昨年夏『サライ.jp』に連載され好評を博した《実録「青春18きっぷ」で行ける日本縦断列車旅》。九州・枕崎駅から北海道・稚内駅まで、普通列車を乗り継いで行く日本縦断の大旅行を完遂した59歳の鉄道写真家・川井聡さんが、また新たな鉄道旅に出た。今回の舞台は北海道。広大な北の大地を走るJR北海道の在来線全線を、普通列車を乗り継ぎ、10日間かけて完全乗車するのだ。

文・写真/川井聡

>> 前回【2日目】から続く

【3日目の予定ルート】

今回3日目の乗車ルート

朝の札幌駅。昨日からの雨が心配されたが、青空がなんとかのぞいている。今日は、札沼線と夕張線という、いずれも廃止に直面した路線二つに乗る。乗れること自体は嬉しいのだが、「もしかするとこれが最後の機会か?」と思うと複雑な気持ちにもなる。

今日の始発は6時39分発の石狩当別行き普通電車。

途中までは通勤電車。とはいえ札幌駅から離れる下り列車なので、車内はガラガラ。反対ホームはこれから札幌圏に向かう通勤客で一杯。なんとなく申し訳ない気分で列車を楽しむ。

あいの里教育大駅を出たころから、車窓の景色は住宅街から郊外に変わる。左右に田園地域が広がったなと思うと、目の前にがっしりした鉄橋が現れ石狩川を渡る。橋の上は相当な強風が吹くらしく窓の高さまで防風壁が建ち「すきまから川らしいもの」しか見えないのが少々残念。

この場所には、以前1934(昭和9)年製の曲弦トラス橋がかかっていたが、平成11年に現在の物に架け替えられた。全長は約1㎞ありJR北海道で最長の鉄橋、全国でも8番目の長さだという。

札沼線の北海道学園大学までは電化区間。札幌までの通勤客と沿線の通学生の列車になっており、朝は一時間に4本の列車が走る。

車内に掲げられた路線図。非電化区間の北海道学園大学以北は駅名の記載もなし。なんだかもうすでに廃線の準備が始まっているような気持になる。

石狩当別や北海道医療大学駅までは電化された通学路線。札幌駅周辺はJR北海道の数少ないドル箱となっているようで、電車も頻繁に走っている。

札幌駅から約30km。40分で石狩当別駅に到着。新十津川行きはここから発車する。

石狩当別駅のコンコースはアートスペースのようになっていた。緑色の玉子はタイムカプセル。新幹線「はやぶさ」号を思わせる形や色なので、北海道新幹線開業を記念したものかと思ったがそうではなく、1994年に設置されたものだという。20年以上前のタイムカプセルが「はやぶさ」号が走る未来を先取りしていたような気分である。

後ろにある円盤は有備館駅(陸羽東線)甲斐益10年を記念して札沼線を走った記念列車のヘッドマーク。当別市は、仙台藩岩出山伊達家の家臣団によって開拓された歴史から、旧岩出山町(現・宮城県大崎市)と姉妹都市になっている。

新十津川駅へ行く列車は一日一本だけ。この始発列車が出ると、明日の同じ時間まで列車はない。

待合室に飾られていた見どころマップ。丁寧に作られた駅員さん手作りの作品だ。

待合室から見えた札沼線のダイヤグラム。一番上の横線が新十津川駅、斜めの線が列車を示す。午前中に一日一本しかないのを実感する。

いよいよ、「札沼線」の乗車だ。もちろんここまでの区間も札沼線なのだが、こちらの方は愛称の学園都市線と呼んだ方が似つかわしいような気がする。逆に気動車が走る区間を学園都市線と呼ぶのは無理がある。JRではこの二つを区分しているのかと思ったが、時刻表を見ると終点まで「学園都市線」の愛称が付けられているので、区分けしているわけではなさそうだ。

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