長万部駅で、向こうのホームに入ってきたのは札幌行きのスーパー北斗13号。ホームの水たまりがみごとな鏡になった。この特急は札幌まで約2時間。各駅停車はほぼその倍で到着する。
昨日はホーム上に人があふれていた小幌駅。雨のせいか今日は誰もの姿も見えなかった。前方に見えるのは左が下り線、右が上り線。真ん中の塞がれているのが列車交換用の待避線トンネル跡だ。
車内で熱心に車窓の風景を撮っていたのは、四国からやってきたという女性。「2018年は青函トンネルと瀬戸大橋開業30年」ということで、北海道へ旅行しに来たという。四国で「北海道フリーパス」(JR北海道線が乗り放題)を購入し、道内の引き換えヵ所で提示すると記念のカードが貰えるので、その切符を利用して旅行中、ということだった。
記念のカードを見せていただくと、懐かしい青函連絡船や、海峡線の列車の姿がプリントされていた。今から約30年前、日本全国のJR線が直接つながったことを記念して、JRが「一本列島」というキャンペーンをしていたことを思い出した。
倶知安と長万部のほぼ中間地点に当たる目名駅。この付近は、かつてC62重連の急行ニセコが猛煙を上げて峠道と闘っていたところである。輸送の主役の座を室蘭本線に譲ってからは交換設備が撤去されていたのだが、2000(平成12)年6月26日に復活した。同年3月末に発生した有珠山の噴火の影響である。
噴火によって室蘭本線は通行不能になったが、この災害の際のJR北海道の動きは早かった。函館本線を利用した迂回輸送。特急「北斗」をはじめ、寝台特急の「北斗星」や「カシオペア」などもこのルートを走行した。高速化に対応した信号システム改良、交換施設の新設、コンテナホームの建設などをす早く決断し実行に移した。職員のみならず線路や車両はフル稼働。全社を上げての復旧活動が功を奏し、発災から71日目には完全復旧を果たした。観光だけでなく農産品などの輸送をささえるため、鉄道が全力を果たしたのである。
復旧の速度が速く、交換設備が本格的に使われることはなかったが、今でも万が一の事態に備え丁寧に維持されている。雨に曇る窓からこの設備を見ていると、「もしかしたらこの時の減収や復旧費用が,その後JR北海道へのボディーブローになっているのではないか」とすら考えてしまう。
18時9分、苫小牧到着。これで道南方面鉄道一周は完了である。今日は室蘭に立ち寄っていないので、まだ日が高い。ここからこの電車で、札幌方面に向け北上する。