
伝統工芸の粋を極めた漆芸と彫金が織りなす、究極の薄型メカニカルウオッチが誕生しました。セイコーウオッチが2025年10月24日にリリースする「クレドール ゴールドフェザー トゥールビヨン限定モデル」は、世界でわずか10本という希少性と、日本が誇る匠の技が結集した逸品です。
文/土田貴史
日本伝統の漆芸と彫金を用いた“芸術作品”
この時計の真価は、何よりもダイヤルに施された漆芸の美しさにあります。手掛けたのは加賀蒔絵の達人・田村一舟氏。9時位置のトゥールビヨンキャリッジを太陽に見立て、そこから溢れ出るエネルギーが鳥の群れとなって12時位置のクレストマークへと舞い上がる様を、緻密な漆芸で表現しています。

蒔絵の技法で描かれたエネルギーの装飾、切金技法による赤みを帯びた金色の鳥、そして螺鈿技法を用いた色鮮やかな外側の鳥たち。繊細にカーブしたダイヤル上に、漆を使って金、白蝶貝、夜光貝を貼り付け、漆を重ね、表面を滑らかに研ぐ工程を繰り返すことで、煌びやかな美の世界が完成しました。田村氏の真骨頂である陰影が際立つ立体的な高蒔絵は、クレストマークとCREDORロゴに加え、今回初めて極細のGoldfeatherロゴにも施されています。
この時計の心臓部には、2023年秋に黄綬褒章を受章した齋藤勝雄氏が組み上げた新ムーブメント「キャリバー6850」が搭載されています。厚さわずか3.98mmの超薄型でありながら、60時間という実用的なパワーリザーブを実現した手巻きトゥールビヨンムーブメントは、その美しさも見事。齋藤氏は「卓越した技能者(現代の名工)」として厚生労働省から表彰を受けた日本を代表する組立師であり、その巧みな技術により、薄さと精度を両立させた傑作ムーブメントが誕生しました。

裏面もまた見どころの一つです。トゥールビヨンキャリッジから偏心状に広がる大胆な彫金と漆芸で、猛禽類が羽ばたく際の「風切り羽」を表現しています。三日月形の美しい夜光貝の螺鈿に、羽の輪郭が高蒔絵で描かれ、ムーブメントの受けには外側に向かって力強さを増す羽が緻密に彫金されています。クレドールの彫金工房が手がけたこの装飾は、わずか0.15mmの深さで彫りながらも、深みのある美しさを生み出しています。
ケースと裏蓋を一体化した構造により、強度を維持したまま8.6mmという薄さを実現。ゴールドフェザーらしい優美なカーブを描く軽やかなケースフォルムは、熟練職人の手作業による丁寧な仕上げが施されています。プラチナ950製のケースに、ボックス型サファイアガラス、クロコダイルストラップを合わせた仕様で、希望小売価格は2530万円(税込)。世界限定10本という希少性も相まって、時計愛好家垂涎の逸品となっています。
60余年ぶりに復活したゴールドフェザーの名にふさわしく、この時計は羽根のように「薄く」「軽やかで」「空気をはらみ」「艶やかで」「優美」です。田村一舟氏の卓越した漆芸技術と齋藤勝雄氏の精密な組立技術が結実した、まさに日本の手工芸の粋を極めた傑作と言えるでしょう。時を刻む機械に宿る芸術性、それは単なる時計を超えた日本文化の結晶です。

Ref.GBCF999、手巻きトゥールビヨン(Cal.6850)、プラチナ950ケース(径38.6mm、厚さ8.6mm)、クロコダイルストラップ、日常生活用防水、世界限定10本(うち国内7本)、2530万円(税込)、2025年10月24日発売予定。問い合わせ/セイコーウオッチお客様相談室(クレドール) Tel.0120-302-617
https://www.credor.com