制裁と、早すぎる凋落

死者の霊を冒涜するかのような洞窟改造は皮肉にも成功し、ツーガンズは以前にも増して活気を帯びるようになった。

しかし喜びも束の間、ある日やってきた流れ者の夫婦に町の財産を一切合切奪われてしまう。

火災で家屋が焼失するという騒ぎも起こった。

ガラスの破片が散らばる廃墟

さらにはミラーが、土地の権利を巡って前の地主と口論になり、地主を銃で撃ち殺してしまう。ミラーはなぜか罪に問われることはなかったが、代わりに十分な制裁を受けることになる。普段はおとなしい動物園のピューマに2回も襲われ、さらにはドクトカゲに噛まれて腕がぱんぱんに腫れあがってしまったのだ。まるで、人間が罰を下さないなら我々がする、と動物たちが声なき声を上げたかのように。やがてミラーはこの町を去る。

リーダーのいなくなった町は、ルート66のルート変更もあり、急激に衰えていく。1950年に売却され、1960年には空き屋が目立つようになった。そして1971年、完全に住人がいなくなる。1920年の町おこしから数えて、たった50年の寿命であった。

キャンプ場の跡

ぼろぼろとはいえソファやカーペットも残っており、つい最近まで人が住んでいたことを思い起こさせる

強盗や火災に加え、突然の殺人事件、動物たちの暴挙……。奇妙な出来事が短期間のうちにこれだけ起こるとは。なにより近辺随一の観光地だったにもかかわらず、早すぎるくらいの凋落。ミラーをはじめとする町の人々が、アパッチ族の霊を冒涜するような横暴を繰り返したからではないか、ツーガンズは呪われている……。人々はそう噂する。

最寄りの空港から車で2時間半

ツーガンズへ行くには、車がないと難しい。さらに旅程にも余裕がないと厳しい。日本から訪れるとしたら、アリゾナ州のフェニックス国際空港まで飛び、そこからレンタカーを借りて移動するのが理想的だろう。約290km、2時間半の道のりだ。

最寄りの町はフラッグスタッフ(Flagstaff)。ツーガンズまでの距離は約55km、30分だ。
旧国道・ルート66沿いに位置しているので、旧ルート66を辿るロードトリップの旅程に組み込んでもいい。

アメリカ人にとってもアクセスしにくい場所なので、訪れる人はそう多くない。荒野のゴーストタウンにひとり佇み、この地に生き、去っていった人々の魂に思いを馳せるのも悪くない。

文・写真/大井美紗子(アメリカ在住ライター)
アメリカ南部・アラバマ州在住。日本の出版社で単行本の編集者を務めた後、2015年渡米。ライティングのほかに翻訳も務める。日英翻訳書に『京都の仏像なぞり描き』(PHP研究所)など。海外書き人クラブ所属(http://www.kaigaikakibito.com/)。

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