を去ったという。
陰惨な争いが起きたこの場所は、いつからともなく「死の洞窟」と呼ばれるようになった。

谷の底にある「死の洞窟」

死者を冒涜するような洞窟ツアー

この地は町とも呼べないような小さい集落だったが、1920年初頭にぐんと発展を遂げる。近くに国道ルート66が開通したのだ。ハイウェイ沿線のちょうどよい休憩地点として、ダイナーやガソリンスタンドが次々と作られた。

今は見る影もないガソリンスタンドの廃墟

内部は落書きだらけ

この頃に建設されたキャニオン・ディアブロ橋は、歴史登録財になっている

町が賑わい始めた頃、ふらりと奇妙な男がやってきた。派手好きで傲慢、自らを「アパッチ族の子孫」と名乗るハリー・ミラーという人物だ。この地に商機を感じたミラーは、土地の権利を買い取り、無茶苦茶な町おこしを始める。

まず作ったのが、動物園。ニワトリやピューマ、その他アリゾナ州の動物を無理やり集めて見世物にした。これがヒットし、単なる立ち寄り所に過ぎなかった町は、大勢の人々が足を運ぶ観光地へと変貌を遂げた。今まで「キャニオン・ロッジ」と便宜的に呼ばれていたこの地に「ツーガンズ」というキャッチーな名前をつけたのもミラーだ。

動物園の跡。mountain lions(ピューマ)が最大の売りだった

ピューマの檻の後ろには、ニワトリ小屋の跡らしきものも

次にミラーは、アパッチ族が惨殺された例の「死の洞窟」を一大アトラクションにしようと企んだ。洞窟に残されていたアパッチ族の遺骨をかき集め、土産物として販売した。洞窟の中に作り物の飾りやイルミネーションを施し、洞窟ツアーを開催した。「死の洞窟」という通称は「謎の洞窟」に変えてしまった。

制裁と、早すぎる凋落

死者の霊を冒涜するかのような洞窟改造は皮肉にも成功し、ツーガンズは以前にも増して活気を帯びるようになった。

しかし喜びも束の間、ある日やってきた流れ者の夫婦に町の財産を一切合切奪われてしまう。

火災で家屋が焼失するという騒ぎも起こった。

ガラスの破片が散らばる廃墟

さらにはミラーが、土地の権利を巡って前の地主と口論になり、地主を銃で撃ち殺してしまう。ミラーはなぜか罪に問われることはなかったが、代わりに十分な制裁を受けることになる。普段はおとなしい動物園のピューマに2回も襲われ、さらにはドクトカゲに噛まれて腕がぱんぱんに腫れあがってしまったのだ。まるで、人間が罰を下さないなら我々がする、と動物たちが声なき声を上げたかのように。やがてミラーはこの町を去る。

リーダーのいなくなった町は、ルート66のルート変更もあり、急激に衰えていく。1950年に売却され、1960年には空き屋が目立つようになった。そして1971年、完全に住人がいなくなる。1920年の町おこしから数えて、たった50年の寿命であった。

キャンプ場の跡

ぼろぼろとはいえソファやカーペットも残っており、つい最近まで人が住んでいたことを思い起こさせる

強盗や火災に加え、突然の殺人事件、動物たちの暴挙……。奇妙な出来事が短期間のうちにこれだけ起こるとは。なにより近辺随一の観光地だったにもかかわらず、早すぎるくらいの凋落。ミラーをはじめとする町の人々が、アパッチ族の霊を冒涜するような横暴を繰り返したからではないか、ツーガンズは呪われている……。人々はそう噂する。

最寄りの空港から車で2時間半

ツーガンズへ行くには、車がないと難しい。さらに旅程にも余裕がないと厳しい。日本から訪れるとしたら、アリゾナ州のフェニックス国際空港まで飛び、そこからレンタカーを借りて移動するのが理想的だろう。約290km、2時間半の道のりだ。

最寄りの町はフラッグスタッフ(Flagstaff)。ツーガンズまでの距離は約55km、30分だ。
旧国道・ルート66沿いに位置しているので、旧ルート66を辿るロードトリップの旅程に組み込んでもいい。

アメリカ人にとってもアクセスしにくい場所なので、訪れる人はそう多くない。荒野のゴーストタウンにひとり佇み、この地に生き、去っていった人々の魂に思いを馳せるのも悪くない。

文・写真/大井美紗子(アメリカ在住ライター)
アメリカ南部・アラバマ州在住。日本の出版社で単行本の編集者を務めた後、2015年渡米。ライティングのほかに翻訳も務める。日英翻訳書に『京都の仏像なぞり描き』(PHP研究所)など。海外書き人クラブ所属(http://www.kaigaikakibito.com/)。

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